人類史上、ヒトを最も多く殺した生物とは何でしょうか。
サメ?ライオン?ホッキョクグマ?ゾウ?
実は答えは蚊でなのです。
中でもハマダラカという蚊は年間でも数百万単位のヒトの命を奪い続けています。
そんなハマダラカのもたらす感染症とは何なのか。
人類史に残る危険生物についてご紹介していきます。
目次
ハマダラカの生態
出典画像:Wikipedia
- 学名:Anopheles
- 分類:ハエ目カ科ハマダラカ属
- 分布:アフリカ中部以南
- 体長:5.5mm
ハマダラカはカ科のハマダラカ属に含まれる460種の総称です。
そしてそのうちの100種類のハマダラカが「人類にとっての脅威」として警戒されている種になります。
なぜ、体長5mmほどの蚊に対して人類が警戒しなければならないのか。
それは、ハマダラカの体内には、「熱帯性マラリア原虫」が寄生しているからです。
ハマダラカが吸血する時、ヒトの体内に麻酔成分のある唾液を注入します。
その唾液に混じってマラリア原虫がヒトの体内に侵入し、注入されたヒトは熱帯性マラリアを発病します。
発病者は世界各地で確認されており、その大部分がハマダラカによる吸血が原因と考えられています。
ハマダラカの特徴と見分け方
私たちの身の回りでもか蚊は飛んでいますし、ある意味で夏の風物詩にもなっています。
近年の日本では温暖化やヒートアイランド現象が問題視されており、ハマダラカが今後入ってくることは十分考えられます。
ここでハマダラカの見た目や見分け方を整理しておきましょう。
ハマダラカの外見上の特徴は羽に白と黒のまだら模様があることです。
また、吸血するために対象に留まった時の姿勢が特徴的で、一般的な蚊は着地して体は表面に対して水平になっていますが、ハマダラカは留まるとお尻を上げて頭が下を向きます。
蚊に刺されないことが一番ですが、留まった姿勢が逆立ちしている様な姿勢だった場合は要注意です。
ハマダラカに刺されたら痒いじゃ済まない!?
蚊に刺されたら刺し傷が赤く腫れて痒くなってしまいますが、ハマダラカの場合はそれで終わりません。
ハマダラカは「熱帯性マラリア」の媒介者として人類史上最も人間を殺した生物と言われています。
ハマダラカは史上最も人間を殺した生物~感染症の恐怖〜
ハマダラカによるマラリア感染症の猛威は、実はアフリカにとどまらず世界中で確認されています。
年間で約2億人がマラリアに感染すると言われており、そのうち2%の400万人が亡くなっています。
その被害はアフリカが一番深刻で、この年間2億人が感染し400万人が死亡するというデータのほとんどが、アフリカ中部以南の地域に集中しているのです。
その悲惨な状況は「30秒に1人の子どもが亡くなる」という言葉からもわかるように、1~4歳の子どもが一番犠牲になっているのです。
その比率を他の年代全体と比べても、1~4歳の子どもが犠牲となる割合は、他の年代の総数と比べても8倍も高いのです。
ハマダラカがもたらす「マラリア」の感染経路
「マラリア」が恐るべき感染症だということは広く知られていることではありますが、実際どのような段階を踏んで感染するのかまでを知らない方は多いと思います。
まず、マラリアを媒介するハマダラカに刺されるところから始まります。
ハマダラカに刺されることで唾液に乗ってマラリアの元凶である「熱帯性マラリア原虫」が人体に侵入します。
その後、マラリア原虫は体内で「メロゾイド」と呼ばれる赤血球を溶血させて破壊する物質に変異します。
このメロゾイドは赤血球に取り付くと、赤血球の中で増殖し、その後に赤血球は破裂させてしまいます。
そして、このメロゾイドを含んだ血液をハマダラカが吸血すると、メロゾイドはハマダラカの体内で「スポロゾイド」という他の個体に感染するための形態に変化します。
そして、このスポロイド状態のマラリア原虫を含んだ唾液が、ハマダラカから人体に入ると、また同様のサイクルが生じて、新たな感染者となるのです。
ハマダラカのもたらす「マラリア」の症状とは
ハマダラカの体内から人体に移動したマラリア原虫が体内でメロゾイドに変形し、赤血球が破壊されると、マラリアの初期症状の発熱と悪寒、貧血が起こります。
その後インフルエンザに似た症状が起こります。
この4〜5時間後に一旦熱も下がりますが、この発熱を含んだ諸症状が繰り返され、3度目の発熱を放置すると、マラリア原虫の減少と高熱などの諸症状の慢性化が起こります。
そしてこの一連のサイクルと並走する形でいろいろな合併症が起こります。
例えば脳へ感染範囲が広がり「脳マラリア」になったり、黒水熱や内臓への重大なダメージを与えたりします。
ハマダラカの生息地は?
ハマダラカの生息地はアフリカ中部以南ですが、実は日本の平清盛がマラリアにかかっていたことや、開拓時代の北海道でもマラリアが流行したこと、そして日本よりも緯度の高いカナダでも流行が確認されています。
いずれも一過性のものでしたが、ハマダラカは温暖化の影響や積荷に混ざってやってきて生存に適した季節に蔓延したりします。
アフリカのことだと楽観視せずに、日本にも入り込んでくる可能性があることを知っておきましょう。
ハマダラカのまとめ
アフリカを原産とするハマダラカは日本での正則は不可能と考えられています。
それは冬を越冬することができないためです。
ですが、夏場に短期的に流行というのも考えられます。
近年ではデング熱の病原体を持ったかが発見されるニュースがありました。
対岸の火事だと思わずに、しっかり虫除け対策をしていくところから始めていきましょう。