今回ご紹介いたしますのは「ウミヘビ」です。
ウミヘビと言うのはウナギやウツボなどの仲間で魚類なのでしょうか?それともヘビの仲間で爬虫類なのでしょうか?
答えは両方とも「イエス」になります。両方の種が存在するのです。
猛毒を持つことで知られているウミヘビですが実は非常に種類が多く、中には「毒なし」毒を持たないものも存在しているのです。
日本では沖縄などでも見かけることがありますね。
今回はこのウミヘビについて、その種類一覧から毒性、咬まれた時の対処法などをご紹介いたします。
ウミヘビとは
「ウミヘビ」と呼ばれる生物には様々な種類が存在します。
まず大きく分けられるのがヘビなどと同じ「爬虫類」に分類される種とウナギやウツボなどと同じ「魚類」に分類される種になります。
ウミヘビと言えばたいていの方が「猛毒」を持つ危険な生物をイメージされると思いますが、毒なしつまり毒を持たない種類も存在します。
毒を持つ種は、「爬虫類」に分類される種で、「魚類」に分類される種は基本的に毒なし無毒です。
爬虫類のウミヘビ
爬虫類のウミヘビは、海に適応進化したヘビの種類で「爬虫類有鱗目ウミヘビ科」(「コブラ科ウミヘビ亜科」とする説もあり)に属します。この下には属があり、更に多くの種類が存在します。
多くは太平洋西部やインド洋の熱帯から亜熱帯の海域に分布しております。尚、回遊する種においては冷たい海域へも移動することがあります。
生息環境としては、サンゴ礁や浅瀬の岩礁などに潜んでいることが多いですね。
食性は魚を中心にした肉食性で、特徴的なのは爬虫類となるため肺呼吸をすることです。
1分程度毎に海面から顔を出して息継ぎをしています。
上述のように他種の存在があるので、体形や体色も様々あります。
同じウミヘビでも種によって腹盤の有無の違いもあり、セグロウミヘビなどは腹盤持ちませんがエブラウミヘビなどは陸にも上がるので腹盤を持っています。
尻尾は泳ぎに適して縦に平たくなっていて身体をくねらせるようして泳ぎます。
全体的に体には横縞の模様が入るものが多く、これには諸説ありますが横縞を持つコブラが祖先筋にあたることが関係しているようですね。
このコブラが祖先筋となることからも分かるように爬虫類のウミヘビには強力な神経毒があります。
性格的には好戦的ではなく温厚な性格の種が多く、むやみに攻撃してくることは無いようですがうっかり触ろうとすると咬まれてしまうこともあるようです。
爬虫類のウミヘビの種類一覧
爬虫類のウミヘビ科には次の属が存在します。
- ミナミウミヘビ属 Aipysurus
- カメガシラウミヘビ属 Emydocephalus
- ウミコブラ Hydrelaps darwiniensis
- アラフラウミヘビ Parahydrophis mertoni
- オビウミヘビ Ephalophis greyi
- コガシラウミヘビ属 Microcephalophis
- ウミヘビ属 Hydrophis
- エラブウミヘビ属 Laticauda
※ この中でエラブウミヘビ属は、一般的にはウミヘビ類とされますが、細かく分類をすると別の系統に属するようです。
分類と種数
ミナミウミヘビ属には「オリーブミナミウミヘビ Aipysurus laevis」などの7種が存在します。
カメガシラウミヘビ属には「イイジマウミヘビ Emydocephalus ijimae」などの2種が存在します。
ウミコブラ(属)は「ウミコブラ Hydrelaps darwiniensis」1種になります。
アラフラウミヘビ(属)は「アラフラウミヘビ Parahydrophis mertoni」1種になります。
オビウミヘビ (属)は「オビウミヘビ Ephalophis greyi」1種になります。
コガシラウミヘビ属には「コガシラウミヘビ Microcephalophis gracilis」などの2種が存在します。
ウミヘビ属は「ベルチャーウミヘビ Hydrophis belcheri」などの34種が存在します。
エラブウミヘビ属には「エラブウミヘビ Laticauda semifasciata」などの5種が存在します。
※ウミヘビ属は最多種が属していますが実質的には「側系統群」になります。
魚類のウミヘビ
一方魚類のウミヘビはウナギなどの魚の仲間でそのものずばり魚類になります。
属性としては「魚類ウナギ目ウミヘビ科」に属することになります。また爬虫類のウミヘビと同様にここから細かい分類が存在します。
分布は爬虫類のウミヘビと同様に熱帯や温帯の温かい海域(沿岸域から外洋)になり、生息環境はこちらもサンゴ礁などで見ることが多いようです。
魚なのでエラを持ちエラ呼吸をしています。また、そのエラを形成する鰓条骨(サイジョウコツ)が多いのも特徴的です。
ウロコは退化して目立ちませんが、鰭があります。また、種類によって胸鰭を持つ種と持たない種があります。
同様に、尾鰭も明確に尾鰭として存在しているもの、細い尻尾で尾鰭としては存在しないものに分かれます。
こちらの尾鰭の特徴は亜科種として区分され、前者は「ニンギョウアナゴ亜科」後者は「ウミヘビ亜科」と分類上分けられています。
魚類のウミヘビの種類一覧
魚類のウミヘビ科には上述のように次の2種の亜科に分類されます。
- ニンギョウアナゴ亜科 Myrophinae 尻尾がある
- ウミヘビ亜科 Ophichthinae 尻尾がない
分類と種数
ニンギョウアナゴ亜科には「ニンギョウアナゴ属 Myrophis」などの11属が存在します
ウミヘビ亜科には「ウミヘビ属 Ophichthus」などの41属が存在します。
これら計52属の中に細かく290もの種類が存在することになります。
ウミヘビの毒性
前述のようにウミヘビの中で爬虫類のウミヘビの種には強力な毒性を持つものが多いです。
※カメガシラウミヘビとイイジマウミヘビの2種においては、毒性が退化しているともされています。
ウミヘビに咬まれると非常に危険です。
この毒とは、祖先筋としてあげられてるコブラと同じ神経毒でその強さはハブやマムシの持つ毒の数十倍とも言われています。
毒ヘビのランキングTOP10をした場合に半数以上をこのウミヘビの種類で占めると言われているのですから、その凄さがわかりますね。
もし、ウミヘビに咬まれてしまうと痙攣や麻痺、痺れ、呼吸困難などの症状があらわれ最悪の場合には心臓麻痺を起こして命を落としてしまう危険性もあります。
もしもウミヘビに咬まれたら
もしもウミヘビに噛まれてしまった場合には、水中の場合には速やかに海から出て、陸上又は船上に上がりましょう。
応急処置としては、傷口よりも心臓に近い部分をタオルなどで縛り毒の体内循環を遮ります。
すぐさま傷口を綺麗な流水で洗い流しながら体内に入っている毒を絞り出しましょう。
タンニンには毒を中和させる作用があると言われています。濃いめのお茶や紅茶などで傷口を洗うことも推奨されているようですね。
応急処置を施したとしても、緊急を要する事には変わりありませんので、すぐに救急車を呼び医療機関で診てもらってください。
【注意点】
- 非常に緊急性が高い状況になります。
- 呼吸や心肺停止の場合には、すぐさま人工呼吸に心臓マッサージを行い救急車の到着を待ちます。
- ウミヘビを見かけても近寄らないことです。
- ウミヘビの牙は短いので、噛まれても大丈夫と言う説もありますが、過信は禁物です。
日本のウミヘビ
このように咬まれてしまうと非常に危険なウミヘビですが、日本においても沖縄を中心に見ることが出来ます。
日本近海で見ることが出来る(可能性がある)のは次の9種になります。
- エラブウミヘビ
- ヒロオウミヘビ
- アオマダラウミヘビ
- クロガシラウミヘビ
- イイジマウミヘビ
- セグロウミヘビ
- マダラウミヘビ
- クロボシウミヘビ
- トゲウミヘビ
このうち沖縄の海で実際によく見かけるのは、エラブウミヘビ、ヒロオウミヘビ、クロガシラウミヘビ、イイジマウミヘビ、セグロウミヘビの5種になります。
他4種は近海に来てはいるのですが、見かけるのはレアケースになりますね。
まとめ
今回は、猛毒を持つウミヘビについて色々とご紹介をしてまいりました。
ウミヘビには爬虫類と魚類それぞれの種類が存在していることは、あまり馴染みがなかったかも知れませんね。
多くの方はウナギやウツボなどと同じ魚類と思われているのかも知れません。
しかも毒があるのは爬虫類の方というのもまた驚いてしまいます。
日本でも沖縄の海では潜れば、出会うという程に馴染み深いウミヘビです。
もし見かけても綺麗だからと近寄ったりはしないでくださいね。