一見してカワハギと間違ってしまうほど似ている魚がいます。それはソウシハギです。
ですが、このソウシハギは内臓にフグ毒の数十倍にもなる毒を持っています。
この猛毒魚ソウシハギの危険性や見分け方、そして食べ方についてご紹介していきます。
目次
ソウシハギの生態
出典画像:Wikipedia
- 学名:Aluterus scriptus
- 分類:フグ目カワハギ科ウスバハギ属
- 分布:熱帯海域/日本では本州中部より南の暖かい海域
- 体長:50~100cm
ソウシハギは一見してウマヅラハギに似ています。食用としては沖縄県や奄美大島で食べられており、ただし、内臓系に猛毒があるので、食べるのは内臓以外です。きちんと処理をすれば淡白で美味しい魚と言えます。
ソウシハギの持つ猛毒とは
大阪府や広島県など、西日本の府県ではソウシハギを食べないようにという警告が出されている場合があります。
「なぜそれほどまでに警戒されているのか」「食べたらどうなるのか」「見分け方は?」「それでも食べてみたい!」という疑問や要望についてこの章でその答えご紹介していきます。
ソウシハギの毒:食べたら最後のパリトキシンとは
ソウシハギの内臓系にはパリトキシンという猛毒が蓄積されており、主に筋肉系に作用します。
パリトキシンが体内に入ると筋肉痛、手足のしびれや筋肉全体の麻痺と痙攣、そして症状が重いと呼吸器系に麻痺を起こしたり、心筋作用し不整脈やショック状態、腎障害などを引き起こします。
また、このパリトキシンは加熱による変質や分解はされないため、予防法は「内臓系は食べない」ということ以外ありません。
パリトキシンの毒の強さはフグ毒テトロドドキシンの70倍とも言われています。このパリトキシンによる食中毒例は多く、大抵はウマヅラハギやウスバハギと間違ってしまって食べることが原因です。
カワハギなどの肝は大変美味ですから、誤ってソウシハギの肝を食べてしまったのでしょう。
さらにこのソウシハギはフグのように調理に制限があるわけではないので、基本的に誰でも調理することができますし、ガイドラインがあるのみです。
このように内臓が美味しい魚に見間違えやすい外見、調理に対して規制がないことが合わさって、パリトキシン食中毒が起こってしまうのです。
幸い、人間での死亡例はいまだにありませんが、家畜が死んでしまったケースがあるため、命を奪うほどの毒があることは忘れてはいけません。
ソウシハギを間違って販売!?
ソウシハギは内臓に猛毒を持つ魚で、ウマヅラハギと間違って食べられてはいけない魚です。
ところが、三重県のスーパーで誤って「カワハギ」として販売された可能性があるというのです。
そのスーパーは3匹の魚を仕入れ、そのうちの2匹を販売し、販売後にソウシハギの可能性に気づき保健所に連絡しました。
1匹の販売先は判明したものの、もう1匹の販売先は突き止めることができず、保健所は購入した人に決して食べなようにと呼びかけるにとどまりました。
Twitterでソウシハギと判明し命拾い?
2016年11月19日、Twitter上で「でっかいカワハギを釣ったのでこれから肝醤油にして食べます!」という内容のツイートがありました。
すると、このツイートに対して「内臓食べちゃダメ!」「猛毒ですよ!」といったリプライが多く寄せられました。
その後、最初のツイートしたアカウントからのツイートが消えました。
「もしかして肝醤油にして食べたのでは?!」とその安否、生死が心配されましたが、数時間後にソウシハギだというリプライをみてリリースしたとのツイートがあり無事が確認されました。
さらに驚くべきことは地元の人が「ウスバハギだよ」と言っていたことです。
販売されたり食べられそうになったり、そして現地の人もまでが誤認してしまいます。ここまでソウシハギが人の食卓にカワハギやウマヅラハギとして近くことになった原因は、やはり見間違えやすい外見だからです。
ソウシハギの見分け方
うっかり食べてしまわないようにしっかり判別する必要があります。
外見はかなり似ていますが、明確な違いが2点あります。
まず1つ目は尾びれの大きさです。ソウシハギはウマヅラハギやウスバハギ、そしてカワハギに比べるとかなり大きく、そして長い尾びれを持っています。
なので、釣り上げてしまっても喜ぶ前に尾びれをチェックしましょう。
2つ目は体の模様です。ここのポイントが最も顕著です。それはソウシハギの体表には青い波状のうねうねした模様と斑点があることです。
もしウマヅラハギやウスバハギ、そしてカワハギに似た魚を釣り上げた際は、背びれと体表の模様をチェックしましょう。
ソウシハギの食べ方
沖縄ではソウシハギは食用として食べられています。では、ソウシハギと分かっていて、どうしても食べたいという場合はどうするのか。
それは毒のある部位、つまり内臓を全て取り除けば無害になります。沖縄ではお味噌汁や煮付けなどにして食べられており、その味は淡白でクセがなくほのかな甘みがあるそうです。
それはソウシハギでは?と疑うことが大切
ソウシハギとウマヅラハギやウスバハギ、そしてカワハギは知識がないと見誤ってしまうほどに酷似しています。
特にカワハギは釣り上げると釣り人として一人前と言われているので、釣り上げて浮かれてしまうこともあるでしょう。
ですが、そこで一旦落ち着いて、「本当にカワハギ?こんな模様あるのか?背びれが大きくないか?」と疑ってみましょう。
もし全部当てはまらなければ、晴れて一人前の釣り人と言えるでしょう。