今回ご紹介するのは「ミノカサゴ」になります。
多くの種類を持つミノカサゴですが、その泳ぐ姿は非常に美しく華麗な印象を持たれます。
その為飼育をする愛好家も多く存在しています。
しかし、その華麗な容姿とは裏腹に非常に強力な毒性を持つ危険な魚なのです。
今回は、そんなミノカサゴについて、生態からその種類の一覧、毒性の強さ、はたまた天敵はいるのか?など詳しくご紹介してまいります。
目次
ミノカサゴ
「ミノカサゴ基本 データ」
- 分 類 カサゴ目・カサゴ亜目・フサカサゴ科・ミノカサゴ亜科
- 学 名 Pterois lunulata
- 和 名 ミノカサゴ (蓑笠子)
- 英 名 Luna lionfish
- 体 長 30センチメートル程度
- 分布域 日本(北海道南部以南)や朝鮮半島、太平洋、インド洋
- 生息環境 沿岸の岩礁域など
ミノカサゴの特徴
ミノカサゴは「カサゴ目フサカサゴ科ミノカサゴ属」に属ずる魚です。
大きな胸鰭に腹鰭、背鰭が特徴的な魚で非常に美しい様子をしています。
世界的に5種17種、日本には5属12種が分布しております。
最も大きなミノカサゴやハナミノカサゴで20から30センチメートル程度、シマヒメヤマノカミで10センチメートル程度と種類によって様々異なります。
大きな鰭がライオンの鬣のような印象を与えることから、英語名では「Lionfish」と呼ばれています。
和名のミノカサゴ「蓑笠子」で、この鰭の様子を蓑や菅笠として表現したものになります。
背鰭(13の背鰭棘)を中心に胸鰭・腹鰭に強力な毒棘を持っていて刺されると激痛に襲われます。
ミノカサゴには、この痛み(毒)の様子をあらわした地方名が存在します。
- 広島県 「ナヌカバシリ(七日走り)」激痛により7日間走り回る
- 山口県 「キヨモリ」平清盛のように、派手な衣装の下に武器を隠している
- 三重県 「マテ(シバシ)」うっかり触らないようにしばらく待て
その他の地方名には、キミオコゼ(高知)、ハナオコゼ(和歌山)、ヤマノカミオコゼ(愛媛)、ミノオコゼ(鹿児島)、ヤマノカミ(九州)などがあります。
体色は 肌色で赤味がかったものもあります。目や口の周りには特徴的な皮弁があり体表には褐色や黒などの様々な太さの横縞が入ります。
また鰭には黒っぽい斑点が並んでいます。(目立たない鰭もあり)
非常に美しい見た目から、水族館で見ることが多いですね。
特徴的な動作としては、胸鰭を広げて小魚を追い込むことや、小魚を丸呑みにするなどが見られています。
ミノカサゴの生態
ミノカサゴは、北海道南部以南の日本や朝鮮半島、太平洋やインド洋などの沿岸岩礁域に棲息をしています。
綺麗ないでたちは、周辺環境との保護色兼警告色ともされています。
食性は、小魚や甲殻類・貝類などの肉食性です。
また活動は夜行性で昼間は岩陰などに潜み夜になると活動的になります。
生活は群れなどは作らずに単独で行われます。
普段は海底付近を胸鰭を広げた状態でゆっくりと優雅に泳いでいますが、いざとなると胸鰭を畳み想像以上のスピードで動きます。
また、優雅な見た目からとは裏腹に攻撃的な性格をしていて、ダイバーなどを追い回す姿も目撃されています。
尚、ミノカサゴの寿命は10年程度とされています。
ミノカサゴ亜科の種類一覧
ミノカサゴの種類として「カサゴ目・カサゴ亜目・フサカサゴ科・ミノカサゴ亜科」を見てみますと世界には5属17種が存在します。
【ノコギリカサゴ属 Brachypterois】
この属には「ノコギリカサゴ B. serrulata」1種が存在します。
【セトミノカサゴ属 Parapterois】
この属には「セトミノカサゴ P. heterura」1種が存在します。
【エボシカサゴ属 Ebosia】
この属には「エボシカサゴ E. bleekeri」他1種、計2種が存在します。
【ヒメヤマノカミ属 Dendrochirus】
この属には
「ヒメヤマノカミ D. bellus」
「シマヒメヤマノカミ D. brachypterus」
「キリンミノ D. zebra」
「ヒレボシミノカサゴ D. biocellatus」
他1種、計5種が存在します。
【ミノカサゴ属 Pterois】
この属には
「ミノカサゴ P. lunulata」
「ハナミノカサゴ P. volitans」
「ネッタイミノカサゴ P. antennata」
「キミオコゼ P. radiata」
他4種、計8種が存在します。
ミノカサゴの毒性
前述もしておりますが、ミノカサゴは美しい背鰭と胸鰭、尾鰭に毒棘を持っています。
実は普段は皮膚に覆われているので一目見ただけではわからないのですが、外敵がここに触れると棘があらわになり毒が注入される仕組みになっているのです。
その毒性はタンパク質毒になります。
刺された場合の症状
この毒性は非常に強力で、刺されると強烈な痛みに襲われます。しかもこの痛みは長時間続くので非常に厄介なのです。
刺されてしまった患部は腫れあがり、嘔吐に頭痛、眩暈、失神などといった症状が起こる場合もあります。
今のところミノカサゴの毒により死亡事例の報告はありませんが、水中で刺された場合には、動けなくなり溺れてしまうことも想定されています。
ダイビング中には特に気を付ける必要がありますね。
刺された場合の対処法
もしミノカサゴに刺されてしまった場合には、水中であれば速やかに陸地や船上へ避難してください。
患部を綺麗な流水で洗浄して毒を絞り出してください。
刺された患部に棘が刺さっている場合には、ピンセットなどを使って丁寧に取り除きましょう。
続いて火傷しない程度のお湯(40度から50度)に患部を30分程度つけましょう。
タンパク質の毒性の為、熱に弱く緩和することができるようです。
こちらが、一応の応急処置になりますが、海などの場合にはお湯なども用意出来ないと思います。
その場合には、迷わずに救急車を呼んでください。
この際に「症状が軽いから大丈夫。」などの自己判断は危険です。
たとえ応急処置で軽減されても違和感がある場合には必ず受診することをおすすめいたします。
ミノカサゴによりサンゴ礁が崩壊寸前!天敵はいるのか?
現在アメリカなどではミノカサゴが異常に繁殖してしまい、サンゴ礁を守る魚を食べるなどしてサンゴ周辺の環境が崩壊するのではないかと危惧されています。
これはミノカサゴの繁殖力が非常に強力なことと天敵となる生物の存在が少ないことに起因しているようです。
ミノカサゴの天敵は?
事実上天敵とされる生物は特定付けされていませんが、サメやハタ・クエなどがミノカサゴを捕食する姿を目撃されています。
事例は少ないですが、これらは天敵となり得るようですね。
駆除するために人間が天敵となる?
前述のサンゴ礁の崩壊がこれ以上深刻化しないために、人間の手による駆除が開始されています。
方法はサメを使って駆除するものと、ロボットを使って駆除するものです。
こうなってくると、ミノカサゴにとっては我々人間も天敵となり得るのかもしれません。
ミノカサゴの飼育はできるのか?
ミノカサゴはその美しい容姿と毒を持つという特徴的な魚であることから飼育する愛好家も多数存在しております。
飼育レベルは中程度でそこまで難しい飼育ではないようですね。
しかし、肉食魚なので水質の管理などのケアは必要ですし、この際に毒棘に刺されないように充分注意する必要がありますので、飼育初心者にはおすすめしかねます。
価格的には2000円から3000円程度で購入することが出来ます。
ミノカサゴは意外と美味!
ミノカサゴは、その毒性と専門の漁をしていないので数が揃いにくく市場に出回ることがあまりありません。
しかし、ミノカサゴを食用として食べることも可能で、その白身肉は意外と美味しいようです。
調理方法は、「塩焼き」「みそ汁、潮汁、ちりなどの汁物」「煮つけ」「ソテー」「揚げ物」などとして調理されることが多いようですね。
まとめ
今回は、非常に美しくもありかつ危険でもある魚「ミノカサゴ」について色々とご紹介をしてまいりました。
あまりの美しさについつい手を差し出してしまいそうですが、非常に強力な毒を持つ危険な魚なのですね。
「綺麗な花には棘がある」のシャレでは済まない海における具現化かも知れません。
危険とは知りつつも、美しさから飼育をする方も多いようですし、意外に食してみると美味なのだとか。
スキューバダイビングなどをする方は、海で華麗な姿を見ることが出来るかも知れません。
しかし非常に危険ですので、決して安易に近づいたりはしないでください。
もしかすると水族館で安全に見るのが正しいミノカサゴとの付き合い方かもしれませんね。