「人食いザメ」「白い死神」などとも呼ばれ、非常に凶暴で恐ろしいホオジロザメは、最もメジャーなサメとなるでしょう。
これは、映画「JAWS」の影響が大きいかと思います。
人々を恐怖のどん底に陥れる衝撃的なシーンは今でも目に焼き付いていますから。
ただ、海の生態系の頂点に君臨するホオジロザメも、天敵となるシャチには倒されてしまうこともあるのだとか。
恐ろしさばかりが先行してしまうホオジロザメですが、実は意外とまだ知られていないことも多いようですね。
今回はこのホオジロザメについて、色々とご紹介してまいります。
目次
ホオジロザメ
「ホオジロザメ基本データ」
この人間とホオジロザメの恐怖の関係性は今でも世界の海で続いております。
- 分 類 ネズミザメ目 ネズミザメ科 ホオジロザメ属 ホオジロザメ
- 学 名 Carcharodon carcharias
- 和 名 ホオジロザメ
- 英 名 Great white shark
- 体 長 400から500センチメートル程度
- 体 重 700から1100キログラム程度
- 寿 命 これまで20年前後とされて来たが70年以上とする説も
- 分布域 世界中の海に広く分布(亜熱帯域から亜寒帯域まで)
- 生息環境 沿岸部など
ホオジロザメの特徴
ホオジロザメはネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属に属するサメの仲間で、現在ではこのホオジロザメ1種でホオジロザメ属になります。
ホオジロザメという名前は、側頭部が白いことから頬が白いサメとなりこの名前が付けられているのですね。
人間が最も被害に合っているサメで「白い死神」という恐ろしいニックネームもある程です。
しかし、白いのはこの部分と腹部のみで、背中は黒又は黒に近い灰色と綺麗なツートンカラーになっています。
身体は流線型のがっしりとした体形で、綺麗な三日月形の尾を持ちます。
体長はサメの仲間ではジンベイザメ、ウバザメに次ぐ大きさで、平均すると体長4、5メートル、体重700から1100キログラム程度という立派な体格を誇ります。
興味深いことにこのホオジロザメの最大種には諸説あり、11メートルを超す個体の報告や、7メートルを超えると推測される個体の報告など様々あります。
今のところ専門家の意見としては体長6メートル、体重1900キログラム程度が最大個体となるとされています。
肉食魚として恐れられるホオジロザメだけにその歯は非常に鋭利な三角形をしています。
歯の長さは7.5センチメートル程度と大きくギザギザとした鋸状になっているのです。
この歯は獲物の肉を食いちぎるのには非常に適した形で、ホオジロザメの場合に一噛みで14キログラム程度の肉片を食いちぎることが出来るようです。
歯は三列構成で、実はホオジロザメの歯は意外にもろく欠けやすいのです。
しかし一本でも歯が欠けてしまえば、後ろの歯列が押し出されてくる仕組みになっています。
これはサメの仲間共通の特徴で何回でも生え変わることが出来るので、いつでも強力な歯が生え揃っていることになります。
またこちらもサメ特有の特徴ですが、鼻先にはロレンチーニ器官があり、これにより獲物の動きや位置情報を正確に感じ取ることが出来ます。
しかし、あまりにも敏感であるため、ここを触られると制御不能となり大人しくなるとされていますね。
これは海に潜るダイバーの心得としても教えられているようです。
ホオジロザメの生態
ホオジロザメは、世界中の海(亜熱帯域から亜寒帯域まで)に幅広く分布しています。
多くは大陸沿岸域の浅い部分を泳いでいるようです。しかし250メートル以上深いところに潜ることもあることから餌となる動物(アザラシやオットセイなど)の行動によるところが大きいようですね。
また、ホオジロザメは非常に高い身体能力と高い知性を兼ね備えていることでも有名です。
熱交換システムが発達していて体温を海水温よりも高く保つことができますので、魚類(軟骨)の中では非常に高い運動能力を有します。
泳ぐ速度は時速25から35キロとそこまで速い部類ではありませんが、獲物を狩る際の海面ジャンプは完全に体が飛び出す程です。
この巨体を持ってそれが可能となるのは高い運動尿力が無ければ不可能ですね。
噛む力は303キロとライオン程度はあるのですが、正直想像よりは小さく感じてしまいます。
実はこれには理由があります。ホオジロザメの歯は非常に鋭利であり獲物を噛み切るのにそこまで力を必要としないのです。
逆に力が強いと自分を傷つけてしまう恐れがあります。
このことから、ワニのような強力な噛む力は必要としないのです。それでも303キロですから凄いのですけどね。
知力も魚類の中ではかなり高いようで失敗から学ぶ狩りや、仲間との社会性などかなり高いものを持つようです。
食性は動物食の肉食性で、アザラシやオットセイ、イルカなどを好んで捕食します。
他にも海鳥や魚類なども捕食対象となりますし、クジラなどの死肉を食する姿もよく見られます。
これには死肉の方が主となる説もあり、狩りの際に相手に噛みついて弱って死ぬのを待っているともされています。
これは、歯がそこまで丈夫でないため折れやすく、獲物が暴れると折れてしまいその歯が自分の体内に入り傷付くのを防いでいるという説もあります。
狩りの方法は、奇襲をかける方法が専ら多いようです。これは、獲物となる動物の泳ぐ速度がホオジロザメよりも早い為、そうせざるを得ないようですね。
上述の海面ジャンプはその最たるもので、海面にいる相手の不意を突いて海中から急上昇して攻撃を仕掛けます。その勢いそのままに海面ジャンプへと繋がるわけです。
ホオジロザメの繁殖
繁殖は魚類では珍しく交尾をし卵胎生として出産します。ホホジロザメの子宮の中で孵化した子供が胎内にある未受精卵や他の稚魚や食べて育つほか分泌される子宮ミルクで育っていきます。
一度の出産で2から15匹ほどの子供を産みますが、体内で兄弟同士の弱肉強食の戦いが繰り広げられて勝ち残った者のみが体外へと出てくるようです。
1年以上の期間を経て体外へ出てくる時には1メートルを超す大きさになっています。
最初の内は魚などを捕食して大きくなるにつれて哺乳類などを捕食するようになります。
因みにサメを漢字であらわすと「鮫」となりますが、これは唯一交尾をする魚からきているとも言われています。
ホオジロザメの寿命
ホオジロザメの寿命はこれまで様々な調査の結果、20年程度とされていました。
勿論、この20年というのは魚類では非常に長寿なのですが、どうやらもっと長いようなんです。
新しい研究によるとホオジロザメの寿命は70年を超えるという報告もあるのです。
ジンベイザメの寿命が100年を超えるとされる中、ホオジロザメの20年という数字は以前より疑問視されていました。
今回の調査では、ホオジロザメの個体から東西冷戦時代の核実験によると見られる放射性物質の痕跡が見つかったようなのです。
総合的な判断から1950年前後には生存していた個体であるとされています。
そうなりますと、70年を超す生存期間を誇ると考えられるようなんです。
勿論、この個体のみ特例的、もしくは放射能の影響で強固になった可能性もありますが、この研究結果が本質的なものであるのであれば、これまでの寿命を50年以上も上回ることになるのです。
更なる研究に期待が寄せられています。
天敵はシャチと仲間そして人間!
そんなホオジロザメの天敵となるのはシャチや自分よりも大きなサメ、そして駆除や乱獲をする人間も含まれますね。
よく「シャチとホオジロザメはどちらが強いのか?」とされますが、残念ながら体格身体能力すべての面でシャチが上回ります。
いくらホオジロザメでもシャチには敵わないようなのです。
シャチがホオジロザメを捕食する姿はよく確認されているのでこちらは紛れもない真実となります。
そして、意外なのが共食いです。
大型のホオジロザメが自分よりも小さいホオジロザメを襲うこともよくあるようです。
またホオジロザメは、魚類であるため内臓を守るための骨格を持ちません。このため外的な衝撃に対して非常にもろい一面があります。
イルカの子供を捕食しようとしたホオジロザメが親イルカの体当たりをまともに受けて内臓破裂で死亡した例も報告されています。
人間とホオジロザメ
ホオジロザメはサメの仲間で最も多く人間を襲っているのは記録的にも間違いはありません。
この恐ろしいホオジロザメに遭遇してしまうと非常に危険であり、世界中で死亡事故や損傷事故は起こっています。
これゆえ、ホオジロザメを駆除することになり、そのっ結果人間がホオジロザメの天敵ともなるのです。
人間が襲われる理由
人間が襲われる理由としては、サーフィンや漁・レジャーでの潜水、遊泳時に被害にあうのが多いようです。
これはホオジロザメの生態が昼行性であること沿岸付近での生活であることから人間が海に入る機会と重なることが非常に多い為に起こってしまいます。
特にサーフィンなどパドリングの姿が獲物であるウミガメやアザラシに間違えられることや、潜水時の足ヒレも同様に動物とご認識されていることが多いようです
予防策
ホオジロザメによる事故の予防策としては、目撃情報のある海に入らないことが一番です。
また、入水時は獲物と間違われないような派手目の服装が良いともされています。
サメの嗅覚は鋭いので、出血時などの入水も避けましょう。
ホオジロザメによる事故
意外かもしれませんが、イメージと異なりホオジロザメによる人間が襲われたという事故は実はあまり多くありません。
1876年から2004年の間に世界で起こった事故が224件その内死亡事故となったのは63件というデータがあります。
数字だけ見ると多く感じますが、130年間で224件、つまり1年に2件も無いのです。死亡事故に至っては2年で1件ですね。
ワニやカバ、トラなどのそれと比べたら極端に低くなります。
これは映画などのイメージが先行してしまい、「ホオジロザ=人食いザメ」の図式が成り立ってしまったからなのかも知れません。
しかし、少ないとは言え、実際に事故が起こっているのは事実ですから気を付けなければなりませんね。
私達が暮らす、日本でも1992年3月愛媛県、1995年4月愛知県でホオジロザメによる死亡事故が起きています。決して対岸の火事と言う事では無さそうです。
ホオジロザメの飼育
ホオジロザメは非常にデリケートで飼育に向いていないようです。
現在ホオジロザメを飼育している水族館はなく、アメリカのモントレー水族館が半年の飼育記録を持ちますがそれ以外は全て短期間で死亡または断念したようです。
残念ながら、生でホオジロザメを見ることは海で遭遇しない限り出来そうもありません。
まとめ
今回、白い死神ホオジロザメについてご紹介いたしました。
非常に恐ろしいイメージが先行しておりましたが、デリケートな性格など意外な一面もあるようです。
実はこのホオジロザメですが、生息数が激減してきています。
これは人間の手によるものが多いようです。
恐ろしいホオジロザメですが、個体数の激減位は心を痛めてしまうところもありますね。
綺麗ごとかも知れませんが、人間とホオジロザメも適度な関係性で共生をして行きたいものですね。