皆さんは「クズリ」と言う動物をご存知でしょうか?
よく、テレビなどで「最強の動物は何?」みたいな企画があると、必ず名前があがる種の一つがこのクズリなんです。
一見すると小さなクマのように見えるクズリはイタチの仲間で、人間にもよくなつくと言います。
日本では、あまりメジャーな種ではありませんが、海外ではとても人気が高いようです。
何と言っても、アメリカンコミックスのX-メンのキャラクターはこのクズリを模したものなんですから。
また非常に気性も荒く怖いもの知らず、ずば抜けた強さを持つとされるのも頷けますね。
一説には、動物園ではホッキョクグマをこのクズリが殺傷したという話もあるようですよ。
今回は、そんなクズリについて生態や強さ・危険性、そして気になる説の真相を追って見たいと思います。
クズリとは
クズリ基本データ
- 分 類 食肉目 イタチ科 クズリ属
- 学 名 Gulo gulo
- 和 名 クズリ
- 英 名 Glutton、Wolverine
- 体 長 65から100センチメートル程度
- 体 重 9から30キログラム程度
- 尾 長 15から26センチメートル程度
- 分布域 ユーラシア大陸及び北アメリカの亜寒から寒帯付近
クズリは分類からも分かるようにイタチの仲間です。しかしイタチ科の中ではかなり大型の部類で、一見するとクマに似た感じがしますね。
寒い地域に生息することから、尻尾も含め体毛は長くふさふさしています。
雄も雌も非常に体つきががっちりしていて、四肢も長く太いですし手足も大きいのが特徴です。
この大きな手足には大きく鋭い爪があり、強力な顎には長くて鋭い犬歯を持ちます。
性格も非常に攻撃的な一面を持ち、自分よりも数倍も大きな獲物を狩ることもあります。
また、大胆にもオオカミやクマなどから獲物を横取りすることでも知られています。
これらから、このクズリを最強の動物と推す声も聞かれるのです。
クズリの生態
クズリは、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極圏を含む北部に分布しています。
生息環境は針葉樹林やツンドラ地帯で、人間とは離れた環境下になります。
この広い分布域から「ユーラシアクズリ」と「アメリカクズリ」の2亜種に分類されることもあるようです。
クズリは冬眠をしませんので通年活動します。しかも昼夜を問わずなんですね。非常に逞しい様子が垣間見れます。
また、群れは作らずテリトリー内に単独で暮らし、主には地上での生活となりますが、木登りや泳ぎも非常に得意としているようです。
クズリの食性は雑食性で、小動物などを捕食することが多いですが、その一方で果実なども食するようです。
狩りにおいては、トナカイやヘラジカなど自分よりも何倍も大きな獲物を襲うこともありますが、その多くは冬で獲物が雪などで動きが鈍くなっているところを襲うとされています。
また、一説には木の上から飛び降りて急襲し、急所となる脊髄などに噛みつくことで大型の動物も倒すとされています。そう考えるとクズリは狩りや戦闘の名手と言えますね。
学名である「Gulo」は丸のみにすると言う意味で、狩った獲物や果物、または他の動物の食べ残しや死骸など貪欲になんでもガツガツと食べてしまいます。
繁殖期は春から夏にかけてで、一度の出産で2から3匹の子供を産みます。
生後3カ月で離乳、半年で狩りを覚え1年で成獣と同じ大きさに成長しますが、性成熟には2年ほど必要とします。
平均寿命は、野生下では6年程度です。しかし、飼育下では17年と言う記録もあるようです。
クズリは最強なの?
クズリを最強と推す専門家がいることは前述の通りです。
「どんな頑丈な罠からもクズリは逃げ切るし、他に獲物が罠にかかっていれば危険と分かっていてもクズリはそれを食べる。またクマやオオカミであろうと腹が減れば獲物を横取りするし、実際に自分よりも大きな獲物を狩ることも出来る。」このように地元では称されています。
確かに、非常に発達した爪と犬歯は大きな武器で、それをかざしオオカミやクマにも恐れずに立ち向かう姿が確認されています。
英語名の「ウルヴァリン」は、オオカミを狩る「Wolver」が変化したとされることからも、その気性の激しさが伺えます。
この「ウルヴァリン」と聞いてピンときた方もいるかも知れませんね。アメリカンコミックスのX-メンに登場する「ウルヴァリン」は、このクズリから来ているのです。
また、アメリカの訓練用航空母艦にも名前が付けられています。いずれも、強さの象徴として模したとされています。
日本では、あまり知られていないクズリですが、アメリカなどではこのとうに最強と称される種であるようです。
クズリの危険性
クズリは「小さな悪魔」とも呼ばれます。これは、怖いもの知らずで、どんなに大きな相手にも怯むことなく立ち向かっていくその姿勢から来ています。
通常、自然界では自分より大きな相手に挑むことは稀ですね。しかしクズリは、目の前に餌があればそんなリミッターは関係なくなってしまうのです。
例え相手が大きくても、数が多くても、果敢に立ち向かっていくのです。実際にオオカミやクマから獲物を強奪することもあるようですから。
そうなると、クマヤオオカミよりも強くて危険なのか?
これは一概にはそうとは言えないようです。あまりのしつこさに、相手が根負けして退散するケースがほとんどの様で、もしかしたらクズリもそのことを理解しているのかも知れません。
勿論、身体は小さいですが鋭い爪に犬歯を持ち非常に力強いクズリですので、戦う相手が危険であることは間違いありません。
しかしながら、飼育下においては日本のフェレット同様に人間にもよくなつき可愛らしい一面も持ち合わせています。
そこがまた人気の秘密かも知れません。
クズリの武勇伝
ここまででもお伝えしてきましたが、クズリには様々な武勇伝が存在します。
オオカミやコヨーテ、ピューマ、クマから餌を横取りすることは前述の通りです。
他にも、「ピューマがクズリに引き裂かれた。」や「群れのオオカミやコヨーテを追いかけまわしていた。」など、その信憑性はともかくクズリの武勇伝は枚挙にいとまがありません。
その中でも「とある動物園ではホッキョクグマを殺傷したという記録が残っている。」これが最も驚くべきものでしょう。
動物園では、クズリがホッキョクグマを殺した?
さて、このクズリがホッキョクグマを殺傷したと言う記録は実際のところどうなのでしょうか?
勿論、それが嘘であると言う証拠はありませんが、反対に事実であるとするにも証拠が乏しいようです。
実際にそれらを伝えているのは「記録がある」とする文字データばかりで、写真や映像、はたまた何時何処でのことなのかも定かではありません。
体重30キログラム程度のクズリが、500キログラム程度もあるホッキョクグマを殺すことが出来るのかは甚だ疑問です。
いくらクズリが狂暴で鋭利な爪や犬歯を持つとしても、大きくて頑丈なホッキョクグマを殺すことが出来るとは考えられないのです。
勿論、100パーセントクズリが勝てないとは言いきれません。
非常にクレバーな戦略を施すクズリですので、一瞬のスキを突き、急所に的確な一撃をくらわすことが出来れば可能かもしれません。
しかし、そうは言ってもそれが出来るのはなかなか難しいでしょう。
何故、クズリとホッキョクグマが接触したかなどの経緯も不明ですし、これはフェイクニュースと捉える向きが多いのは事実ですね。
仮に、クズリがホッキョクグマを殺傷したとすれば、「生後数か月の子供のクマ」または「すでに病気で弱っていたまたは死んでいた個体」と言うのが理にかなった結論かと思われます。
まとめ
今回、クズリについてご紹介をしました。
非常に気性が荒く怖いもの知らずのクズリを、最強の動物に推す専門家もいます。
しかし、それはほとんどの場合に、クズリのあまり大きくない体格を考慮した場合が多いのです。
例え相手が自分より大きな肉食獣であっても、相手が諦めるまで執拗に攻め続けるその執念は最強の称号に価するのかも知れません。
日本では、あまり馴染みの薄いクズリですが、海外では強さの象徴ともされるのです。
しかし、それでもホッキョクグマを殺傷したと言う記録自体には疑問の声をあげざるを得ませんね。
以前は上野動物園でこのクズリの姿を見ることが出来ました。しかし、残念ながら今では日本でその姿を見ることは出来ません。
もし興味がある方は、インターネット上に多数の動画が上がっていますので、クズリの雄姿をご覧になってみてはいかがでしょうか?
強さの秘密にきっと納得しますから!