「竜虎相搏つ(りゅうこあいうつ)」という四字熟語があります。強く秀でているもの同士が相見えることを指します。
日本人にとって虎は強さと勇猛さの象徴と言われており、有名な「加藤清正の虎退治」で登場する虎は実はアムールトラ(シベリアトラ)と言われています。
アムールトラは現在ではネコ類最大最強の種であり、その強さはヒグマをも凌ぐと言われています。
この記事ではそんなアムールトラについてご紹介していきたいと思います。
アムールトラ(シベリアトラ)の生態
- 学名:Panthera tigris altaica
- 分類:ネコ目ネコ科ヒョウ属
- 分布:ロシア極東沿海地方やハバロフスク地方アムール川とウスリー川流域
- 体長/体重:約2.5m/約250kg
アムールトラはシベリアトラとも呼ばれ、ロシアの極東沿海部やアムール川・ウスリー川流域に生息しています。
しかし確認されている個体数は少なく、現在は500体程度のみが確認され、絶滅が危惧されている動物です。現在では保護活動が進められており、個体数は年々わずかながら増加しています。
ただし、もともと極東ロシアの生態系の頂点に立つアムールトラが増えたことで、他の肉食動物が捕食されているとも言われています。
そんなアムールトラは実は現存するネコ類最大の種としても知られています。日本人にとって強さの象徴であり、龍に並ぶ強さをもつとも言われているトラですが、日本の絵巻物や偉人伝等において登場するトラはこのアムールトラとも言われています。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に加藤清正が討伐したという伝承もあり、絵や歌舞伎等で「トラ=強い」というイメージが広く定着しました。
外見的特徴としては、トラ特有の縦縞模様の幅が狭く、腹部は白いです。体毛は夏毛が1.5cmほどで冬毛は5cmほどになります。これはロシア極東部が湿潤大陸性気候のため、夏と冬の寒暖差に適応するためと考えられています。
アムールトラは「世界で一番大きいトラ」
日本人にとって強さと勇猛さの象徴であるトラ、そしてそのイメージの核になったアムールトラですが、前述の通り世界最大級のトラとして知られています。中には体長3m、350kgに達する個体も確認されています。
アムールトラはその体格を維持するために食欲も旺盛で雑食です。運動能力にも優れ、主にヘラジカやイノシシ、時には牛などの大型の動物までも食べてしまいます。行動範囲は広く、1日で数十キロ歩くとも言われています。
アムールトラの寿命と一生
アムールトラの寿命は10〜15年ほどで、動物園などの飼育されている状態では20年以上生存していた記録があります。
特定の繁殖期はなく、主に子供はメスが育て、オスは関与しません。アムールトラの巣は倒木や大木の穴や岩穴にあることが多く、そこで子育てをします。妊娠期間は90日~100日程度で、1回で2~4匹の子供を出産します。
生後間もない子供の体重は1kg程度で、目は開いておらず、約2週間ほどで見えるようになります。その後2ヵ月程の授乳期間を経て、その後に親から少しずつ肉をもらうようになります。
親と一緒に行動するのは1年半ほどで、その後独り立ちし4年程度で繁殖するようになります。
アムールトラは最大最強の肉食獣!?
現存するネコ類最大の種であるアムールトラ、「大きい=強い」かどうかは必ずしもそうではありませんが、アムールトラの場合は大きくて強いと言えます。前述してように、大型の動物すら食べてしまうことがありますが、その中でヒグマすら襲って食べてしまうことがあるそうです。この章ではその強さをヒグマ、ベンガルトラを比較しつつご紹介します。
ヒグマとの比較
ヒグマはホッキョクグマと並びクマの中では最大の種で、体長2.5m~3m、体重250kg~500kgになり、人間が襲われ死亡することもあります。
日本では明治時代の「三毛別羆(ヒグマ)事件」として知られ、7名が死亡、3名が重症という事件が起きています。この時の襲撃してきたヒグマは僧侶の袈裟のように体毛が白かったことから「袈裟懸け」と呼ばれ、この「袈裟懸け」は340kgだったと言われています。
ヒグマの大陸における生息域はアムールトラとも重なるところがあり、この両種が互いに遭遇することもあります。アムールトラは、このヒグマすら襲って食べてしまうことがあります。
体格ではほぼ互角ですが、現地ではヒグマがアムールトラの姿を確認すると引き返したり逃げ出すことがあります。また、アムールトラの糞の中からヒグマやツキノワグマの毛が見つかることも多く、アムールトラにとってヒグマは餌となる対象動物の一つであると言えます。
ベンガルトラとの比較
アムールトラに並んでネコ類でも最大クラスの大きさを誇るのがベンガルトラです。
ベンガルトラは体長230〜300cm、体重180kg〜230kgと、アムールトラよりもひとまわり小さく、主にインドやネパールなど南アジアに生息しています。
ベンガルトラはシカやイノシシ、ウマ、そしてウシも食べてしまう点ではアムールトラとも似ています。
両者の違いとしては島の数がベンガルトラの方が少なく、体毛が比較的短いことが挙げられます。しかし、大きな違いとしてはやはり大きさでは、体格差ではアムールトラの方に軍配が上がります。アムールトラの強さの秘密はネコ類独特の運動能力の高さと体格の大きさと言えるのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。アムールトラは体格と俊敏性で陸上生物の下でもトップクラスに強いということをご紹介してきました。
ただし、アムールトラを見るのは野山ではなく動物園だけにしたいところですね。
日本では多摩動物園や富士サファリパークをはじめとして20以上の動物園で見ることができるので、怖いもの見たさで会いに行くのもいいでしょう。