幻の動物ともされていた「ユキヒョウ」。
生息地が標高5000メートルを超す高山ということもあり、ユキヒョウは滅多にその姿を見ることが出来ません。
自然と一体化出来るその姿は非常に美しくある種の神々しさを覚えてしまいます。
また寒冷地に適応した身体は特徴的で身体機能の高さは勿論、防寒として身体全体を覆う美しい毛並みに尻尾をマフラー代わりにするその愛らしさにも目を奪われてしまいます。
赤ちゃんともなればその魅力はさらに倍増されてしまいますね。
しかし、その神秘性と非常に高価となる毛皮や漢方としての骨の活用などで乱獲をされ、今ではユキヒョウは絶滅の危機に瀕しています。
今回はそんなユキヒョウについて、その生息地や生態、特徴、見ることが出来る動物園など詳細にご紹介して参ります。
ユキヒョウ
「ユキヒョウ データ」
- 分 類 食肉目 ネコ科 ヒョウ属 ユキヒョウ
- 学 名 Panthera uncia
- 和 名 ユキヒョウ
- 英 名 Snow Leopard
- 体 長 100から130センチメートル程度
- 体 重 35から75キログラム程度
- 尾 長 80から100センチメートル程度
- 寿 命 野生下15年 飼育下では20年を超すものもある
- 分布域 チベットやカシミール、中央アジア
- 生息環境 高山地帯、山岳地帯の岩の多い山腹など
- その他 絶滅危惧種
ユキヒョウの特徴
ユキヒョウの体毛は薄い灰色(黄色味、青味などあり)からクリーム色、腹部は白っぽくなります。頭や首、四肢には黒い斑点があり、背中から脇部分長い尻尾では梅花状の斑紋になっています。
生息地域が高山と寒い地域に生息していることから、体毛は非常に長くまた密度も濃く、背中部分では5センチ程度、腹部においては10センチ程度にもなるようです。
足の裏肉球部分にも毛が生えていて、防寒は勿論、雪の上を歩いても沈みにくいなど雪中歩行にも役立ちます。
四肢は短く前頭部が盛り上がり、鼻面は短く鼻腔が広いのが特徴的です。これにより冷たい空気を鼻腔で暖める事が出来るのです。
また、尻尾は太くて長い形状をしています。長さは体と同じ程度にもなり、走行時のバランス取りやマフラーのように身体に巻き付け暖を取ることにも使われます。
前述のように、斑点・斑紋という独特の模様が体毛に施されることで、周辺の岩などと同化する事が出来ます。
遠くから岩場に潜むユキヒョウを見つけることは困難な程で、狩りにおいては非常に役立つようですね。
体毛は普通の猫同様に、外的な刺激から守る長く少し硬めの外毛と保温効果抜群の柔らかく短い内毛の2層構造になっています。
季節により体毛の生え変わりが行われ、夏毛へは5月頃から生え変わり冬毛へは11月頃から生え変わり始めます。
因みに、ユキヒョウはその口(舌)の構造からその他の大型ネコ科動物の様に吠えることは出来ません。
その代わりに可愛らしい鳴き声を発します。これはチーターも同じですね。
ユキヒョウの生態
中央アジア(モンゴル西部、一部ロシア含む)の高山地帯に生息しています。
夏には標高2700から6000メートルの高原などで生活していますが、冬になると獲物がいなくなるので1800メートル(又はそれ以下)程度の森林地帯まで降りてきます。
また、生活は基本的には群れは作らず単独で行動するので、なかなか見かけることが出来ません。
40年ほど前までは野生のユキヒョウを見ることが出来ないため、幻の動物とも呼ばれていたほどです。
歴史的に見ると、氷河期が始めると祖先となるヒョウの仲間は南へと移動をしました。
しかし、ヒマラヤに残った一部が環境に適応し氷河期の終焉と共にアジアの高山地帯に取り残された種がユキヒョウとなり、人目に付かない幻の動物となったのです。
高山地帯にある岩穴などを住処として活用しますが、高山地帯は獲物が少ない為その行動範囲は非常に広く12から40平方キロメートルともされ、その範囲内に複数の住処を持っています。
因みに行動範囲内は一週間程度のスパンで回るようですね。
行動は基本的には夜行性で、昼間は住処に潜み夜間に行動をします。早朝夕方が最も活発になるようです。
食性は肉食性で、野生の羊や山羊(バーラルやマーコール)、イノシシに小動物、鳥類などを捕食します。
時には、家畜であるヤギなども襲うため害獣扱いされることもあります。
繁殖は12月から3月の冬から春にかけて行われ、100日程度の妊娠期間を経て1頭から多い時には5頭程度(たいていの場合は2、3頭)の赤ちゃんを産みます。
赤ちゃんのユキヒョウは、生まれたときから体毛が濃くフサフサしているので特に可愛らしいですね。
出産と育児は雌が単独で行い、2年程度で性成熟を迎え独立をしていきます。
ユキヒョウの能力
ユキヒョウは険しい高山地域に生息するだけあって、その身体能力が優れるとされるヒョウの中においてもユキヒョウのそれは非常に高いとされています。
太く力強い四肢から繰り出されるパワーは驚異的で、一跳びで15メートルという跳躍力を誇ります。
自身の3倍もの獲物をこの跳躍力とパワーを活かして捕えるなど、潜在的な能力は凄いようです。
急な斜面の上り下りや障害物が多い中での走行など、この険しい地域で生き残れるのは優れた能力が無くては無理なのでしょう。
また前述のように、特徴的な柄は姿を消す能力も授けていて狩りには非常に役立っています。
獲物は勿論、人間からも巧みに姿を隠すことから「灰色のゴースト」、「ゴースト・キャット」などとも呼ばれているのです。
因みに、ユキヒョウは家畜は襲いますが人間を襲うことはあまり無いようですね。
実はヒョウの亜種ではない
その名前からよく勘違いされるのですが、ユキヒョウはヒョウの亜種ではないのです。
もともとの祖先から、最初に「ウンピョウ」が独立します。残った種類が「のちのちトラとユキヒョウに分かれる種」と「のちのちヒョウとライオン(ジャガー)に分かれる種」に分かれます。
このことからもわかるように、どちらかと言うとユキヒョウはトラと近い種となるのです。
トラと兄弟でヒョウとは従妹と言えるかも知れません。
ユキヒョウとヒョウは体形や体毛などよくよく確認すると大きな違いがたくさん見えてきます。
基本的には人を襲うことはない温厚な性格もその違いかも知れませんね。
分類
上述の裏付けとしては、基本的にユキヒョウはこの種単体でユキヒョウの種になりますが、2006年に染色体検査を行いトラとの近い関係性(単系統群を形成)が確認されたのです。
ただし、ユキヒョウを「ロシアやモンゴルに分布する種(Uncia uncia uncia)」と「中国西部からヒマラヤヤ山系に分布する種(Uncia uncia uncioides)」の2亜種に分類する説もあります。
絶滅危惧
ユキヒョウは、毛皮としての貴重性や骨が漢方薬となるとされ乱獲をされてしまいました。
また家畜を襲う害獣ということで駆除対象ともなったためにその数は激減してしまいました。
その生息数は、一時は1000頭というレベルにまで落ち込んでしまったのです。
今では保護活動の成果もあり5000頭にまで回復したとされていますが、それでも絶滅危険水域であることは変わりなく、今なお国際自然保護連合のレッドリストには絶滅危惧種(EN)として指定されています。
ユキヒョウのいる動物園
今ユキヒョウは日本の動物園でもその姿を見ることが出来ます。
ユキヒョウを飼育している動物園
- 東山動植物園(愛知県)
- 多摩動物公園(東京都)
- 神戸市立王子動物園(兵庫県)
- 浜松市動物園(静岡県)
- 旭山動物園(北海道)
- 札幌市円山動物園(北海道)
特に赤ちゃんが生まれたときはその可愛らしい姿は一見の価値ありですね。
まとめ
今回、幻の動物「ユキヒョウ」についてご紹介をして参りました。
標高5000メートルを超す厳しい環境で生き抜くその姿には感動すら覚えてしまいます。
何といっても、その環境に適合した身体の作りに身体機能は目を見張るものがあります。
それに加えて、人目に付くことが少ないのですから余計にユキヒョウに会ってみたくなりますね。
日本では動物園でこの幻の動物ユキヒョウの姿を見ることが出来るので幸せなのかも知れません。
絶滅の危機に瀕しているだけに、一日も早くユキヒョウの生息数が回復しレッドリストから外れることを祈るばかりです。