我々人間にとっても最も親しみのある動物と言えば、やはり多くの家庭でペットとして飼われている犬があげられますね。
そんな犬の祖先と言えば、言わずと知れた狼(オオカミ)になります。
とは言ってもチワワやトイプードルなどの小型犬からは想像もつきませんよね、ですがオオカミは紛れもなく犬の祖先となり、現在のイヌ科では最強との声もある最大種になります。
通常「オオカミ」と言うのはタイリクオオカミ一種のことを指して使われるようです。しかし、残念ながらわが国日本においては、絶滅という悲しい事実があるのですが、世界には今でも様々な種類のオオカミが存在します。
今回このオオカミについて、生態や特徴、種類一覧など細かくご紹介してまいります。
狼(オオカミ)
狼(オオカミ)は北半球に広く分布し、その属性は食肉目イヌ科イヌ属になります。
基本的にこの「オオカミ」という言葉は、通常タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)のことを指して使われています。
ただ、オオカミには多くの亜種の存在が認められているのです。
後述で詳しくご説明いたしますが、その亜種はこれまで絶滅種を含め39亜種(現存33亜種)への分類とされて来ましたが、近年様々な研究から絶滅種を含め15亜種(現存13亜種)へ統合すべきとの提唱がされています。
更に、アメリカアカオオカミやコヨーテ、エチオピアオオカミ、ディンゴ、イヌなどは近縁の種とされています。
狼(オオカミ)の特徴
「ハイイロオオカミ (オオカミ)データ」
- 分 類 食肉目 イヌ科 イヌ目
- 学 名 Canis lupus
- 英 名 Gray wolf / Timber wolf / Western wolf
- 体 長 100から160センチメートル程度
- 体 高 60から90センチメートル程度
- 体 重 25から50キログラム 程度
- 尾 長 35から52センチメートル 程度
- 分布域 北半球(ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の大部分など)
- 生息環境 亜種によって様々で森林地帯や山岳地帯など
亜種によっては絶滅危惧種指定される。
上記はタイリクオオカミをベースとしたデータになりますが、北半球に様々な亜種が存在し種類によって大きさなどの特徴も異なります。
現在のイヌ科においては最大になりますが、その中でもベルクマンの法則に則り、寒い地域に生息する種は大きい傾向があります。
体重も50キログラムを超えるものもいるようで、1939年にアラスカで発見された雄のオオカミは、体重79.3キログラム、ウクライナでは殺されてしまっていましたが86キログラム、これが最大の記録となるようですね。
体毛の色は灰褐色のものが多く、個体によって様々で白から黒のものも存在します。
その寿命は、飼育下であれば15年ほどで20年という記録もあるようです。野生下においては、5年から10年程度と考えられています。
狼(オオカミ)の生態
狼(オオカミ)は雄雌の一組のつがいと子供を中心とした2頭から15頭程の群れ(パック)を形成し生活をしています。
そのパックにおいては、完全なる階級社会で最上位「アルファ」次いで「ベータ」、最下位「オメガ」と称され「アルファ」だけが子供を持つことが許されます。
その順位は入れ替わることもあるようで、順位争いに敗れたり、子供が成獣となった場合にはパックを離れ単独での行動になることがあります。「一匹狼」の語源はここから来ているんですね。
パックの縄張りは食物に関係するため様々ですが、100から1000平方メートル程度で、パックに他からのよそ者が来ると追い払われてしまいます。
食性は肉食で、シカやイノシシ、ヤギなどの大型の動物から、小動物までも食します。地域によっては、獲物が少ない場合には、人間の住むところにまで現れ家畜などが被害に遭うこともあるようです。
走る速さは最高時速70キロ程度でこの場合には20分程度、時速30キロ程度なら一晩中走れます。狩りも長時間の追跡の末病気や高齢子供などの弱い個体を捕まえることが多いようです。
ただ、狩の成功率はあまり高くないので、これを補うように一度の食事で大量の肉を食べることが出来ます。
遠吠えはコミュニケーション
夜の恐ろしさを象徴する際にこのオオカミの遠吠えがよく使われますが、実はこの遠吠えはオオカミ同士のコミュニケーションツールとなっているのです。
パックから離れた個体などはこの遠吠えで仲間に自分の存在を伝えようと遠吠えをします。
パック毎に遠吠えに特徴があり、パックの識別効果もあるようですね。
また、この遠吠えは連鎖するようで、一匹が吠えるとそれに続き周りのオオカミも吠えるということもあるようです。
多彩なるコミュニケーションを駆使するオオカミ、その生態にはまだまだ奥深いものがありそうですね。
オオカミの種類一覧
オオカミには前述のように、様々な亜種が確認されていますが現存13亜種、絶滅2亜種への統合が提唱されています。
- ツンドラオオカミ、シベリアオオカミ(ユーラシア北部)
- アラビアオオカミ(アラビア半島 激減状態)
- ホッキョクオオカミ(グリーンランド、クイーンエリザベス諸島、バンクス島、ビクトリア島の北極圏)
- メキシコオオカミ(以前はアメリ南西部からメキシコに存在していたが絶滅、アメリカのアリゾナやニューメキシコ州で再導入)
- ロシアオオカミ(ウラル山脈 詳細は不明)
- カスピオオカミ(コーカサス山脈、トルコとイランの一部)
- エゾオオカミ(以前は日本の北海道に生息していたが、絶滅)
- ニホンオオカミ(以前は、北海道を除く日本各地に生息していたが、絶滅)
- イタリアオオカミ(イタリアからアルプス南部)
- エジプトオオカミ(エジプト、リビア)
- ヨーロッパ(チョウセン、シベリア)オオカミ(ヨーロッパ東部からロシア、朝鮮半島にかけユーラシア大陸)
- シンリンオオカミ(カナダ、オンタリオ州ケベック州の一部)
- グレートプレーンズオオカミ(アメリカ五大湖西、アラスカ、カナダの一部など)
- アラスカ(シンリン)オオカミ(カナダの一部、アメリカモンタナ、アイダホ、ワイオミング州など)
- インドオオカミ(インド、中東のアジア)
※場合によっては上記の種類一覧にイエイヌを加えることもあるようです。
最強の最大種
現存するオオカミの中で最強・最大種となるのは、ベルクマンの法則の通り、ツンドラオオカミやホッキョクオオカミが個体としては大きくなるのでこれらが当てはまると思われます。
しかし、絶滅種を含めると1万年ほど前までアメリカ大陸に生存していた「ダイアウルフ」が最大最強となると思われます。
160センチメートルを超す全長はやや小さなライオンという感じで加えて筋骨隆々の体格で当時の大型草食動物を容易く狩っていたようです。
このダイアウルフは、マンモスなどと一緒に絶滅をしてしまいました。現在、その姿が見られ無いのはとても残念ですね。
オオカミとイヌ
もともとはイヌとオオカミは近縁種とすることが主流でありましたが、近年ではイヌはオオカミの亜種とする傾向にあるようです。イヌの祖先がオオカミとされるように、オオカミが飼いならされて家畜化したのがイヌという図式が成り立ちますね。ただ、我々が日頃使う「オオカミ」にはやはりイヌは含まれないようです。
オオカミとイヌにおいて、牙の大きさや肉球の長さ前足の位置などの体格の違いは狩りなどにおける野生と家畜での差が現れているようですね。
アメリカの研究者の発表によるとオオカミに最も近い犬種はなんと日本の柴犬なんだとか。シベリアンハスキーなどを想像していたので少々驚きですが、柴犬の遺伝子はほとんどオオカミのそれと同じだと言うことのようです。
オオカミの再導入
この言葉はあまり聞き馴染みが無い方もいるかと思いますが、これオオカミが絶滅してしまったその土地に現存するオオカミを放ち再びその土地での生息を再開させようとするプロジェクトです。
実際問題としてオオカミの絶滅により、外敵を失ったシカなどが増殖してしまい、森林をあらしたり農作物被害が拡大してしまっているのです。食物連鎖の頂点が無くなるという事態で自然の生態系や自然環境にも大きな被害が及んでいます。
この再導入ですが実はアメリカではメキシコオオカミで実際に成功しています。これにより動物の本来ある生態系は勿論、植物から土壌や川の水質に至るまで自然本来の姿を取り戻すことに成功しているようです。
オオカミを絶滅に追いやってしまった原因はそもそも人間によるものがほとんどなので至極当然のこととも思われますが、地元住民にとっては凶暴な肉食獣をわざわざ放つというこの行為には嫌悪感を示す場合も多く実際にはその賛否は分かれています。
日本においてもこのオオカミの再導入についての議論は持ち上がっているようですが、実際にはなかなか進展は見られていません。
まとめ
今回はオオカミについて色々とご紹介してまいりました。
古来より人間との係わりが深く、今でもペットのイヌとして実は私たち人間にとっても身近な存在なのですね。
しかしながら、その実態についてはあまりなじみのないことが多いのではないでしょうか。
勿論凶暴な肉食獣ではありますが、絶滅してしまった種や今なお絶滅が危惧される種があり懸念されています。
どうか、これ以上我々の身近な仲間がいなくならないで欲しいものではありますね。