ナマズと聞くと、黒い大きな体に長いひげの生えた姿を想像する方が多いと思います。
実は、ナマズの仲間(ナマズ目)は魚類で3番目に種数の多いグループで、多様性に富んでいます。
アカザも、個性的なナマズの仲間の一種で、毒性をもつ魚としても知られています。
赤みのある体色と個性的な外見は、観賞魚としての人気にもつながっています。
そんなアカザの生態や飼育方法についてご紹介します。
目次
どんな魚?アカザの生態
アカザはナマズ目アカザ科に属する魚で、日本の固有種です。
秋田県、宮城県以南の本州と、四国、九州に分布しています。
水のきれいな川に生息する魚で、河川の上流域~中流域の、流れのある環境を好みます。
日本に生息するナマズの仲間としては小型で、最大でも10センチ程度です。
体色は赤みがかった褐色ですが、地域差や個体差があるようで、個体によってはほぼ茶色に見えることもあります。
ナマズの仲間らしく口ひげがあり、上あごに4本、下あごに4本で合計8本の口ひげがあります。
胸鰭と背鰭に毒針(毒棘)があり、刺されると激しく痛みます。
このことから、「アカザス(赤刺す)」と呼ばれ、「アカザ」という和名につながったという説があります。
他の多くのナマズと同じく夜行性で肉食性ですが、小型魚を襲って食べるのではなく、主に水生昆虫を食べています。
本種自体が水のきれいな環境を好むこと、環境の変化や悪化に弱い水生昆虫を主食にしていることから、生息数が減っており、環境省の絶滅危惧種に指定されています。
危険な魚?アカザの毒性
アカザの毒棘に刺されると激しく痛むことから、長野県の一部では「サソリ」とまで呼ばれていますが、それほど強い毒性ではありません。
捕食者に襲われた際、毒棘で刺して攻撃し、身を守るために発達したものなので、相手を殺傷するほどの強さはないと考えられています。
もし中型犬などが刺された場合は命に係わるかもしれませんが、人が刺された場合、数十分~一時間程度で痛みと腫れは引くとされています。
もちろん、基本的には人の命に係わることはありません。
まれにアレルギー体質があり、アナフィラキシーショックを起こすこともありますので、症状がひどい場合やショック症状がみられる場合は、専門医を受診すべきでしょう。
ちなみに、肉に毒があるわけではないので、毒棘を備えた鰭さえ切除すれば食べることもできます。
アカザの飼育方法
アクアリウム用の器具は非常に充実していますし、近年は日本産淡水魚の飼育も一般的になってきました。
これらの器具を使えばアカザは自宅で飼育できますし、観賞魚店でアカザを見かけることもあるでしょう。
ただし、飼育難易度はけっこう高めです。
アカザ飼育のポイントは以下の5点です。
- 最初の水合わせは慎重に!
- 水質悪化に注意!フィルターはしっかりしたものを使う
- 酸欠に注意!
- 高水温に注意!25度以上にしない
- 餌付けはちょっと大変かも
基本的なセット
アカザはそう大きな魚ではないし不活発なので、単独飼育なら45センチ水槽が使えます。
複数飼育するなら60センチ水槽がいいでしょう。
フィルターは上部式やパワーフィルターが適しています。
流れのある環境に生息している魚なので、ある程度の水流を作ってやりましょう。
アカザを水草水槽で飼育することは考えにくいので、ソイルではなく砂利を敷き、岩組でレイアウトするといいでしょう。
夜行性なのでライトはなくても構いませんが、昼夜のメリハリをつけるために設置したほうがいいかもしれません。
慣れれば明るくても出てくるようになります。
野外で捕獲する際や、最初に水槽に導入するとき、また大掃除でアカザを水槽から取り出すときなど、素手で扱うと刺されるので注意しましょう。
アカザを飼育する水槽を用意してから、アカザを捕まえてくるなり購入するなりしましょう。
最初の水合わせは慎重に!
アカザは水質悪化にも水質の急変にも弱い魚です。
水槽に直接入れるのではなく、バケツやプラケースに入れ、5~10分おきにコップ一杯ずつ水槽の水を足して、少しずつ水質に慣らしていきます。
この操作を「水合わせ」と言います。
水合わせには少なくとも30分はかけてやりましょう。
水質悪化に注意!フィルターはしっかりしたものを使う
水のきれいな清流の魚ですから、水質悪化は厳禁です。
特にナマズの仲間は魚病薬にも弱いので、病気になったら終わり、くらいの覚悟で臨みましょう。
投げ込み式や外掛け式のフィルターではろ過容量が足りないので、上部式やパワーフィルターを使い、しっかりとろ過を効かせてやります。
酸欠に注意!
流れのある場所に住んでいる魚は酸欠に弱いという特徴があります。
上部式フィルターを使う場合、あまり酸欠の心配はいりませんが、パワーフィルターを使う場合、シャワーパイプを水面から出して泡立つようにしましょう。
フィルターと別にエアポンプを使ってやると確実です。
高水温に注意!25度以上にしない
水温が25度を超えると死んでしまうこともあります。
特に夏場は要注意です。
水槽用クーラーを使うか、エアコンで部屋ごと温度を下げるしかありません。
水面に風を当てて水温を下げる水槽用ファンも販売されていますが、エアコンなしの部屋では、ファンだけでアカザの好む水温を保つことは不可能です。
餌付けはちょっと大変かも
先にご紹介した通り、本来は水生昆虫を主食にしている魚です。
ショップで人工フードに餌付けられている個体なら苦労しませんが、そうでないなら工夫が必要です。
まずは冷凍赤虫を使ってみて、様子を見ましょう。
夜、ライトを消してから目の前に落としてみます。
冷凍赤虫にどうしても反応しない場合、ヌマエビなどの生きた小エビが有効です。
水面に浮くものには反応が悪く、コオロギやミルワームだとうまくいかないようです。
エビでも冷凍赤虫でも、水槽内で餌を食べるようになったら、根気よく人工フードに餌付けてみましょう。
このように、飼育難易度はちょっと高めですが、その分飼育して手ごたえのある魚と言えるでしょう。