「ミツユビハコガメ」というカメをご存知でしょうか?
カメを好きな方でないと聞き馴染みは無いかも知れませんが、とても不思議な生態のカメとなりカメの仲間で唯一毒を有する種なんです。
「毒ガメ?」ちょっと衝撃ですよね。
実は、この毒は餌として食用にする毒キノコから来ているようなんです。
しかし、その一方では毒ガメなのに中型の大きさで飼育もしやすく、ペットとしての人気も高いのだとか。
気になってきますよね?
今回は、このミツユビハコガメの生態や毒、飼育方法などについて詳しくご紹介してまいります。
ミツユビハコガメ
「ミツユビハコガメ基本データ」
- 分 類 カメ目 ヌマガメ科 アメリカハコガメ属
- 学 名 Terrapene carolina triunguis
- 和 名 ミツユビハコガメ
- 英 名 Three-toed Box Turtle
- 甲 長 12から18センチメートル程度
- 寿 命 25から35年(諸説あり)
- 分布域 アメリカ合衆国(ミズーリ州、アラバマ州およびテキサス州など)
- 生息環境 森林地帯や草原
ミツユビハコガメの特徴
ミツユビハコガメは北米原産の陸生のヌマガメになります。陸生のヌマガメと言うのは非常に分かりにくいですが、生息環境や甲羅の特徴的な形状からほぼ陸生と考えられます。
甲羅は陸ガメのように高く盛り上がった丸いドーム型で、かなり大きく盛り上がった印象を受けます。因みに高さをあらわす甲高は甲長の42パーセント以上になります。
甲長は甲羅の頭部分から尻尾部分を直線で測った大きさで、ミツユビハコガメの場合には12から18センチ程度になります。
甲羅自体は滑らかな感じで、デコボコとなるはずのキールは全く目立ちません。
甲羅の色は、茶色で個体によって薄いものもいれば濃いものもあります。
腹部(腹甲)は黄色や黄土色となり、甲羅以外の頭や手足などは黒(こげ茶)で、黄色やオレンジなどの斑紋が入っています。
この斑紋は個体により派手目地味目様々あるようです。
成長した雄には、稀に頭部に赤みを帯びるような個体もあらわれることがあるようです。
また雄の目が赤いのが特徴的で、これにより雌雄判別を容易に行うことが出来ます。雄と雌の違いは、この目の色以外にも頭や後足の爪の大きさに違いがあり、雄の方が大きくなります。
このミツユビハコガメという名前は後足の指の本数が3本ということから「ミツユビ」となるのですが、稀に4本の指となる個体もあるようです。
さらに「ハコガメ」は手足や頭などを甲羅の中に引っ込めたときに腹甲が折曲がり完全に蓋をすることで箱のようになることから来ています。
また、大きな特徴としてカメ類で唯一毒を有する種であります。
確かに、頭や手足の黄色やオレンジ色の斑紋は有毒性を感じさせますね。勿論これは偶然なんですけどね。
ミツユビハコガメの生態
ミツユビハコガメは、北アメリカに分布をしており、生息環境は森林地帯や草原になります。陸生のヌマガメとなりますが、実際にはほとんど陸生と考えられます。
とは言え、乾燥を好むというわけではありませんのでやはりヌマガメなんですね。
昼行性であり、活動は日中になりますが夏には気温が高くなるので早朝または夕方、雨後など涼しい時に活動します。あまりにも暑くなるような場合には、陸生とは言え水中に避難するようですね。
冬には冬眠をしますが、乾燥する乾季などは落ち葉の中や倒木の下、泥の中などで休眠をすることがあります。
食性は雑食性で、昆虫や魚、小型の動物などから花に果実などまであらゆるものを餌とします。
この中にはキノコ・毒キノコも含まれます。ミツユビハコガメは毒に対する抗体を持っているため、毒キノコの毒で死んでしまうことはおろか体に変調が起こることもありません。
むしろ、この餌となる毒キノコの毒が体内で蓄積されてミツユビハコガメが毒ガメへと変身していくのです。
つまり、もともと毒を有するわけでも、自分で毒を作り出すわけでもないのですね。
繁殖は卵生で、雄は5年程度、雌は7年程度で性成熟を迎え繁殖可能になります。
繁殖期は春ですが、冬眠期間である冬以外はいつでも交尾が可能です。これは雌が精子を体内に蓄えられることも関係しているのかもしれません。
雌は、交尾した際の精子を体内に蓄えておくことが出来るので、翌年など交尾無しでも産卵が出来るのです。交尾から4年後に産卵した個体もあるようですね。
産卵は春から夏にかけて行われます。
地面に10センチメートル程度の穴を掘り、そこに1から10程度の卵を産み落としていきます。
10から40日程度の間隔をあけ年に2回程度、多い場合には5回程度の産卵を行います。
孵化は70日程度で行われ、時期によっては地中で冬眠をしてから地上へ出てくることもあるようです。
種類
ミツユビハコガメは、カロリナハコガメ(Terrapene carolina)の6亜種のうちの1種であります。
この中では飼育人気も高く最もメジャーな種類になるのではないでしょうか。
「6亜種」
- ミツユビハコガメ
- トウブハコガメ
- フロリダハコガメ
- ガルフコーストハコガメ
- メキシコハコガメ
- ユカタンハコガメ
アジアにも「ハコガメ属(別名:アジアハコガメ属)」の種が存在し同じように甲羅に蓋をするのですが、特徴は同じでも全く異なる別種になります。
アジアハコガメの方は10亜種が存在しますが、いずれも甲羅はのっぺりとし、色彩も地味な感じです。
甲羅が大きく膨らみ派手な個体も存在するアメリカハコガメとはこのあたりに大きな違いがありますね。
毒は餌となる毒キノコから
ミツユビハコガメはカメの仲間で唯一毒を有する種になります。
前述しましたが、ミツユビハコガメは元々体内に毒を有しているわけではありません。また自分で毒を作り出す機能を所有しているわけではありません。
では、如何にして毒を有するのでしょうか?
それは、餌の一つである毒キノコを食しその毒キノコの毒が体内に蓄積されていくという仕組みなのです。海に生息するフグなどの有毒生物と同じ原理になります。
この毒は相手に対して攻撃して仕掛けるものではなく、食した場合に毒にやられてしまうというもので食さなければ一切問題はありません。
あくまでも護身のための最終防御法なんですね。
このことから、ペットとして飼育する人も多くいます。
因みにこの毒はフグのように内臓部分ではなく、全身の肉部分にこの作用が働いています。
仮に人間がミツユビハコガメを食べてしまうと中毒、最悪は死に至るケースもあるようです。
ミツユビハコガメの飼育
ミツユビハコガメは、有毒ではあるものの食さない限り毒による危険性が無いことから飼育も可能です。
その飼育のしやすさから、ペットとしての人気は非常に高いようですね。
現地では、WCの野生のものを採集してペットとして飼育する方もいるようですが、野生のものは生餌しか食さないなどの偏食個体が多く飼育には向かないようです。
CBの飼育下繁殖個体のものがペットとしては向いています。
アメリカではワシントン条約でミツユビハコガメの輸出が禁止されているため、日本で入手するものは自然とCBとなるので心配はないかも知れません。
飼育方法
飼育容器は、幼体の場合には60から90センチメートル程度の水槽や衣装ケースなどで大丈夫です。成体になると90センチメートル以上は必要になります。理想としては屋外飼育が望ましいですね。
保湿性のある素材を5から10センチメートル程度の厚さで床材として敷き詰め、温度は22から28度、夜間は15度とする必要があります。
容器内は、浅い水入れをし2か所程度の陸避難場所を設置しておきます。照明は紫外線入りの爬虫類用蛍光灯で大丈夫です。
餌は、ペットショップで調達できるのでそれを使用します。毎日の霧吹きで湿度調整と冬の冬眠を心得ておけば問題なく飼育出来るようです。
まとめ
今回ミツユビハコガメについて色々とご紹介してまいりました。
世界は広いというか動物は不思議というか、カメにも有毒のものがいるんですね。
また、陸生のヌマガメという響きも非常に好奇心をそそられてしまいます。
マニアの心を掴んで離さないのも理解できますね。
ペットとしての人気の秘密はこういうところにあるのかも知れません。
今度ペットショップに行かれたら是非覗いてみてください。
もしかしたら、虜になってしまうかも知れませんよ。