コヨーテをご存知でしょうか?
日本人にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、オオカミの近種にあたり非常に良く似ています。
少し小さなオオカミという感じかも知れませんね。
しかし実際には危険な肉食獣で生息地であるアメリカでは飼育されている家畜が狩りの対象となる被害や人間が襲われる被害も起こっているようです。
その結果、害獣として駆除すべきか否かという議論もされているようですね。
今回はそんなコヨーテに関して、生体や性格、はたまたペットとして飼育できるのか?など詳しく説明してまいります。
目次
コヨーテ
「コヨーテ データ」
- 分 類 ネコ目(食肉目) イヌ科 イヌ属 コヨーテ
- 学 名 Canis latrans
- 英 名 Coyote 、Prairie Wolf
- 和 名 コヨーテ
- 体 長 75から103センチメートル程度
- 尾 長 30から40センチメートル程度
- 体 重 8から20キログラム程度
- 分布域 北アメリカの大部分から中央アメリカのパナマ西部辺り
- 生息環境 平原地帯など
- 寿 命 野生10年程度 飼育下15年程度(21年を超えたものもある)
- 食 性 肉食(雑食)
コヨーテの特徴
コヨーテはネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に分類され、オオカミの近種となり容姿も非常によく似ていて一回り小さな小型のオオカミと言った感じですね。草原オオカミと称されることもあるようです。
体長は75から103センチメートル程度、尾長は30から40センチメートル程度、体重は8から20キログラム程度になります。
後述するようにコヨーテの分布は広範囲に広がりますが、ベルクマンの法則に則り北に生息する種ほど大きくなりますね。
体色はたいていの種で淡い褐色ですが、灰色が強く混じるものや黄色がかるもの、黒ぽいものなど様々な変化が見られます。脚は黄色がかり、尻尾や背中は灰色、腹部は白っぽくなっています。
体毛は下毛が多く、尻尾も太くふさふさな毛に覆われていて先端が黒くなります。また北に生息する種はより毛量が多くなる傾向があります。
鋭い視覚と嗅覚にくわえ非常に高い身体能力と適応性を有するのも特徴的です。
コヨーテの性格
コヨーテは小柄なので犬好きの方には愛らしく感じられるかもしれませんが、実際には凶暴な肉食動物ですので安易に近づくのは危険です。
また、非常に賢く適応性が高い反面、凶暴で残酷な一面も持ち合わせています。
適応性の高さから、人間の生活圏内でも順応してしまい、ペットや家畜更には人間への被害も報告されています。
日本では街中でコヨーテと遭遇することは無いですが、アメリカなどに行った際、もしコヨーテと出くわしても走って逃げたりはしないで、視線はあわせたままゆっくりと後ずさりをして安全圏へと脱出しましょう。
勿論餌付けなどは厳禁ですよ!人に慣れてしまうのが一番危険なんです。
分布および生息域
コヨーテは北アメリカ大陸からパナマの一部辺りまでに広く分布しています。オオカミがその数を減らしていく一方でコヨーテはその分布域を広げつつあるようです。
主には、森林や草原などで生活をしていますが、湿地や砂丘など様々な環境に適用することが出来、人間の暮らす郊外の農耕地やロサンゼルスなど都市周辺までも生活の場とすることもあります。
コヨーテの生態
コヨーテは単独やつがい、家族などの小規模グループでの生活がほとんどで大きな群れを作ることは稀のようですね。
一夫一妻制で冬に繁殖し春に子供が生まれます。子育ては夫婦で行いますが、先に生まれた子供も子育てを手伝うこともあります。出産は2から12匹と生まれる頭数の幅が広いのですが、たいてい数匹稀に20匹近くの大量出産というケースもあるようです。
子供の成長は速く、生まれたばかりの時には250グラム程度ですが、2週間で目が開き3週間ほどで巣穴から出て6週間程度で離乳、生まれた年の秋には1頭で狩りが出来るほどに育ちます。
性成熟は1年程度ですが、縄張りを所有しオスとペアを組むには更に1年程度必要であるため、実際には2年くらいで繁殖となるようです。
行動範囲は雄で20から40平方キロメートル、雌で10平方キロメートル程度と言われていますが、生息環境(獲物)によって変わるようですね。その縄張りの主張はイヌ同様に尿で行います。
行動は基本的には夜行性ですが昼間も活動をし狩りなどを行うこともあります。
食性は基本肉食性(雑食でもある)で、ネズミやウサギなどの小動物や鳥、爬虫類、魚に死肉などを主に捕食していますが、前述のように環境適応能力に優れているので、オオカミなどがいない地域では、群れを作り大きな獲物の狩りをすることもあるようです。
また、時には人間の暮らす地域にも出没して、残飯や果物、更には鶏やヤギ、ヒツジなどの家畜を襲い食することもあるようです。
狩りは通常単独で行いますが、コヨーテはイヌ科の中でも非常に賢く、集団でリレーのように役割を分担して追走するなど非常にクレバーな面もあります。
また身体能力も高く、時速65キロで走るうえ、4メートル程度は簡単に超せる跳躍力も持ち合わせています。
コヨーテの習性として遠吠えも忘れてはいけません。
オオカミ同様にコヨーテもよく遠吠えをします。学名も「やかましく吼えるもの」という意味で、夕暮れと明け方に数頭が集まりコーラスのように響き渡ります。この遠吠えは同族間の情報伝達手段とも考えられていてこのことからも高い知性が伺えますね。
寿命は野生で10年程度、飼育下では15年程度ですが、飼育下では21年を超えるものあるようです。
コヨーテと競合する肉食動物のピューマやオオカミは近年生息数を減らしていますが、それに反してコヨーテは生息数と生息域を広げているようです。
これは雑食性として生きられる他、対応力の高さと子供の生存率の高さから来るようです。
コヨーテの天敵
このようなコヨーテに天敵となる動物は存在するのでしょうか?
まずは、競合生存しているピューマやオオカミがあげられます。体格の差はなんとも補えず、襲われてしまうと分が悪いようです。
その他にもイヌワシなどの大型猛禽類には襲われてしまうことがあるようですね。
ただし、後述しますがオオカミとは特殊な共生も見られることがあるようです。
オオカミとの違い
以前ハイイロオオカミはコヨーテとは同類として分類されたこともある程に、非常に似ています。
しかし、体長はオオカミが一回り大きいこと色の濃さもオオカミの方が濃いという特徴もあり、今では近種ではありますが別種として区分されています。
顔つきもコヨーテの方が身体に比べて耳が大きく鼻面も細長く狐のような感じがありますね。
生息域も異なり以前コヨーテは、オオカミに比べて暖かい地に暮らしていました。これが体格の違い(オオカミの方が大きくがっしりしている)に繋がったと見る学者もいます。しかし、環境適応能力に長けたコヨーテは次第にオオカミの生息地へと進出しこのことが森林伐採と共にハイイロオオカミを絶滅状態に追い込んでいる原因ともされています。
また、動作にも違いがあり、歩く際にオオカミは尻尾を水平気味にして歩きますが、コヨーテは尻尾を垂らして歩きます。
オオカミとの共存
本質的には、オオカミはコヨーテにとっては天敵となる存在で、オオカミからすれば格下となる存在でした。
しかし、最近ではこのオオカミとコヨーテの交配が見られているのです。しかもこれはオオカミの方から仕掛けたようで、通常であればより優秀な子孫を残すためにより優れた交配相手を選ぶのでそれは謎だったのです。
しかし、その理由が明かされました。
オオカミの生息環境が森林伐採などで失われ、個体数が激減したことにあったのです。これによりオオカミよりも環境適応能力に長けたコヨーテを交配相手と選び子孫を残す道を選んだようです。
このオオカミとコヨーテの交配種は「コイウルフ」と呼ばれています。
人間の手により誕生した交配種(ハイブリットアニマル)は多数存在しますが、野生下で誕生しそのまま子孫を増やしていけることが立証されているのは極めて珍しいようですね。
その他の交配
前述のようにオオカミとコヨーテの交配種の誕生がある一方、コヨーテはイヌとの間にも交配種を作ることが可能で「コイドッグ」と呼ばれています。
一見軟弱化するように思われがちですが、コヨーテよりも凶暴ともされこのコイドッグによる家畜被害も問題視されているのです。
コヨーテはペットとして飼育出来るのか?
イヌ科であるコヨーテは一見するとイヌのようにペットとして飼育することも出来そうですが、ペットとして飼育するには凶暴で攻撃的な側面からも危険ですので向いてはいません。
本来は警戒心が強く臆病な一面を持つコヨーテですが、今では人間に慣れてしまい、襲われる被害もあるようです。
また、遠吠えがうるさいのもペットには向かない理由ですね。
コヨーテはアメリカ先住民においては神の使いと崇められる存在で頭の良い動物とされて来ましたが、それでもやはり飼育には向かない生き物となります。
コイドッグを飼う人もいる
しかし前述したイヌとコヨーテの交配種「コイドッグ」をペットとして可愛がっている人もいるようです。
オオカミのような精悍な顔立ちで中型犬から大型犬サイズとオオカミを飼育したかった人にはたまらないようですね。
凶暴な反面忠実さも持ち合わせているので人間のパートナーとなることも多いようです。
コヨーテは害獣?その保護と駆除
コヨーテは、その生息地が人間と接したり重複する場合には、牧場や民家に侵入し家畜やペットを襲ったり、人間も被害にあうなど問題視されています。
有名なところでは2009年にカナダで起きた著名な女性シンガーがコヨーテに襲われ死亡する事件も起きています。
これらからコヨーテを害獣扱いする動きがあります。
酪農関係者の間ではコヨーテから家畜被害を減らすべきと主張され、実際に1891年に50万頭にものぼるコヨーテが駆除されました。
保護の観点から見るコヨーテ
しかし環境保護を論じる有識者からは、これには否定的で自然界のバランスを保つうえでコヨーテの存在は必要不可欠と信じているようです。
また、狩猟をする側からの意見ではコヨーテによって狩猟種が減少していると訴えれば、生物学者からは家畜を襲う野生動物は駆除すべきだが、ネズミやウサギを主な捕食相手とするコヨーテは有害ではないその繁殖も生態系は崩さないと主張があり混沌としてしまったのです。
最近になってコヨーテはカリフォルニアでは非狩猟動物に分類され狩猟許可制度で管理されるようになりました。
この論争は暫くの間はおさまることは無いようです。
まとめ
今回コヨーテについて色々とご紹介してまいりました。
オオカミに比べると非常にマイナーであまり知られていないことも多いようですね。
実際に現地アメリカでもオオカミとコヨーテの扱いには運例の差があるようですよ。
しかし、そんなコヨーテですが、賢く身体能力も素晴らしいうえに環境適応能力にも長けていると、万能選手なんですね。
今度動物園で見る機会があれば、少しは同情と尊敬の目で見たいと思います。