皆さんは、「マウイイワスナギンチャク」という名前に聞き覚えはありますでしょうか?
もしかしたら、ハワイによく行かれる方では、そこでの注意喚起として「マウイイワスナギンチャクには近付かないように!」などとその存在をご存知かもしれませんね。
そう!この「マウイイワスナギンチャク」は世界一の毒性を持つ猛毒生物として恐れられているのです。
生息地はその名の通りハワイ周辺なのですが、鑑賞飼育していた住人がその毒性の犠牲になったなどの事故も起こっているのです。
今回はこの「マウイイワスナギンチャク」についてご紹介いたします。
目次
マウイイワスナギンチャクとその生態
マウイイワスナギンチャクは、スナギンチャク目イワスナギンチャク科に属する生物です。
たいていの場合には、小柄(体調3.5センチメートル程)なイソギンチャクと紹介されていますが、実はスナギンチャク目とイソギンチャク目とは異なるグループ分けがされるので近い種類と言うのが本筋かも知れません。
このスナギンチャクとは、たいていの種が体内に砂粒等を埋め込むことからそう呼ばれています。
生息地は、マウイ島の一部海岸と非常に狭い地域になります。またほとんどの場合比較的海面より浅いところに生息するので現地で海に潜れば遭遇する機会は多いと言えます。
マウイイワスナギンチャクは群生するのが普通なのですが、中には個体のものもあり、その場合ポリプ(口のようなもの)を閉じてしまうと岩との区別が非常につきにくいので誤って触れてしまう危険が多いのです。
この危険と言うのが、実はこのマウイイワスナギンチャクは世界一の猛毒生物とも称されるほどに危険な毒性を持っているのです。
誤って触れてしまうと命に係わる事態にも成り兼ねませんので、現地で海に潜る際にはこのマウイイワスナギンチャクには気を付けなければなりません。
猛毒を持つマウイイワスナギンチャク
前述でマウイイワスナギンチャクは世界一の猛毒生物とお伝えしましたが、その通りに動物界においては最も強力な毒を持っているのです。
その毒と言うのがパリトキシン(Palytoxin)神経毒で半数致死量LD50、0.00005から0.0001(mg/kg)という凄まじいものなのです。
この数値だとピンと来ない場合には、青酸カリの8000倍、最強の毒蛇(とされる)インランドタイパンの500倍(実際には250から500倍程度)としたら如何でしょうか?
人間であれば、5マイクログラム程度で死んでしまう危険性が秘められているのです。
誤って触ってしまったり、踏みつけてしまうようなことにでもなったら大変なんです。
一説には、このマウイイワスナギンチャクの群生する海面で泳いでいた学生が直接触れていないのにこの毒にやられて病院へ運ばれたという報告もあるようですね。
猛毒パリトキシン(Palytoxin)実は・・・。
このマウイイワスナギンチャクを筆頭にスナギンチャク類には、猛毒パリトキシンを所有する種類が多く存在します。
そしてこのマウイイワスナギンチャクの学名は「パリトア・トキシカ(Palythoa toxica)」と言うのですが、もうお分かりかも知れませんね。猛毒のパリトキシンはこのマウイイワスナギンチャクの学名から命名されていたのです。
毒物としては、今ではその筋の人間ならだれでも知る程にメジャーなパリトキシンですが、実はこのマウイイワスナギンチャク由来の名前だったのです。
尚、この猛毒はマウイイワスナギンチャクが体内生成するのではなく、海中の細菌や生物を体内に取り入れこの毒が誕生しているようです。
鑑賞飼育中のマウイイワスナギンチャクによる事故事例
日本ではお目にかかることはまず無いようなのですが、海外においてはこのマウイイワスナギンチャクによる事故が、海水中は勿論、観賞用として飼育していた個体が原因となるものも起こっています。
日本のテレビでも取り上げられたのでご存知の方もいるかも知れませんね。
イギリスでは家族全員が死にかけた!
イギリスに住む皆健康な4人家族の家庭でその事故は起きました。
ある日次々と倒れる住人、ついには4人全員が倒れてしまったのです。これを受け救急隊が家に向かうも中には有毒ガスが充満しているような状態だったと言うことです。
その原因を調べた結果、熱帯魚の水槽に入れていたサンゴこれが実はマウイイワスナギンチャクで、これより強烈な有毒ガスが発せられていたことを突き止めました。
この家族はそのような危険なものとは知らず、インターネット通販で購入していたのです。
そのマウイイワスナギンチャクが水槽内で何らかの衝撃を受け、猛毒が流れ出しそれがポンプを伝わり気体となって部屋中に充満してしまった。と言うのが事の真相のようです。
そして気付かぬ内に、この気体となった有毒ガスを家族全員が吸い込んでしまい、皆倒れてしまったのです。
幸いこの家族は救急隊の手により救出され皆一命はとりとめたそうです。
アメリカではシェアハウスの住人が・・・。
アラスカ州アンカレッジにある一軒のシェアハウスでそれは起きたとのことです。
まず、一人が激しい頭痛を訴え倒れこんでしまった。
これを機にこのシェアハウスに住む住人が次々に倒れ込んでいってしまいました。
その症状は飼われているイヌやネコにまでも及んだというのです。
症状は高熱に、咳、全身の痛みに嘔吐しかし検査では原因は掴めませんでした。
食事も異なるし、同じなのはこのシェアハウスに住むと言うことだけ。
よくよく調べると、一番症状の重い男性の部屋の水槽が原因と判明。
そこには、マウイイワスナギンチャクが飼育されていたのです。
しかし、このマウイイワスナギンチャクも少々のことでは人間に被害を与えるとも考えにくいのだが・・・。
実は、このマウイイワスナギンチャクを水槽に移す際に、破片が床に落ちてしまったようで、時間と共に乾燥し粘液中の猛毒が乾燥し粉状になって空気中に飛散してしまったとのこと。
そしてこの飛散した毒素を鼻や口から体内に取り込んでしまった住人達やリビングにいたイヌやネコまでもが、中毒症状を発症してしまったようなんです。
幸い該当部屋の住人も含めたここの住人及びペットのイヌやネコにおいても命に別状はなかったようで、大事には至らなかったとされています。
この件を受けてアメリカ疾病管理予防センターも猛毒を所有する生物の取り扱いには十分な注意が必要と警告を発しているようですね。
日本におけるマウイイワスナギンチャク事情は?
幸いなことに日本においては、このマウイイワスナギンチャクの生息は認められておりません。しかしながら同族のイワスナギンチャクが生息をしております。
その生息地は沖縄から伊豆諸島と比較的暖かい海域になります。
日本に生息するイワスナギンチャクはマウイイワスナギンチャク同様に猛毒のパリトキシンを持っているのですが、その毒の含有量は少ないのでこれまでに大きな事故の報告はありません。
しかし、このイワスナギンチャクを食するアオブダイの被害の方が問題になっているようです。
イワスナギンチャクを食することでアオブダイにもパリトキシンがその内臓に蓄積されていくのです。
その結果このアオブダイの内臓を食べてしまうと中毒症状、そして最悪の場合には死に至ってしまいます。
厄介なことにこの猛毒パリトキシンは加熱しても毒性は変わらないので、そのまま被害が拡大してしまうのです。
これによる死亡事故も実際に起きており、5件ほど報告があります。
まとめ
今回、マウイイワスナギンチャクについてご紹介をして参りました。
パリトキシンという猛毒を有するこのマウイイワスナギンチャクには驚かされてしまいますね。
ハワイマウイ島と言えば、日本ではとてもメジャーな観光スポットです。そんなところにこのような恐ろしい毒を有する生物が生存するのですから、本当に気を付けなければなりませんね。
実際に、このマウイイワスナギンチャクによる悲惨な事故もあるようですから、ハワイに向かい際はこのマウイイワスナギンチャクには気を付けて下さい。
幸い日本には、このマウイイワスナギンチャクは生存していないものも、同族のイワスナギンチャクが生存し、これを食するアオブダイによるパリトキシン中毒の被害があるようです。
ハワイにおいてはマウイイワスナギンチャクに近寄らないこと、日本においては魚を食する際には充分に気を付けることで、パリトキシンから身を守るしかないようですね。