「マントヒヒ」と「マンドリル」この名前を聞いて個体そのものが思い描ける方は、動物通と言って良いかも知れませんね。
実は、この2種(勿論、どちらも猿・類人猿です。)名前が似ていることから、ごっちゃになってしまう方が多くいるようですね。
確かにどちらも同じ「猿」の仲間で、一見その怖い感じの風貌から肉食に見えますが実は食べ物は小動物から木の実まで食べる雑食であることなど確かに共通点も数多く存在します。
しかし動物園で見ると違いが分かりますが、それぞれの個体は全くの別物なんです。
名前が似ていることがこのごちゃごちゃの原因なのですが、実際それぞれの名前の由来も全く異なるんです。
今回この「マントヒヒ」と「マンドリル」の違いについて生態や性格など様々な観点からお伝えし参ります。
目次
「マントヒヒ」と「マンドリル」の基本データ
【マントヒヒ】
- 分類 霊長目 オナガザル科ヒヒ属
- 分布 アフリカ北東部やアラビア半島
- 生息 サバンナ地帯の草原や岩場など、乾燥した地域
- 体長 雄60から80センチメートル、雌40から60センチメートル 程度
- 尾長 40から60センチメートル 程度
- 体重 雄20から30キログラム、雌10から15キログラム 程度
【マンドリル】
- 分類 霊長目 オナガザル科マンドリル属
- 分布 アフリカ西部
- 生息 主に熱帯雨林の森林地帯
- 体長 雄80から90センチメートル、雌55から65センチメートル 程度
- 尾長 4から8センチメートル 程度
- 体重 雄25から35キログラム、雌11から15キログラム 程度
- その他 絶滅危惧種に指定
基本データから見る違い
上のデータから見ますと、分類としては「マントヒヒ」と「マンドリル」双方ともにオナガザル科の霊長類と言うことになりますね。
生息地は共にアフリカ大陸ですが、マントヒヒは北東部マンドリルは西部で住処となる場所もずいぶん異なるようです。
形状としてはややマンドリルの方が大きい数値ですが、尻尾の長さを考えますと大体似たような体格と考えて良いと思います。また雄と雌の体格差があることも共通項目で、重さで考えると双方ともに雄は雌の倍近い大きさになることが分かります。
名前の由来にもある違い
「マントヒヒ」と「マンドリル」この似たような名前からごっちゃになってしまう方が続出していますが、実はこの名前の由来は全く別になるんです。
マントヒヒの雄は灰色の体毛が生えているが、成獣になると特に肩から背にかけては白っぽい毛がタテガミのように伸びて来ます。この姿がマントを着用しているように見えることからマントを着たヒヒで「マントヒヒ」となりました。
一方マンドリルの名前ですが、マンは「人間」でドリルは「霊長類(猿の一種)」とされていて人間に近い猿ということから「マントヒヒ」となりました。
似たような名前ですがその「マン」は「マント」と「人間」全く異なる由来だったのですね。
「マントヒヒ」と「マンドリル」の生態
では、次に「マントヒヒ」と「マンドリル」のそれぞれの生態を見てみましょう。
マントヒヒの生態
マントヒヒは乾燥した草原などを生息地としてはいますが、近くに水源がある場所にしか生息はしていません。
また草原以外にも丘陵地帯や山岳地帯にでもその姿を見ることがあります。その高さは標高3000メートルを超すときもあるようです。
その生活は、群れでの行動になるのですが、群れの基本単位となるのが1頭のオスに複数の雌とその子供たちからなるユニットと呼ばれるもので、このユニットの集合体クランが形成され、更にクランの集合体バンドと呼ばれる50から60頭からなる大きな群れになります。
このバンドの下にマントヒヒの、食事や移動などの生活行動が行われます。その行動範囲は30から40平方キロメートルと言われ、夜には他のバンドも集まり更に大きな群れとなり安全な場所で過ごします。
活動のほとんどは地上で、食性は雑食で果実や木の葉、草、種などの植物から小型の哺乳類や鳥類に爬虫類、昆虫など見つけるものは何でも食べます。これは乾燥した地域で食物が乏しいことの影響もあるようです。
動物園などにおける飼育下においてはその寿命は、30から35年程度のようです。
マンドリルの生態
マンドリルは、通常では1頭の雄に複数の雌からなる10頭前後の群れで生活しています。また中には、複数の雄に複数の雌にその子供たちの群れも稀に見られるようです。
またマントヒヒ同様にこの群れが集まり200頭を超すような大きな群れをつくることもあります。
マンドリルは生息地が森林地帯ということからも分かるように木登りがとても上手ですが活動はむしろ地上での方が多いようです。
その行動範囲は5から50平方キロメートルとかなりその幅に開きがあるのですが、これは食料事情によるもののようで、食料が豊富にあれば、あまり遠くへの移動はしないようです。
行動は日中で、夜はいつも異なる木の上で休みようです。
食性もマントヒヒ同様に雑食で、主には果物や木の実などですが、昆虫や爬虫類、鶏、小動物なども食します。
動物園などにおける飼育下においてはその寿命は、30から40年程度のようです。
生態から見る違い
「マントヒヒ」と「マンドリル」はもともと猿の仲間なので、一見すると肉食のようですが実は雑食性と言う食べ物事情や群れを作る生態などは共通のようですね。
ここにおいては、群れの数や形態とその生息地における特徴程度の違いなのかもしれません。
形状から見る違い
マントヒヒは大人の雄になると灰色、メスや子供は茶褐色の体毛をしていますが、大人の雄になると名前の由来(マントを着たかのように見える)通りに頭(側頭部)から肩、背中にかけて鬣のように長い体毛が生えてきます。
顔とお尻には体毛が無いので、皮膚がそのまま露出しています。
一方マンドリルは、体毛は茶褐色でおなかは白、顔の周りは黄色や金色になります。特徴的なのは大人の雄の色彩で、マントヒヒ同様に顔とお尻には体毛が無いのですが、鼻筋から鼻にかけては真っ赤、頬は縞模様の溝が刻まれた青、お尻は紫ととてもカラフルな様相をしております。
このように、体毛の色と形、そして顔とお尻の色、更には基本データにもあるように尻尾の長さにおいてはかなりの違いが見られます。
ただし、この体毛の形状と色彩の違いが無ければもしかしたら見分けるのは困難かもしれません。
というのも、マンドリルは前述のようにマンドリル属に属しますが、以前はヒヒ属に分類されていたことがあります。
これからも分かるように外見は実はヒヒの種類と似ているようですね。
性格から見る違い
「マントヒヒ」と「マンドリル」はその性格においては、どちらかと言うとマントヒヒの方がマンドリルよりも気性が荒い傾向にあるようですね。
双方ともに猿の仲間に多く見られる気性の荒さはあるようですが、普段は温厚なマンドリルと比較した場合には、マントヒヒの方が怖い性格でマンドリルの方が攻撃性は低いと言えるようです。
これは生息地に関係があるのかも知れませんね。
マンドリルは外敵となるのは、ヒョウ、蛇、ワシとなるのですが、これら外敵にも牙をむき出し立ち向かうようです。
一方のマントヒヒは、サバンナの生息ということから、ライオンやハイエナ、チーター、ヒョウ、大型の蛇、ワシと外敵も多く戦いを余儀なくされることが多いのでこの見方をされるのかも知れません。
まとめ
今回「マントヒヒ」と「マンドリル」の違いについて説明をして参りました。
同じ猿の仲間で名前が似ていることから、よくごっちゃになってしまうこの2種ですが、その風貌から生息地など細かく見ていくと特徴的な違いは理解頂けるのではないでしょうか?
もし動物園に行くようなことがあれば、その辺を注視してみるのも楽しいかも知れませんね。
勿論、同じ猿の仲間ですので共通点も多くあるようですね。
その中で、一つ寂しい共通点ですが、「マントヒヒ」と「マンドリル」ともに生息数が減少してきています。
マンドリルにおいては、絶滅危惧種の指定も受ける程になってしまいました。
何十年先にも「マントヒヒ」と「マンドリル」の違いは?と言えるように、生存していてほしいものですね。