今回ご紹介するのは、「スミロドン」です。
しかし、こう言われてもあまりピンとこない方も多いかもしれませんね。
「サーベルタイガー」とすると聞き覚えがあるのではないでしょうか?
スミロドンは、絶滅してしまった大型のネコ科動物サーベルタイガーの一種です。
サーベルタイガーとしては最後に登場した、最大級の大きさに最強の強さを誇る種とされています。
今回は、スミロドンの強さや絶滅理由、生態にその強靭な筋肉に至るまで、詳しくご紹介します。
スミロドン
「スミロドン基本 データ」
- 分 類 哺乳綱 ネコ目 ネコ科 マカイロドゥス亜科 スミロドン属
- 学 名 Raphus cucullatus、Smilodon
- 和 名 スミロドン
- 英 名 Smilodon
- 体 長 150~250センチメートル程度
- 体 高 100~120センチメートル程度
- 体 重 330キログラム程度
- 分布域 南北アメリカ大陸(発見地)
- 時 代 300万年前~8000年前(250万年~1万年前説もあり)
スミロドンの生態
スミロドンは、サーベルタイガーを代表するメジャーな種で、最後期に出現しました。
体長も大きいものでは250センチメートルとなり、サーベルタイガーの仲間では最大種となります。
もともとは、北アメリカに生息していましたが、アメリカ大陸間大交差によって南アメリカにも分布を広げたのです。
発見された化石から判断すると、北アメリカの個体よりも南アメリカの個体の方が大きくなる傾向にあるようです。
スミロドンの情報は、絶滅してしまっているため、恐竜と同じく発掘された化石からの推測によります。
このため、あらゆる情報の中に、諸説入り乱れ様々な可能性が秘められています。
例えば、食性もその一つで、全長24センチメートルにも及ぶ牙を持つことから、スミロドンは肉食とされています。
しかし、実はこの牙が現在の大型のネコ科肉食動物のように骨を嚙み砕けるほどの強度は持っていないことから、獲物の柔らかい肉や内臓部分のみを食べていた説や、吸血説、腐肉食説など他説が存在します。
発見されたスミロドンの化石からは、獲物とされる動物との戦い痕があることから、捕食者とする説が有力なのです。
スミロドンと同時期には、既に私達人間の祖先となる「ホモ・サピエンス」もアメリカ大陸に存在しており、このスミロドンの捕食対象となっていたようです。
これは人類の化石から、スミロドンにより受けたと考えられる傷跡がいくつも発見されていることからそのように考えられています。
スミロドンの後ろ肢の短い骨格から、走る速さはそれほど速い方ではなく、動きの遅いマンモスなど大型の草食動物を対象として、待ち伏せ型の狩りを行っていたようです。
また、牙が抜けたり怪我をした状態でも長らく生き続けたことも化石などから確認されています。
これは、スミロドンが現在のライオンのように、集団で生活していたことを裏付けるともされています。
スミロドンの特徴
スミロドンの特徴としては、やはり20センチメートルを超す大きな牙です。
獲物を狩る際には、この牙を最大限に活用していたようです。
下あごは120度の角度まで開くことができたので、牙で獲物を襲うには非常に効率が良かったと考えられています。
また、前脚などの筋肉が異常に発達して、獲物を倒し抑え込むには非常に役立ったとも考えられています。
一方で四肢は短く後ろ肢の筋肉は前肢ほどしっかりとしていません。
また、ネコ科動物には珍しく、オスとメスの身体に差異が無く、詳しく調べないと性別の判断ができないようです。
しかし、一説にはオスにはライオンのような鬣があったともされ、そうであればオスメスの区別は容易につけられますね。
スミロドンは【最強の戦闘力】を備えたサーベルタイガー
スミロドンは、サ-ベルタイガーの仲間では最大種でかつ最後に登場した種類であります。
当然当時の生態系の頂点に君臨していましたし、数あるサーベルタイガーの種類の中でも最高の進化を遂げた最強の戦闘力を備えた種であったことは間違いないでしょう。
前述の、スミロドンがアメリカ大陸間大交差によって南アメリカに生息域を広げた際には、サーベルタイガーと非常によく似た肉食有袋類「ティラコスミルス(Thylacosmilus atrox)」が南アメリカにおける生態系の頂点に君臨していました。
スミロドンが南アメリカへ生息域を広げてから、ティラコスミルスは絶滅という運命を辿ることになります。
スミロドンとの生存競争に敗れてしまったのです。
スミロドンの最強の戦闘力は牙と筋肉
スミロドンが最強のハンターとして君臨できた理由は、その大きな体はもちろんですが、長い牙と桁外れのパワーを生み出す筋肉にあります。
大きな牙は非常に有効的な武器でした。それを巧みに操ることができるのは、120度の角度まで開く柔らかい顎の関節です。
実際に顎の力は、そこまで強くなかったスミロドンですが、鋭利な牙を喉に突き立て獲物を失血死や窒息死させていたとみられています。
この狩りを成功させるのには、もう一つ大きな秘密がありました。
それが、スミロドンの持つ前肢の強靭な筋肉です。
マンモスなどの大型の哺乳類を仕留めるには、鋭利な牙だけではなかなか上手くいきません。
しかし、それを可能にしたのが強靭な前肢の筋肉なのです。
大きな獲物を強靭な前肢で、がっちりと押さえつけ動きを封じ込めて急所となる首元に鋭利な牙を突き立てる。
これが、スミロドンの必勝法です。
スミロドンが最強のハンターとして、生態系の頂点に君臨できたのは、この鋭い牙と強靭な筋肉という最強の戦闘力を手に入れたからなのです。
スミロドンの絶滅理由
当時の生態系の頂点に君臨していたスミロドンですが、1万年ほど前に残念ながら絶滅という道を辿ってしまうのです。
なぜ、スミロドンは絶滅してしまったのでしょうか。
これにも様々な説が存在しますが、次のようなものが代表的な説です。
気候の変化
地球が最終氷期となったおよそ1万年前、激しい気候変動が起こり植物の減少とともにスミロドンの餌としていた多くの哺乳動物が姿を消すことになります。
獲物がいなくなることにより、必然的にスミロドンも絶滅へと向かってしまったという説です。
環境適応能力が乏しかった、ともされています。
生存競争
ピューマやジャガー、オオカミなど現代でも姿を見ることができる、大型の肉食哺乳類が登場し始めます。
新種の大型肉食動物は、牙も丈夫で素早く動くことができたのです。
これら新しい肉食動物から見れば、スミロドンは時代遅れの存在でしかありません。
スミロドンは、新しく登場した肉食動物との生存競争に負けってしまったというものです。
また、人間の影響もあるとする説もありますが、その真相は定かではありません。
タールピット
スミロドンの化石発見で最も有名なのは、アメリカの「ランチョ・ラ・ブレア」のタールピットです。
これは、天然アスファルトが湧き出る浅い池で、ここにハマって動けなくなった獲物を狙い、自らも動けなくなってしまったと考えられる化石が2000体も発見されているのです。
ここから発見された化石は、保存状態も良く、そのおかげでスミロドンの研究が進んでいるのです。
ちなみに、ここで発見された化石は、ロサンゼルスの自然史博物館で見学することができます。
まとめ
今回、スミロドンについてご紹介しました。
最後のサーベルタイガー、スミロドンはテレビや映画などでマンモスとともによく見かけます。
その容姿からは、非常に狂暴な最強のハンターという印象が伝わってきますが、残念ながら今ではもう見ることはできません。
マンモス同様に、その絶滅が悔やまれる動物ですね。
同じネコ科動物のトラやヒョウ、ライオンなど絶滅が寄付される動物が、どうか同じ道を辿らないことを願うばかりです。