今回ご紹介するのは「ゴンズイ」になります。
と言っても釣りをしない人にはあまりピンと来ないかもしれませんね。
ゴンズイと言うのはナマズの仲間なのですが、海に棲む魚なのです。
変わっているのはこれだけではありません。なんとゴンズイは毒を持つナマズなのです。
今回はこのゴンズイについて、「生態は勿論、毒の症状や危険性にその対処法、はたまた天敵はいるのか?」など詳しくご紹介してまいります。
ゴンズイ
「ゴンズイ基本 データ」
- 分 類 ナマズ目 ゴンズイ科 ゴンズイ属
- 学 名 Plotosus japonicus
- 和 名 ゴンズイ(権瑞)
- 英 名 Japanese eel catfish Marine catfish
- 体 長 10から20センチメートル程度
- 分布域 太平洋、インド洋
- 生息環境 海岸に近い岩礁
ゴンズイの特徴
口ひげ(8本)がある愛嬌ある顔立ちからも分かりますが、ゴンズイはナマズの仲間なのです。
しかし海水に棲息するという変わった種類になります。
身体は細長く、体長は10から20センチメートル程度と大きな魚ではありません。
体色は茶褐色から黒に近く、身体側部には二本の縞が入っています。縞は生物においては背骨に対して縦横が決められるので、ゴンズイの場合には縦縞になります。
ウロコは持たずに、体表は粘液で覆われています。
小さな背鰭と胸鰭には毒を持つ棘があり、気を付けなければなりません。
この棘で刺されると激しい痛みに襲われてしまいます。
またこの毒はゴンズイが死んでも無くならず(時間経過で薄まる説もあり)死んだゴンズイを踏みつけてしまい刺されたというケースもあるようです。
釣り人が釣ったゴンズイを針から外す際に刺されたり、そのまま陸に放置したゴンズイを踏んでしまうという事案も報告されています。
ゴンズイの生態
ゴンズイは広義に分類すると太平洋やインド洋など幅広く分布しています。
日本では、本州の中部以南で見ることができます。
生息環境は、海岸近くの浅い岩礁や港湾などで、群れになって棲息をしています。
この群れは大きさの同じ程度のものが集まり、「ゴンズイ玉」と呼ばれる球状の塊になって体を大きく見せることで身を守っているのです。
このゴンズイ玉は幼魚の時に著しく見られる傾向にあります。
また、ゴンズイ玉は集団行動を起こすフェロモンによりその制御がされているようですね。
また、幼魚の時にはウニの仲間カンガゼなどの棘の間に潜み、身を守る行動も観察されています。
基本的には夜行性で、昼間は岩陰などに隠れていることも多いようです。
夜になると、餌となる小さなエビやイカ、カニなどの小魚や小動物などを求めて動き回ります。幼魚においては他の魚のクリーニングなどもしているようですね。
繁殖は卵生で、5月から8月の春から夏にかけて浅い円状の産卵床を作り産卵を行います。
性格的には、攻撃的な魚ではありませんので、ゴンズイから攻撃を仕掛けてくることはまずありません。
ゴンズイの持つ毒棘はあくまでも防衛手段としてのものになります。
ミナミゴンズイは別種
このゴンズイには、近縁種としてミナミゴンズイ(英: Striped eel catfish、学名:Plotosus lineatus)という種が存在します。
その違いは、骨の数などの差異なものしかありませんので、外見からの判断は非常に難しいです。
実際、最近まではこのミナミゴンズイとゴンズイは同種と考えられており、別種とはされていなかったのです。
ミナミゴンズイはその名の通り、生息が九州以南とゴンズイに比べて南に棲息をしています。
ゴンズイは毒を持つ危険な魚
前述のようにゴンズイは背鰭と胸鰭に有毒の棘を持つ危険な魚です。
この毒はゴンズイが死んでも残っていますので、安易に触ったりすることは勿論、気が付かずに踏んでしまうこともあるので気を付けなければなりません。
釣り人の間では、オコゼ類と並んで有毒魚としてはよく知られていますが、釣りマニアでは無い場合には、気が付かずに触ったり踏んだりして毒にやられてしまうことも多いようですね。
ゴンズイの持つ毒は、タンパク毒とされていて加熱することで毒の効力は失われます。
しかし、海で出会うゴンズイの場合にはこの加熱処理が施されているわけではありませんので、絶対に触ってはいけません。
症状
ゴンズイの毒棘に刺されてしまうと、症状としては激しい痛みに襲われます。
次第に患部が赤く腫れ上がり、麻痺やしびれなどの症状も起こります。
さらにひどくなると、下痢に嘔吐、呼吸困難や患部の壊死と言った症状もあらわれます。
この毒による死亡例もありますので、気を付けなくてはなりません。
対処法
もしもゴンズイに刺されてしまった場合には、すぐさま応急処置を行う必要があります。
まずは、傷口を流水で綺麗に洗い流します。
この場合に傷口に棘が刺さっている場合も考えられます。すぐさま棘はピンセットなどで抜き取ってください。
傷口から毒を吸い出して消毒を行います。
その後、火傷をしない程度の40度から50度程度のお湯に傷口を30分程度つけます。
ゴンズイの毒はタンパク毒の為、熱に弱くこうしてお湯につけることで痛みを和らげることが出来ます。
痛みや嘔吐や下痢などの症状が続くようであれば、必ず医療機関で受診をしてください。
前述のように、ゴンズイの毒では死亡例もあるのです。
安易な自己判断は決して行わないでください。
粘液にも毒
ゴンズイの毒棘には気を付けなければなりません。
しかし、実はゴンズイの出すぬめぬめとした体表粘液にも毒性があるというのです。
ゴンズイは釣り上げられた時などに体表から粘液を出して身を守ろうとしますが、実はこれにも毒があるのですね。
これは最近の研究で明らかになったのですが、棘にある毒と同様の成分のようで、刺される以外にもこの粘液にも注意が必要です。
ゴンズイの天敵は?
恐ろしい毒を持つゴンズイですが、そんなゴンズイに天敵となる生物はいるのでしょうか?
実はこれが意外と多いのです。
まだ幼魚の頃は毒性も弱く、多くの捕食者たちに襲われるようですね。
その為にゴンズイ玉を作り防衛を計るのです。
更に成魚となって毒性も強くなったゴンズイをも捕食するという猛者たちも存在するのです。
どうやら、それら猛者たちにはゴンズイの毒性は効果が無いようですね。
エビやタコ、イカ、タイなどの仲間にはこのゴンズイの毒性が通用しないものがいるようです。
大エビやアオリイカ、マダコ、コショウダイなどがゴンズイを捕食する姿がよく見られます。
意外と美味
これまでのように毒を有する危険なゴンズイですので、厄介者扱いされることが非常に多いのですね。
しかしあまり知られてはおりませんが、実はこのゴンズイは白身で食すると意外に美味しいようです。
棘に毒などを持つことから、一般的には市場に出回ることがないので、その美味しさはあまり浸透していないのですね。
地域によっては、ゴンズイを好んで食しているところもあるようです。
代表的な料理としては、みそ汁や煮物、天婦羅、蒲焼などが非常に人気です。
ゴンズイの身は、弾力性があり脂ものっていて絶品とのことです。
特に蒲焼などはウナギのそれと非常によく似た美味しさと評判です。
しかし、一般流通がされないのでゴンズイを食するには危険を覚悟の上で、自力で釣り上げるしかありません。
実際にゴンズイの美味しさに魅せられて、ゴンズイ狙いの釣りをする人も多いようです。
もし釣って棘処理をしてもその場に放置するのはやめてくださいね。
まとめ
今回は、海に生息するナマズ「ゴンズイ」について色々とご紹介をしてまいりました。
あまり馴染みのない魚ですが、実は毒を持つ非常に危険な魚だったのですね。
しかし、この毒はゴンズイが厳しい棲息環境を生き抜いていくため身につけた手段なんです。
毒性が弱い幼魚時代はゴンズイ玉を作り、成魚になって毒性を強くして防御をする。
厳しい環境を生き抜く為には最高の武器を手に入れたゴンズイですが、自然とはまた不思議なものでその毒をも気にせずにゴンズイを捕食する猛者もいるわけです。
折角身につけた毒が効かないのですから、ゴンズイも少々かわいそうに思えてしまいますね。