今回ご紹介するのは「アメリカン・ピット・ブル・テリア」という犬種についてなのですが、犬好きの方であればご存知かも知れませんね。
あまり犬に詳しくない方には、「映画のタイトル」と思われる方もいらっしゃるかも知れません…。
通称「ピットブル」と呼ばれ、欧米では非常に人気のある犬種なんです。テリアという名前から可愛らしい愛玩犬をイメージしがちなのですが、そこは大きな勘違いでその強さから「最強の犬!」と推す方が非常多いのです。
勿論、性格的には従順な一面も持っているので、きっちりとした訓練としつけが出来ていればなんら問題はありません。
しかし、一歩間違えると非常に危険な狂犬と化してしまいます。実際にアメリカでは犬が起こした人命にかかわる事件の中でこのピットブルによるものが断トツなんです。
それでは早速、このピットブルの生態や性格から飼育に至る値段まで、詳細にお伝えして参りましょう。
目次
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」
- 原産国 アメリカ
- 通 称 ピットブルなど
- 体 高 50センチメートル程度
- 体 重 30キログラム程度
- 寿 命 12年程度(推測地)
- 特 徴 もともとは闘犬として改良された犬なので、噛む力が非常に強く攻撃的な性格を持ち合わせる。
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」の歴史
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」はよくよく考えるととても不幸な始まりと言えるかも知れません。
ピットブルが誕生したのは1870年頃で、当時はやっていた闘犬(ドッグファイティング)で勝つために作られた犬種なんです。
これが見事に成功して完成されたピットブルは、優れた身体能力に破壊力のある攻撃性、勇敢さに闘争心と闘犬に必要なすべてを兼ね備えたスーパードッグとして人気を博したのです。
しかし、動物愛護という観点から闘犬が禁止され、非合法な裏賭博として近年まで続けられてきました。その結果ピットブルは非合法な裏賭博の主役となってしまったのです。
勿論、表舞台でも牧畜などでクマやオオカミから家畜を守るガードドッグとしても重宝されていましたが、犯罪を行う者たちが自身のガードドッグとしてこのピットブルを飼育したことから、悪者犬のイメージが定着してしまったのです。
そして、ピットブルに対して上手にしつけや訓練が出来ない飼い主が出現したことによりピットブルの関わる事件・事故が多発したことで悪いイメージは決定的となってしまいました。今では、飼育を禁止する国も多数あります。
ほんの一部の人間ではありますが、私利私欲の為に利用されてしまったピットブルは「凶悪」という払拭しきれないレッテルが張られることになったのです。
そう言った意味ではピットブルは人間による被害者とも言えますね。
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」の生態(特徴や性格など)
最強の犬とも称されるピットブルはがっしりとした体形から大型犬と思われがちですが、実際には中型犬という扱いになります。
勿論大きめの中型犬となりますが、筋骨隆々の体形にお尻がきゅっとしまった体形はライオンのようで格好良いです。一見いかつさが目立ちますが、両目が離れたたれ目と短いマズルのおかげで憎めない愛嬌のある顔立ちをしています。
頭は闘犬仕様の為比較的大きく、しっかりとした顎を持ちます。
耳は本来は可愛い垂れ耳なのですが、闘犬仕様として断耳されることが多く写真で見ると立ち耳の個体が多いように思われます。同様に尻尾も中くらいの長さなのですが、断尾されることが多いようです。
毛色は、白や黒、茶にグレーなど様々なものが存在します。
中型犬ではありますが、稀に非常に大きな個体があらわれることもあり、個体差が激しいようです。少し前にメディアでも取り上げられた「ハルクくん」は80キログラムもある立派な大型犬でしたね。
日本においては、現状「アメリカン・ピット・ブル・テリア」という犬種はジャパンケンネルクラブでは認められておらずミックス犬扱いになります。
その為、血統書の発行はそれ以外の団体からのものとなってしまいます。
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」の性格
ピットブルはとても従順な性格で、賢く物覚えも良いですね。
警戒心は強いですが、見た目からは想像もつかないくらいにフレンドリーにもなりますので、意外に番犬向きでない一面もあるようです。
ただし、非常に強い防衛本能がありそこに火が付くと何事にも怯まない闘争心と相まって非常に攻撃的になる心配があります。
特に他犬に対しては敏感のようですぐに攻撃的になってしまう個体があります。これは闘犬で培われたものがDNAとしてあるようですね。
飼育する場合には、子供の時から他の犬との触れ合いをさせ社会性を学ばせる必要があります。
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」の強さの秘密
これは前項の特徴に入れるべきかもしれませんが、あえてこの強さの項目でご紹介します。
ピットブルが最強と言われる所以は、大型犬では無いにも関わらずその精神的な強さ不屈の精神があげられます。自分よりもはるかに大きな相手に対しても怯むこと無く果敢に攻撃を仕掛けていくのです。
また、この攻撃に必要な身体能力もずば抜けています。スピーディな動きは勿論なんですが、噛みつく力は107キロととても中型犬とは思えない堂々たる数値を叩き出すのです。
更には、防御ともなる柔軟な筋肉の鎧を身にまとい、まさに戦うために作られたバトルサイボーグドッグ、戦いのエキスパートなんですね。
戦いとなれば天性の気性の粗さが全面に押し出され、一度戦闘モードに入ってしまうともう誰にも止めることは出来なくなってしまう程です。
その闘争本能といつまでも戦い続けることが出来る持久力、更には相手の急所を狙う的確な攻撃力はまさに異次元レベルで、犬に限らず同じ程度の大きさの動物であればピットブルは負けることは無いかも知れません。
その危険性から飼育が禁じられている国もある程で、この「アメリカン・ピット・ブル・テリア」のファイティングドッグとしての素質は凄いと言えます。
土佐犬に勝つ!
闘犬と言えば、我が国日本においても非常にメジャーな闘犬となる「土佐闘犬」が存在します。
日本の闘犬とピットブルが活躍したドッグファイティングでは、勿論ルールが異なりますので、一概にどちらが凄いとは言えないのですが興味深いエピソードがあります。
ピットブルがドッグファイティングのチャンピオンとして鳴り物入りで日本に来た時に、土佐闘犬の関係者は一様に「こんな小さな犬が強いわけあるまい」そう思ったそうです。
実際にピットブルと土佐闘犬を戦わせたところ、ピットブルが勝利を収めたというのです。
それ以外でもこの土佐闘犬とピットブルの戦いは行われ、ピットブルが土佐闘犬を圧倒することが多いとされています。
ルールの中で戦う闘犬とルール無用のドッグファイティングの試合形式の違いはありますが、中型犬のピットブルが大型犬の土佐闘犬を倒したというのはまさにセンセーショナルな出来事なんです。
動物界においては、身体の大きさが強さと比例するという常識を覆したレアケースとも言えますね。
ピットブルが活躍するドッグファイティングでは、やるかやられるかの生死をかけた戦いが行われます。生き残るためには相手を殺傷してしまうような攻撃力が必要であったのです。
このことも、ピットブルが最強の犬であると言われる所以となるのですね。
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」により起こった事件が断トツその危険性は?
アメリカの疾病対策センターの発表によりますと1979年から1998年の20年間に起きた犬による人間の死亡事件(事故)は238件あるのですが、この内ピットブルによるものが66件と断トツで3割にもおよぶのです。
これが2012年の調査結果によると6割強と倍以上に跳ね上がっているのです。しかもこの2012年に場合には、飼育犬全体で6パーセント程度のピットブルが6割強という数値を出したことに驚かされてしまいます。
死亡事故の中で、その被害者にはその飼い主およびその家族なども含まれています。
またもっとも顕著なのが子供の被害でついついちょっかいを出ししてしまう子供に敏感に反応するのは勿論なのですが、ある研究では子供を見て無条件で攻撃をする確率がピットブルは95パーセントにもなるそうです。
他の犬種が35パーセント程度ということを考えますと、凄まじく高い割合になります。
ただし、これは前述のようにきちんとした訓練としつけが出来ていないという飼い主の責任が大きいとされています。
「アメリカン・ピット・ブル・テリア」を飼育するには
海外では、その凶暴性が取り上げられ、飼育すること自体禁止されている国もありますが、日本においては飼育の禁止はされていませんのでピットブルを飼うことは可能になります。
ただし、個体差はあるもののこれまでお話したように非常に飼育するのが難しい犬種であることは間違いありません。
もし飼育をされる場合には、ペットショップやブリーダー、里親制度などで入手が可能なのですが、しつけや訓練状況などきちんと把握・相談できるブリーダーからの購入が一番良いでしょう。
アフターフォローが無いペットショップや里親制度の場合には、そのあたりをきちんとしておかないと危険な場合もあり得ます。
ピットブルは体力もあり、豊富な運動量を必要とします。勿論、万が一の危険も伴う恐れがるのです。
飼育するには、それなりの覚悟が必要であることは忘れないでください。
その価格は?
ピットブルの子犬の価格は12万円から17万円程度が相場のようですが、中にはしつけや訓練状況により30万円といった場合もあるようですね。
勿論、個体によって差はありますが、価格よりもしつけの有無や順応性の方が重要と考えられます。
まとめ
今回「アメリカン・ピット・ブル・テリア」についてご紹介をして参りました。
中型犬なのに「最強の犬」と称されることが多いこのピットブル、日本ではあまり馴染みが無いかもしれませんが色々な面でとても魅力的な犬種ではありますね。
一部の人間によって、運命を翻弄されてしまった悲しい犬種とも言えるピットブルです。
これからの繁栄はどうか穏やかであって欲しいと願わずにはいられません。
しかしだからと言って、安易に「飼育して可愛がろう」などとは思わない方が賢明なのかも知れません。