今回ご紹介するのは「サシガメ」になります。
多くの方には、あまり聞き馴染みのない名前かもしれませんね。
もしかすると、頭や手足を甲羅に引っ込める亀の仲間と勘違いされる方も多いかもしれません。
しかし「サシガメ」は爬虫類のカメの仲間ではなく、昆虫のカメムシの仲間になります。
「サシガメ」には様々な種類が存在し、中には毒性を持つもの、シャーガス病の感染源となるものなど私達人間にとって、恐ろしい存在となるものもいるのです。
今回は、この「サシガメ」について特徴などから刺された時の対処法、駆除方法まで詳細にお伝えしてまいります。
サシガメ
「サシガメ」とは、実は単体の昆虫を指すのではなく、カメムシ目カメムシ亜目サシガメ上科サシガメ科に属する昆虫を総称して使われているのです。
サシガメは世界中で6000以上の種が確認されているようです。
サシガメの特徴
サシガメは上述のようにサシガメ科の属する6000種以上の昆虫の総称ですので、一括りにはできないですね。
体長も大きなものから小さなものまで多岐にわたります。体形もカメムシの種としては比較的細身のものが多いのですが、細長いものなどこちらも様々な形体に分かれます。
「硬い体」「カメムシの種においては頭が小さい部類」「突出した球体の複眼に2個ある単眼」これらが共通の特徴と言えるかもしれません。
サシガメの食性は基本的には肉食性で、他の昆虫などを捕食します。
しかし種類によっては哺乳類(人間も含め)の血を吸うものもあり、人間に対しては感染症キャリアーとなる厄介な存在になります。
感染症としては、詳細は後述しますが「シャーガス病」が特に有名です。
この吸血性の種は6000以上の種の内90種程度の存在が確認されているようです。
ただし、昆虫食の種類の中でも、捕食時に使う毒針を所有するものもあり、これで人間を刺したり吸血種同様に感染症キャリアーとなることも稀にあるようです。
サシガメの種類
サシガメは世界に6000以上(6500とする説もある)の種が存在しています。
分類としては、色々な説が存在し紛糾していたようですが、今では25亜科ということで落ち着きつつあるようです。
日本にもサシガメは生息(8亜種50種)しています。
日本に生息するサシガメに関しては吸血種も「オオサシガメ」が確認されているようです。
サシガメの生息域
サシガメの生息域は幅広く、中南米を中心に熱帯地域に多く生息しています。
日本においても温暖な気候の
- 沖縄に「オオサシガメ」
- 九州から本州の一部に「シマサシガメ」
などが生息しています。
生息環境と生態
サシガメの生息環境は、ほとんどの種が山などに生息しています。
その中でも「ヤニサシガメ」のように主に木の上で生活をする種や、「キイロサシガメ」のように地上で生活する種など様々です。
木の上で生活をする種は、長い脚にゆっくりとした動きになるものが多く、地上生活の種は、太い脚に活発な動きのものが多くなります。
種によっては山以外にも、民家にいる昆虫を食するため一緒に民家に棲みついてしまうものもあります。
日本でも「オオトビサシガメ」などは、民家の外壁の隙間などに棲みつき、そのまま屋内で越冬することもあるようです。
こうなると、人間が刺されてしまう危険性も出てきますね。
海外では実際に民家に棲みついたサシガメに刺されるという被害報告も多数あるようです。
昆虫食のサシガメにおいては、様々な昆虫を獲物とする場合が多いのですが、中には限られた昆虫を獲物とする狭食性の種が存在します。
「フサヒゲサシガメ」などは獲物としてアリに特化しているので、自ずと生息環境はアリの巣周辺になります。
「アカシマサシガメ」などは獲物としてヤスデに特化するなど、狭食性の中でも様々になりますね。
また、同様に吸血種は吸血対象となる哺乳類の住処に生息しています。
サシガメの恐ろしさ
このようなサシガメですが、私達人間にとって恐ろしいと感じるのは昆虫食種の持つ毒針と吸血種による感染症になります。
サシガメの毒
昆虫食のサシガメが積極的に人間を襲うことはありませんが、種類によっては強力な毒針を持ち、素手で捕まえようとすると刺されてしまうことがあります。
この際に、捕食時同様に毒を注入してきます。
サシガメに刺されてしまうと、痛みが強いとされるアシナガバチに刺された時と同様の激しい痛みを伴います。
サシガメに手を刺され、数日間手を自由に動かせなかったという被害状況報告もある程です。
サシガメを捕まえる時は勿論、身体についたサシガメを払う際も決して素手で行ってはいけません。
シャーガス病
シャーガス病とは、寄生虫「クルーズトリパノソーマ」がサシガメを媒介して人間が感染する病気です。
症状は、急性期慢性期ともに顕著なものは稀ですが、命の危険にかかわる可能性も否定できません。
起こり得る症状としては、部位の炎症や腫れ、リンパ節腫腸などが初期症状として現れます。続いて発熱や肝脾腫へと進行する場合があります。
そして最悪のケースとしては、急性心筋炎や髄膜脳炎で命を落としてしまう事もあるのです。
この寄生虫「クルーズドリパノソーナ」は基本的には、サシガメの糞に現れます。
よく勘違いされますが、吸血の針や毒針を通して感染するというよりも、吸血した際に糞をその場に排出しその糞を擦るなどして傷口や粘膜などから感染するものです。
勿論、針による感染(昆虫食の毒針含む)も否定はできません。
吸血種全てがこの感染症の危険性があるわけではありませんが、90種の吸血種の中で過半数となる50種程度からこの寄生虫が検出、さらにその中で10種程度が動物への媒介を起こしているようです。
この媒介を起こす10種の内、次の4種は人間への感染源として特に気を付けたい種になります。
【人への感染が特に懸念される4種】
- ブラジルサシガメ
- メキシコサシガメ
- ベネズエラサシガメ
- アカモンサシガメ
日本のサシガメの場合
日本には主にネズミから吸血をする「オオサシガメ」が沖縄に生息しております。
民家にいたネズミから吸血をしていた種が、ネズミの駆除などで吸血対象となるネズミがいなくなった際に、人間を対象にしていたということもあったようです。
しかし、住宅事情が木造からコンクリートに変わるとともに、民家に棲むネズミの数も減少しています。
これに伴い、人間が被害に遭う危険性も減少傾向にあるようです。
仮に、刺されたとしても日本に生息するサシガメには寄生虫「クルーズトリパノソーマ」は寄生していないので、シャーガス病の心配はないようです。
ただ、中南米に旅行に向かった日本人トラベラーが現地で感染し、帰国後に発症したという事例はあるようです。
この場合でも、シャーガス病は人から人への感染は見られないので、国内感染の心配は無いようです。
刺された時の対処法
もしもサシガメに刺されてしまった場合には、擦らずに流水で洗い流しましょう。
危険なのは糞ですので、注意して流してください。
念のため、消毒処置はしておくようにしましょう。
感染の恐れがない限り、ほとんどの場合には自然治癒で治るようです。
腫れが引かない場合や傷口が治らない状態が続くようであれば、病院で診察を受ける方がよろしいですね。
サシガメの駆除
日本では、サシガメ自体の認知およびサシガメの危険性が認知されていませんので、大々的な駆除対象にはなっていません。
しかし、中南米の現地ニクラグアなどでは、シャーガス病予防の為サシガメ駆除プロジェクトを大々的に行い始めています。
サシガメが棲みつきやすい壁のひび割れやレンガなど家屋の修繕と殺虫剤散布などを繰り返すことで、少しずつサシガメの駆除とシャーガス病の感染リスクが軽減されているようです。
まとめ
今回、サシガメについてご紹介してまいりました。
8亜種50種の生息が確認されたはいるものの、日本ではサシガメという名前自体あまり聞き馴染みがない昆虫です。
しかし、種類によっては非常に恐ろしい感染症キャリアーとなる厄介な昆虫なのです。
まずは、このサシガメにという昆虫がいるということを知っておいてください。
幸い、日本に生息するサシガメは危険な感染症キャリアーとなることは無いようですが、中南米に旅行に出かけるような際にはサシガメに気を付けなければなりません。
その際には、この情報が役に立つと幸いです。