今回ご紹介するのは、ダイバーの間ではサメよりも恐れられることもある「ゴマモンガラ」という魚になります。
実際にうっかりとテリトリー内に侵入してしまい、このゴマモンガラの被害に遭われたダイバーさんも多くいるようです。
今回はそんなゴマモンガラの危険性や被害事例にくわえ、仮に襲われてしまった時の対処法などをご紹介したいと思います。
ゴマモンガラ
「ゴマモンガラ基本データー」
- 分 類 フグ目 モンガラカワハギ科
- 学 名 Balistoides viridescens
- 和 名 ゴマモンガラ(胡麻紋殻)
- 英 名 Titan triggerfish
- 体 長 75センチメートル程度
- 分布域 インド洋や大西洋、日本では神奈川以南
- 生息環境 熱帯海域のサンゴ礁など
ゴマモンガラの特徴
ゴマモンガラは、体長が75センチメートル程度にまで成長し、カワハギの仲間としては最大種となります。
英名である「Titan triggerfish」は、その大きさからギリシャ神話のタイタンに由来して名付けられたものです。
また、特徴的なのが非常に凶暴な性格をしていてテリトリー内に侵入してしまうと自分よりも大きなものにも攻撃を仕掛けてくるという危険性があります。
和名からも想像がつきますが、幼魚の時には体中にゴマのような黒い斑点があります。
しかしこれは成魚になるにつれ薄くなり目立たなくなります。その代わりに鰭が黒く縁どられるのが特徴的です。
全体的には鮮やかな体色を持ち、口の上部には髭のように黒い線が入り、尾の付け根部分が白くなります。
目は大きく、飛び出していて口には非常に強靭な歯を持ちます。
見た目では非常に厳つい感じがしますね。
日本では沖縄の海に潜るとたいてい見ることができますが、現地沖縄では「アカジキラナー」「カーハジャー」「ユターフクルバー」などと呼ばれています。
カワハギの仲間ではありますが、厳密には「モンガラカワハギ科」となるので種としては別種になりますね。
因みにカワハギは白身ですが、モンガラカワハギは赤身の魚になります。
ゴマモンガラの生態
ゴマモンガラは、熱帯海域の沿岸のサンゴ礁に生息しています。
食性は雑食性で、前述の頑丈な歯を使って甲殻類や貝類、ウニ、そしてサンゴなど硬いものもバリバリと噛み砕いて食べてしまいます。
繁殖は卵生で、春から夏の温かい時期にかけてすり鉢状の巣を造って卵を産みつけます。
この卵を守る時にゴマモンガラは特に攻撃的になります
特にこの時期の凶暴性は尋常ではなく、自分よりも大きな相手にも卵を守るために積極的に襲い掛かります。
この時にうっかりとテリトリー内に侵入してしまい、ゴマモンガラに襲われて怪我をするダイバーが非常に多いようです。
ただ、ゴマモンガラは基本的に温かい海で生まれ育ち、温かい海で産卵を行います。
卵を産む温度ラインは水温28度以上になります。
これにより水温が28度に満たない場合には、産卵は行われず大人しい傾向にあるようです。
反対にこのラインを上回るつまり28度を超すような温度の時には産卵体制になるため、比較的凶暴となるようです。
沖縄の海など、ゴマモンガラが生息する海へ潜る場合には、季節と海水温のチェックはしておくと良いかもしれません。
ゴマモンガラの危険性
ゴマモンガラは、前述のように非常に攻撃的な性格をしています。
特に産卵後に巣を守ろうとする防衛本能は非常に強いので、巣に近付くものには積極的に攻撃を仕掛けてきます。
この時期のゴマモンガラは、ダイバーの間ではサメよりも危険と恐れられるほどになるのです。
しかし、産卵時期以外であっても縄張り(テリトリー)への侵入者へはとことん攻撃を仕掛けることもあるようですので、気を付けなければなりません。
うっかりテリトリー内に侵入しようものなら、貝やサンゴを噛み砕く強靭な顎と歯で襲ってくるのですから、その危険性は想像がつきますよね。
ダイバーが襲われる
ゴマモンガラの巣は、砂地にすり鉢状に作られます。
よほどのベテランダイバーでない限り、巣を発見することが難しくいつの間にか巣のテリトリー内にうっかり侵入してしまうことがあるようです。
この産卵場所となる巣を基準にドーム状にテリトリーを持ち、その範囲は横よりも縦に長くなります。
このテリトリーは産卵前が半径15メートル、産卵後は3メートル程度に狭まるのです。
この為、産卵前は産卵後に比べて攻撃性は大人しいのですが、テリトリー範囲が広いので襲われる確率が逆に多くなってしまうこともあるようですね。
ダイバーの間では、産卵前の方が危険と感じる方が多く存在するのも事実です。
テリトリー内に侵入し見つかったら最後、徹底的に襲い掛かってきます。
ちなみにこの時期巣にへばりつき守っているのがオスになるので、基本的に人に対して攻撃を仕掛けてくるのはメスの方になります。
ゴマモンガラによる被害事例
実際にゴマモンガラによる被害として過去には次のような報告が多数されています。
- 餌付け中ゴマモンガラに噛まれ指を失ってしまった
- ウェットスーツ、フィンが噛みちぎられた
- 腕を噛まれてしまい出血が長時間止まらなかった
- 体当たりをされてあざになった、マスクが割れた、カメラレンズが割れた
など
人的被害の治療としては手術や傷口を縫うなど、冗談では済まない場合が多いので本当に気を付けなくてはなりません。
ゴマモンガラに襲われた場合の対処法
もしもゴマモンガラのテリトリー内に侵入してしまったら即座にテリトリーから退出しましょう。
テリトリーの有無以前に見かけたら「撤退」が鉄則ですね。
もしも襲われてしまった場合には、逃げるのは上ではなく横です。テリトリーは上に縦長ですので横に向かって一直線に脱げてください。
テリトリーの外に出るとすんなりと攻撃がやむことがあります。
とにかく、追いかけられたら横方向へ逃げるというのが基本になります。
もしもゴマモンガラに嚙まれてしまった場合には、すぐさま水道水で傷口を洗い流して消毒を行ってください。
止血処理で、おさまれば場良いのですが、治らなかったり傷が酷い場合にはすぐさま医療機関で受診をしてください。
ゴマモンガラの天敵は?
勿論ゴマモンガラにも天敵となる生き物が存在します。
小さい時には様々な魚にも襲われますが、成魚となった場合にもサメやヤイトハタにウツボなどの大型の肉食魚には捕食されてしまうことがあるようです。
まとめ
今回は、ゴマモンガラについて色々とご紹介をいたしました。
鮮やかな体色で美しい魚ではありますが、非常に攻撃的で恐ろしい魚でもあるのです。
日本でも、美しい沖縄の海には鮮やかで美しい魚がたくさん泳いでいます。しかし、その中にはこのゴマモンガラも含まれているのですね。
決して興味本位で近付いてはいけない魚、ゴマモンガラがいることは肝に銘じておきましょう。
もし仮に出会ってしまったら、速やかに横移動でテリトリーの外に逃げることですね。