世界には8種類の熊がいます。
そして日本国内にも、北海道に生息するヒグマ(エゾヒグマ)と本州以南に生息するツキノワグマの2種類が生息しています。
野生の熊は、日本に住む最大最強の哺乳類で、遭遇すると命を落としかねない危険生物です。
中でもヒグマは力が強く、頑丈で巨大な体にするどい牙と爪をもち、さらに時速50㎞以上と人間のトップアスリートよりもはるかに早く走ることができます。
今回は、そんな絶対に遭遇したくない熊の種類一覧と大きさ、そして熊と遭遇しないための予防策や、万が一遭遇してしまった時の最終手段と絶対にやってはいけない事について解説していきます。
また、ホッキョクグマやグリズリーよりも大きくて強いとされる、世界最大の4m級の最強熊がはるか昔に存在していました。
今回の記事でそんな危険な熊の知識を身につけ、危険生物から身を守りましょう!
目次
熊の種類一覧と大きさ
ヒグマ
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ(オスの成獣):1.9-3.0m、250-500Kg
- 体の大きさ(メスの成獣):1.6-2.5m、100-300Kg
- 分布:北海道/北アメリカ、ユーラシア北部
- 環境:温帯から寒帯の森林
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
ヒグマは、いくつかの種にわかれています。
北アメリカ北西部に生息しているヒグマをハイイログマ(通称グリズリー)と呼びます。
アラスカに生息しているのは、コディアックヒグマ、日本の北海道に生息しているのはエゾヒグマになります。
日本でヒグマというのは、いくつかの種の中でもエゾヒグマのことを指すことが多いです。
エゾヒグマは、日本に生息する最大の陸上動物で、食物連鎖の頂点に位置しています。成獣のヒグマには、武器を持った人間以外に天敵はいない最強生物です。
単独でくらし、針葉樹林を中心とした森林に生息しています。
雑食性で、植物や果実のほか、昆虫、魚、小動物も食べますが、ツキノワグマよりも肉食の傾向が大きいです。
ヒグマは、栄養状態により体の大きさに個体差があり、内陸のヒグマが300Kgを超えることはあまりありませんが、アラスカ沿岸に生息するような、サケやマス類を沢山食べられる環境にいるヒグマは500Kg以上の個体が記録されています。
日本の北海道に生息するエゾヒグマは、オスが約1.9 – 2.3m、メスが約1.6 – 1.8mと比較的小さめです。エゾヒグマで過去に記録されている最も大きなもので、体重はオスで520kg、体長はオスで243cmというのが最大になります。
アラスカの一部でくらすコディアックヒグマは、立ち上がると高さ3m、体重600Kgをこえることもあります。
ホッキョクグマにつぐ巨大な肉食動物で、毎年、各地で死亡事故がおきています。
一度人間をおそったで味をしめたヒグマは、再度人間を食べる目的でおそう傾向にあり非常に危険です。
また、自分で捕獲した獲物に対して強い執着心を持つため、取り返そうとする行為はきわめて危険です。
身の危険を感じると、鋭い爪のはえた前足で攻撃します。
ヒグマの走るスピードは、時速50㎞以上といわれており、一説には時速65㎞にも達すると言われています。追いかけられると人間の短距離アスリートでもまず勝てません。
ヒグマは、視力はあまりよくないですが、動体視力は非常に良いといわれています。
ツキノワグマ(アジアクロクマ)
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ:1.1〜1.8m、65〜150Kg
- 分布:本州、四国/東アジア
- 環境:山地から海岸近くの森林まで
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
ツキノワグマは、体は黒く、胸に白い三日月もようがあるのが特徴です。中には赤褐色の個体も発見されています。
ツキノワグマは、ヒグマとは異なり、人間を食べる目的で襲うことはほとんどありませんが、出会い頭で人間と出くわして驚くと人間をおそってきます。
2016年6月に、秋田県の山林で、タケノコ取りをしていた男女4人が次々にツキノワグマに襲われる事故がおきました。
木登りが得意で、木の幹に熊の爪あとがあったら要注意です。
落葉広葉樹林にすみ、雑食性で、春は木の芽やフキ、夏はアリ、ハチなどの昆虫、秋には木の実を食べます。
山菜採りで山に入るころ、冬眠からさめて子グマを連れた空腹の熊は特に危険です。
里山では人家近くにあらわれます。
西日本では数が少なく、九州ではほとんど確認されていません。
ハイイログマ(グリズリー)
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ:オスの平均体重は260kg、メスは平均170kg
- 分布:北アメリカ
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
ハイイログマは、北アメリカに生息するヒグマの一種であり、日本の北海道に生息しているエゾヒグマとは近縁になります。
日本では、ハイイログマのことを英名でグリズリーとしてよく知られています。
シートン動物記「灰色熊ワーブの伝記」でもおなじみで、子供の頃に読んで、グリズリーは最強の熊という印象をもっている人も多いかと思います。
日本のエゾヒグマと比べると、肩のコブがより盛り上がっているのが特徴です。
グリズリーは、陸上の最強レベルの肉食獣です。
体の大きさは、平均するとオスは260kg、メスは170kgほどで、日本のエゾヒグマとはあまり変わりません。
最大級の個体は体重が450kg以上で、大きいものでは500Kgをこえるものもいます。
グリズリーは、地上でも時速50㎞以上で走ることができ、追いかけられるとまず人間の足では逃げ切ることはできません。
また、泳ぎも非常に得意としていますし、体が大きいグリズリーの場合は、体が重いためほとんど木に登らなくなりますが、若いグリズリーですと木登りも得意としています。
北米では内陸部にすむ個体をグリズリー、沿岸部に住む個体をヒグマ(ブラウンベア)と呼び分けていることもありますが、その差はあいまいで、明確な基準はありません。
ホッキョクグマ(シロクマ)
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ(オス):200-250cm、400-600kg(最大800kg)
- 体の大きさ(メス):180-200cm、200-350kg(妊娠時500kg)
- 分布:北極圏の沿岸域
- 環境:流氷水域
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
地上最大の肉食動物です。
熊の仲間は雑食ですが、ホッキョクグマは最もよく肉を食べる熊です。
ヒグマと比べると、肩の盛り上がりや爪が小さく、ヒグマよりも肉をより食べるため歯がより特殊変化しています。
泳ぐことがとても得意で、陸地から10kmも離れているところまで泳いでいたりします。
アザラシが主食ですが、海鳥や魚も好んで食べます。また、クジラの死骸も食べたりします。
出典画像:Wikipedia(クジラの死骸に近寄るホッキョクグマ)
体重500Kgのホッキョクグマは、1週間でアザラシ1頭の捕食分のカロリーが必要です。
生態系の頂点に君臨していますが、ごく稀に水中活動中にシャチにおそわれる例が確認されています。
流石のホッキョクグマも、水中ではシャチには勝てないということですね。
アメリカグマ(アメリカクロクマ)
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ(オス):140 – 200cm、47 – 409Kg
- 体の大きさ(メス):120 – 160cm、39 – 236Kg
- 分布:北アメリカ
- 環境:森林
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
毛色は黒が一般的ですが、褐色や青色がかったものから白い個体まで差異があります。
木登りが得意で、肉より植物をよく食べる雑食で、果実、種子、草、昆虫、魚などを食べます。
主に森林に生息しており、ヒグマを避けて生息しています。ヒグマがいない地域に分布を広げています。
積極的に狩りに出ることは多くありません。
視覚がとても優れています。また、大きな岩を前足でひっくり返せるほど力があります。
おとなしい性格ですが、まれに山小屋やキャンプ場で人間がおそわれることがあります。
ナマケグマ
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ:140-190cm、オス80-145Kg、メス55-90Kg
- 分布:インド、スリランカ
- 環境:草原や林
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
体毛が長く、肩と耳の部分が特に長い毛で覆われています。また、胸の部分にツキノワグマのような斑紋があります。
視覚や聴覚はあまりよくありませんが、嗅覚が優れています。
また、木登りは得意ですが、水に入ることは苦手です。
爪でシロアリの巣をこわし、口でシロアリを吸い上げたり、じゃまな土をふきとばして食べるほか、昆虫、魚、鳥の卵、花、果実、ハチミツなども食べます。
大人しそうな名前ですが、攻撃的でヒトをおそうこともある危険な熊です。さらに、鋭い爪を使ってトラと勝負することもあります。
とくにインドではたくさん事故がおきています。
メガネグマ
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体の大きさ:1.2〜2m、オス130-200Kg、メス35-65Kg
- 分布:南アメリカ
- 環境:草原から森林まで
- 危険な部位:牙と爪
- 危険度:
雄と雌で体格にかなり差があります。
また名前の通り、目の周りにクリーム色の斑紋が入る個体が多いですが、中には斑紋が全くない個体も確認されています。
熊の中でもジャイアントパンダに次いで植物食性が強く、主食は果実、木の葉、球根、サボテンなどです。
ときにはウサギやげっ歯類、シカやラマなどの大型動物もとらえて食べます。
木登りが得意で、樹上15~30mのところに巣をつくることもあります。冬眠はしません。
めったにヒトをおそうことはありません。
毛皮目的や娯楽としての狩猟、害獣としての駆除などにより生息数は減少しています。
ジャイアントパンダ
出典画像:Wikipedia
- 科名:クマ科
- 体長:1.2〜1.5m
- 分布:中国中西部
- 環境:タケ林
- 危険な部位:牙と爪
- 危険度:
クマ科の動物はふつう、手で物をつかむことが出来ませんが、ジャイアントパンダの手は構造が違っており、手首から伸びた指状の突起をうまく使い、笹などをつかむこと出来ます。
肉食動物のなかまですが、主食は植物のタケで、生息地に生えているどの種類のタケも食べます。
機会があれば昆虫、魚、鳥の卵、小動物もとらえて食べます。
動物園ではのんびりしているイメージですが、木登りや泳ぐことも得意です。
また、気性が荒いところもあり、斑紋のせいでたれ目に見えますが、実際はつり目で鋭い目つきをしています。
めったにヒトをおそいませんが、おそわれて大けがをした例があります。
最強グリズリーよりも強い世界最大の4mの熊
ショートフェイスベアは今から約180万年前ごろに現れ、1万1千年前に起きた寒冷化により絶滅した熊です。
強力な捕食者として君臨していたとされる、グリズリーやホッキョクグマよりも大きくて強い、最大最強の熊です。
マンモスの堅い骨にクマが傷つけたような跡が残っているそうです。
もしかしたら、ショートフェイスベアはマンモスも捕食していたのかもしれません。
- 体長:4m
- 分布:北アメリカ
- 危険な部位:鋭い牙と爪
- 危険度:
後ろ足で立つと4m、重いものでは1トンをこえたといわれる史上最大級の熊です。
手足が長く、速く走ることができたようです。
スピードとパワーを兼ね備えた当時最強のハンターだったと考えられています。
熊に襲われやすい危険な時期は春と秋
ヒグマが人間を襲う事故の約8割は、4月〜6月と9月〜10月に発生しています。
ヒグマは冬には穴の中で冬眠し、その間は何も食べません。
そのかわり冬眠明けの春、冬眠前の秋にはたくさんの食べ物を求めて活動します。
その時期は人間も山菜採りやキノコ狩りで山に入ることが多いため、ヒグマに出会う危険が高くなるのです。
野山で熊に襲われない予防策
何よりもクマに出会わないようにすることが最も大切です。
クマの生息が確認されている地域では、次のことに注意しましょう。
もし近い距離で出会ってしまったら、これをすれば大丈夫という確実な対処法はありませんが、絶対に背を向けて走って逃げないようにしましょう!
また「死んだふり」も効果がないのでしてはいけません。
一人で野山に入らない
必ず集団で行動し、なるべく近づいて歩きましょう。
音を出しながら歩く
クマも本来は人間には出会いたくないもの。大きな鈴、声や、拍手などでなるべくクマに気づいてもらうことも対処法の1つです。
クマのサインを見落とさない
クマのフンや足あとはもちろん、鹿の死がいにも注意が必要です。見つけたらすぐに引き返しましょう。ヒグマのフンの大きさは5㎝以上あります。
タヌキのフンの大きさは、2〜3㎝程度のものが多いですが、一箇所に何頭かでフンをする習性があることから、見た目の大きさとしては5㎝以上になる場合もあります。キツネとアライグマのフンは、犬のフンに似ているのが特徴です。大きさは2〜3㎝程度のものが多いです。
熊のフンかどうかを見分ける方法としては、5㎝以上あるフンは「ヒグマ」か「タヌキ」であり、形状が2〜3㎝のフンが集まったものであればタヌキと考えられます。山林でフンを発見したときに、ヒグマかタヌキかわからない場合はすぐにその場を離れましょう。
薄暗いときは要注意
夕方や早朝はクマが活発に行動します。また雨や霧、強風など、見えにくい、聞こえにくい状況だと、ばったりと出会ってしまうおそれもあります。
食べ物やごみは持ち帰る
クマを引き寄せ、人間をおそう原因になります。またキャンプのさいは調理や食事はテントから100メートル以上はなれた場所で行い、テントの中に食料を保管するのはやめましょう。
犬を連れて歩かない
訓練された犬以外は、クマをむだに興奮させてしまいます。クマの生息地域では、出没じょうほうを電話やインターネットで知ることができる自治体もあります。事前に確認しておくとよいでしょう。
熊に遭遇してしまった時の対処法
もちろんですが、一番は熊に遭遇しないための予防策をしっかりとすることです。
しかし、どうしても偶然出会ってしまったときの最終手段をご紹介します。
まずは、絶対にやめたほうがいいのが、悲鳴などの大きな声で熊を刺激したり、走って逃げたり、死んだふりをするのはNGです。
諸説はありますが、目を合わせるのもヒグマにとってはストレスだと言われています。
ですので、ゆっくりと目を合わせずに後ずさりで距離をとりましょう。
また、至近距離で熊と出会っておそわれてしまった時は、とにかく死に物狂いで反撃することが重要です。
実際に「熊が襲ってきた場合の対応」は私は未経験だが、過去の事例からいえることは、「死にものぐるいで抵抗反撃すること」。「死んだふりをするなど論外(意識ある状態で、熊の爪や歯の攻撃にじっと耐えられる人間など誰もいない)」。鉈(なた)があれば、最善である。鉈で熊の身体のどこでもよいから叩くことだ。そうすれば、熊も痛さを感じ、怯んで、人を襲うのをまず止め、躊躇しながらも立ち去るものである。
既述のように、人と遭遇し興奮して我を忘れて襲ってきた熊は、人の少しの抵抗で、我に返り、そそくさと立ち去るものである。以上のことは、過去の事例から明白である。これ以外に「襲い掛かってきた熊を熊撃する確実な方法」はないと思う。「熊の鼻先を叩け」という人がいるが、うまく叩けるものではない。熊の痛覚は全身にあるからどこを叩いてもいい。
また、それ以外にも熊撃退スプレーなども有効といわれています。
そもそも、こういった危ない目にあわないように、熊が出没する危険な場所には行かないことをおすすめします。