「人をも襲う恐怖のワニと言えば?」こう聞かれれば、代表的な2種のワニがあげられます。
一方がイリエワニで、もう一方が今回ご紹介するナイルワニになります。この2種はワニの中でも非常に有名ですね。
双方ともに5メートルにもおよぶ大型のワニで非常に凶暴性も高いことなど共通点もたくさんありますが、この2種の違いはご存知でしょうか?
また現存する動物の中で噛む力が最大級に強いのはライオンなどの肉食獣ではなく、このワニの仲間になります。中でもナイルワニは特に優れているようですね。
このナイルワニに噛みつかれて水の中に引きずり込まれたら…考えただけでもぞっとしてしまいますが、実はこれ実際に起こっている悲劇なんです。
今回はそんなナイルワニについて「天敵はいるのか?」「生態や特徴は?」「その寿命は?」など詳細に説明して参ります。
ナイルワニ
「ナイルワニデータ」
- 分 類 爬虫綱 ワニ目 クロコダイル科 クロコダイル属
- 学 名 Crocodylus niloticus Laurenti
- 英 名 Nile crocodile
- 和 名 ナイルワニ
- 体 長 4から6メートル程度(7メートルを超すものもいるという説があります)
- 体 重 200から500キログラム 程度(700キロちかいものもいるという説があります)
- 分布域 アフリカ大陸(一部除く)、マダガスカル西部
- 寿 命 野生下推定50年
- 食 性 肉食
- 繁 殖 卵生
ナイルワニの特徴
ナイルワニは、全長が4メートルから6メートル体重が200キロから500キロとイリエワニと並び、現存するワニの中では最大種であります。記録としては存在しておりませんが、7メートル700キロにもおよぶものもあると言われています、
基本的には河川や湖、沼などの淡水において生息していますが、海岸や汽水域でもその姿を見ることがあります。また保護区内では日光浴をしている姿を観察出来るようですね。
ケニアでは、餌付けされたワニをカウンターから眺められるバーもあるようです。
口は非常に長く先端にいくほどにシャープな形状で細長い二等辺三角形をしています。口を閉じていても鋭い歯は吐出していて確認できます。トカゲなど陸上で生活する爬虫類には乾燥から歯を守るために唇がありますが、水中で暮らすワニにはそれが必要無いのですね。
体色は濃い黄褐色、深緑と表現されることも多いです。若い個体には、身体の側面と尻尾に斑紋がありますが、成長と共に目立たなくなり消えていくようです。
一時期(1940年から1960年)は絶滅の危機に瀕していましたが、献身的な保護活動により回復に成功した地域が多いですが、一部地域では今なお生息環境の破壊や汚染に狩猟などで激減するところもあるようです。
ナイルワニの生態
ナイルワニはアフリカ(北西部など一部を除く)とマダガスカルに分布していて、別名をアフリカワニと言います。
基本的には、河川や湖に沼などの淡水域で生息をしていますが、成体になると海岸や汽水域でも見かけるようになります。
通常は群れで生活をします。夜行性で昼間は岸辺で日光浴などをしゴロゴロしている姿を見かけますが、夜になると活発になり積極的に狩りを行います。
狩りの方法は、水中にて水辺に水を飲みに来る獲物を待ち伏せして襲う場合もあれば、岸辺の魚や水鳥に水鳥の巣などを積極的に襲いに行く場合もあります。
食性は肉食で、獲物となるのは大型の哺乳類であるシマウマやカモシカなどから水鳥に魚と同種のワニに腐肉に至るまで目の前にあるものは何でも襲って食します。若い子供のうちは、カエルや昆虫、甲殻類などが主な餌となるようです。
その食する量も多いのが特徴的で一度の食事で自分の体重の半分程度の量を食べるといいます。
また上述のように目の前のものは何でも食するように、気性が荒く人間がその犠牲になることも多々あります。
この際獲物が大型の哺乳類などの場合には、強力な顎で噛みついて水中へ引きずり込み溺死させ肉を引きちぎって食します。
繁殖は、卵を産み行いますがここに珍しい性質があります。通常爬虫類は、産卵し終わるとその後一切の関与をしないのですが、この恐ろしいワニは優しく孵化を見守り時には手助けをするのです。
雌は岸辺に石や砂、枝や草などで巣を作りそこで産卵します。一回の産卵で20個程度の卵を産み、90日程度で孵化を迎えます。この間親ワニは傍らで見守り続け、孵化を促し孵化すると子供を安全な水中へと口を使って運ぶのです。
卵から子供時代の一定期間は、親ワニの保護を受けて育つのですね。しかしそれでも、この間に卵や子供が外敵に襲われるということはあるようです。
驚異的なナイルワニの噛む力
現存する生物の中で、噛む力がもっとも強いのがワニになります。その中でもこのナイルワニのそれは桁外れに強く普通の大きさのナイルワニでも1000キロ、 大型になると1500から2000キロとも言われライオンの2倍以上にもなります。
ただ、身体(歯)の構造上歯を使って獲物を引きちぎるという行為が出来ません。獲物をくわえた状態で水中に引き込むと、「デスロール」と呼ばれる身体を高速で回転させて肉を引きちぎります。
また、噛む力が凄い反面口を開ける力は非常に弱く人間が手で押さえても開けられなくなります。口を開けるということに無駄なエネルギーを使わず、噛むということに特化して進化した結果と考えられています。
イリエワニとの違い
恐ろしいナイルワニのお話しをするにあたって、避けて通れないのがもう一方の雄「イリエワニ」ですね。
イリエワニはアジア大陸からオーストラリア、カロリン諸島と幅広い範囲に分布をしています。これはイリエワニが海水への耐性が強く、あまり移動をしないナイルワニと違って海流に乗って移動することにあります。
オーストラリアへは近年アジアから流れ着いたと目されています。また日本でも奄美大島や西表島、八丈島などでも発見例があるようですね。
大きさは平均するとイリエワニの方がやや大きく、顔もしゅっとシャープなナイルワニに比べて大きくごつごつした感じがします。噛む力も若干イリエワニの方が強いかも知れませんがいずれにしてもナイルワニ、イリエワニともに恐ろしい危険なワニであることに変わりはありませんね。
またナイルワニには後述するギュスターブの存在がありその恐ろしさに拍車をかけることになります。
ナイルワニの天敵
このようなナイルワニに天敵となる動物はいるのでしょうか?
実は大型のナイルワニにも敵わない相手がいるようです。まずは圧倒的体格差のあるカバですね、縄張り意識の強いカバに殺されることもあるようです。ただカバは捕食目的ではないので正確に天敵と言えるかは問題もありますが…。
また、水中では非常に強力なナイルワニも陸に上がってしまうと、ライオンなどの大型肉食獣に捕食されることもあるようですね。
成獣となれば、あまり天敵となるものも少なくなるナイルワニですが、卵や子供の時にはナイルオオトカゲやヘビにも襲われているようです。
ナイルワニと人間
前項でナイルワニの天敵をご紹介しましたが、これには狩猟などや生息地を破壊する人間も加わるかも知れませんね。
しかし、そんなナイルワニと人間には古来より深い関わりがあるようなんです。ナイルワニの名前の由来であるライン河が流れる古代エジプトにおいては、神またはその使いとして崇められ、神殿における装飾を施した個体の飼育やミイラも作られていたようです。
しかし、そんな古来の関わりも今となっては食うか食われるかの関係に変わってしまいました。ナイルワニの天敵でもある人間ですが、反対にその餌食となってしまうことも多々あります。
これは不思議な現象ですが地域によって、人を襲う事故の数が全く異なるようです。良好な関係を築いているところでは、観光資源ともなっていますね。
ナイルワニによる人への被害
一方、ナイルワニによる被害が多い現地では、生息地の殆どで人間と生息域が近い為この事故が頻発するようです。
川で遊んだり洗濯をしたり、家畜に水を飲ませたりする際に襲われる被害が起きていて、現地では非常に恐れられています。その被害数は年間200人とも推測されているから驚いてしまいますね。
ギュスターブ
前述でも少し触れましたが、ナイルワニの中でブルンジ(タンガニーカ湖およびルジジ川)に生息するものでギュスターヴと呼ばれる非常に巨大で獰猛なナイルワニがいます。
50年と言われるナイルワニですが、ギュスターヴは推定100歳と目され大きさもすも7メートルを超すものもいるとされるから驚きですね。
このギュスターヴによる被害は300人を超すとも言われています。強靭な鱗に守られ銃弾も効き目がないということです。
一時は目撃情報が途絶え、絶滅したかと考えられましたが2015年にその生存が確認されています。
まとめ
今回、非常に獰猛なナイルワニについてご紹介してまいりました。
動物園などで見かけはしますがあまり身近に感じていませんでした。しかし、こうして改めて確認すると非常に恐ろしいですよね。
気性が荒く巨大な怪獣が存在しているとなると、現地の方のその恐怖も手に取るように伝わって来ます。
しかし、そんなナイルワニも一時は絶滅の危機に瀕していたようで、手厚い保護で今の状況に回復できたと聞くとまた考えさせられるものもあります。
絶妙なバランスで共存が出来ることを切に願うしかありませんね。