昔の人気アニメ「あらいぐま ラスカル」で一躍人気者となったアライグマ。
その愛くるしさから、ペットとして非常に人気が高かったのですが、凶暴な性格から飼い切れなくなったペットを自然に放したり脱走したりして今では日本各地に定着してしまいました。
天敵のいない日本ではもの凄い勢いで繁殖をし続けています。
タヌキに非常に似ていて、日本人にはあまりこのアライグマに対する危機意識はなかったかも知れません。
しかし実際には大違いで、農作物への被害に環境破壊、人的被害などの問題が起こり、今では害獣とされ駆除対象となっています。
また、近年ではジビエ料理として食用にも使われるなど新しい活用方法も見つかっているようです。
今回はこのアライグマについてご説明してまいります。
目次
アライグマ
「アライグマ基本 データ」
- 分 類 食肉目 アライグマ科 アライグマ属
- 学 名 Procyon lotor
- 和 名 アライグマ
- 英 名 Racoon
- 体 長 40から60センチメートル程度
- 体 重 6から8キログラム程度
- 尾 長 20から40センチメートル程度
- 寿 命 野生下で3から5年程度 飼育下では10から20年程度とも言われている
- 分布域 カナダ南部から南アメリカ北部辺り(原産)
- 生息環境 主に水辺近くの森林など
アライグマの特徴
アライグマはカナダ南部、アメリカ合衆国、中央アメリカなどがその原産地となりますが、その強い生命力と繁殖力でヨーロッパやアジアなどでは外来種として定着し始めています。
分布域に合わせて適応するようで、今では多くの亜種(諸説ありますが25種類というのが一般的))が存在しています。
基本データは上記の通りですが生息地によって身体の大きさも変わり2から14キログラム程度の幅があるようです。
現在確認されているものの最大個体は全長140センチメートル体重が30キログラム程度になるものがいるようです。
また雄の方が雌よりも大きくなります。
今新たに定着をしている地域でも、適応した進化を遂げていく可能背は充分に考えられますね。
外見的特徴は、体毛は長くフサフサした感じで背中は灰色や銀色から黒に近く、濃淡様々な褐色が混じります。
腹部は灰色や淡い褐色で、目の周りから口にかけては黒く鼻面や顎部分は白くなります。
一見するとタヌキと勘違いされることもありますね。
寿命は飼育下では10年から20年程度されるいますが、野生下のそれは3から5年と非常に短くなります。
これは、天敵に捕食されたり狩猟や事故などにより極端に差が出ているようですね。
アライグマの生態
アライグマは、森林や草原などで生活をしていますが、水辺周辺を好みます。
ただ、環境適応能力が非常に優れているので、人間の生活圏内である農地や郊外、都市部などでも適応し暮らして行くことが出来ます。
行動範囲は生息環境により大きく異なり、2平方キロメートルから50平方キロメートルと大幅に差があります。
雄の方がその範囲は広く、雄の範囲内に複数の雌の範囲が含まれているようです。
巣を造り住処としますが、これも環境により様々で岩場の窪み、木の洞などに巣を造ることが多いようですね。
これら以外にも他の動物の使っていた巣穴や、人家の屋根裏などにも住み着くこともあります。
昼間の行動もありますが、本質的には夜行性で夕方あたりから採食を始めます。
食性は雑食性で、カエルやザリガニなどから魚、果実や木の実、昆虫に小動物、鳥の卵まで何でも食べます。
餌となるのは、地域環境や季節によって異なります、農村部ではトウモロコシなどの畑を荒らしたり都市部では生ごみを漁ったりもします。
このことも適応能力の高さに繋がるのだと思われますね。
アライグマは四肢に5本の指がるのですが、特に前肢の指の感覚は鋭く、非常に器用に動かすことが出来ます。
器用な指を使い水中の獲物を捕獲するのです。この行動がまるでものを水に浸けて洗っているように見えることからアライグマという名前が付けられているのですね。
この行為は習性のようで水が無くても食べ物をこするような行動をします。
またアライグマは、適応力、生命力とともに身体能力も優れています。
木登りに加え泳ぐことも得意ですし、後ろ脚だけでの2足歩行も短い距離であれば可能です。
餌を前肢で抱えたまま後ろ脚だけで歩く様もよく目撃されます。
アライグマは冬眠をせず一年中活動をしておりますが、寒い地域に生息する種は冬場に穴籠りをすることもあるようです。
繁殖は2月から6月頃に行われ、寒い地域の種ほど早くに行われるようです。
一夫多妻制で、65日程度の妊娠期間を経て4子程度の子供を一度の出産で生みます。
子供は1年程度で独立し、性成熟は雌は独立と共に訪れ、雄はさらに1年を要します。
よく間違われるタヌキとハクビシン
アライグマはその形態から、タヌキやハクビシンと非常に似ていてよく勘違いをされます。
特にタヌキは、日本では野生化したアライグマと生息地が同じことが多くよく間違えられます。
ハクビシンはその名前の通り「白鼻芯」鼻に白い線が通っているので顔を見れば違いは分かります。
タヌキとの違いも詳しく知ると明白で、タヌキは肢が黒いですがアライグマは白っぽいです。
また、アライグマは耳には白い縁取りがあること、長いフサフサの尻尾には黒い輪模様が入っているので分かりやすいですね。
因みにタヌキの尻尾は短く模様もありません。
行動にも特徴があり、アライグマはクマ同様に蹠行性(しょこうせい)と呼ばれるかかとを地面につけて歩く歩行方法になり足跡には5本指の跡が子供の手の様にくっきりと付きます。
この特徴は、他の類似動物との明らかな違いとなります。
アライグマの凶暴性
アライグマはその可愛らしい見た目から、ペットにする人もいますが元来の性質は非常に荒く凶暴になります。
これに耐え切れずに飼育放棄をする人が続出していたのです。
現在では、日本においては特別外来生物に指定されているため、研究などの例外を除き飼育や譲渡、輸入も禁止されています。
事件簿
アライグマが積極的に人間に対して攻撃を仕掛けてくることは少ないですが、突発的な咬傷被害は多数報告があります。
アメリカでは、ペットのイヌやネコ、中には狩猟犬がアライグマに襲われ死亡する事件も起きています。
これは日本でも同様に起こっていて、兵庫県尼崎市では犬を散歩中の住人が次々にアライグマに襲われるという事件が起きています。
また同じ兵庫県加古川市と高砂市では、頭部や腹部を鋭利な刃物のようなもので切られたネコやハトの死骸14体が相次いで発見され警察が捜査に乗り出すという事件がありました。
よくよく調べると、犯人は人間ではなくアライグマの可能性が高いということになったのです。
アライグマが動物を襲い捕食する例は多くあり、これにより日本各地で生態系の崩壊に繋がりかねないと警鐘が慣らされているのも事実なんです。
本当に恐ろしいのは感染症
しかし、アライグマの本当の怖さは、感染症を保有するということにあります。
その感染症とはアライグマ回虫、狂犬病、レプトスピラ症が今のところ危惧されています。
これらはいずれも人間にも感染するもので、死亡リスクも高いものばかりなんです。
アライグマ回虫と狂犬病は日本の野生アライグマの保有例は認められていないが、回虫は動物園飼育の個体からは40パーセントの割合で寄生が見られています。
最も恐ろしいのが致死率100パーセントにも及ぶ狂犬病ですが、アライグマは狂犬病に感染しても1から2年程は症状があらわれず普通に生活をすることが出来るようです。
このようにその保有の有無がイヌと違って見た目からは分からないと言うのも、非常に恐ろしいですね。
また、キタキツネなどにもあるエキノコックスの危険も危惧されています。
様々な感染症を保有することが確認されるアライグマ、いずれにしても素手で触らないことが望ましいようです。
アライグマの天敵は?
そんなアライグマですが天敵は存在するのでしょうか?
原産国であるアメリカにおいては、オオカミやピューマ、オオヤマネコなどの大型肉食獣や大型の猛禽類が天敵となります。
しかし、一番の天敵はどうやら人間のようですね。
アメリカでは野生のアライグマの死因の8割弱が狩猟や駆除、1割が交通事故と9割程を人間によるものが占めるのです。
日本では、駆除はありますが、狩猟での狩りはありませんし天敵となる肉食動物も存在しませんので増え続けていますね。
繁殖力の高さに加え、競合動物がいない日本はアライグマにとっては非常に住みやすい環境なのかも知れません。
アライグマは害獣なのか?
もともとアライグマは日本には生息をしていなかった動物なんです。
ブームと共にペットとして飼われだし、飼い切れなくなり放されてしまったり、手先が器用で飼育施設から脱走したりして日本に定着をしてしまったのです。
今ではすべての都道府県で生存を確認されています。
これにより農作物への被害、家屋への被害これは歴史的建造物にも及んでいます。
農作物への被害だけでも3億円を超える程で、深刻な問題となっています。
また、このアライグマによりもともと日本にいた生き物がその生存を脅かされているのです。
アオサギやフクロウ、オオタカなど希少種も含めた鳥類の巣への襲撃に、カエルやカメ、サンショウウオなど他種の両生類・爬虫類が食害にあい個体数の減少が危惧されているのです。
勿論、これらには希少種も含まれます。
原産地では存在する天敵が日本にはいないことから、アライグマによる生態系の破壊はすさまじい勢いで加速しています。
これらのことから、アライグマに罪は無いのですが日本では害獣とされ駆除対象となっているのです。
駆除方法
日本ではアライグマは特定外来生物に指定されています。
根絶が最終目標とされ駆除されるのですが、駆除方法としては外来生物法に基づいて箱罠捕獲が主となります。
また、近年では錯誤捕獲防止の為エッグトラップという罠もあるようです。
捕獲されたアライグマは殺処分されることになります。
ご自宅でアライグマを見つけたら、自分では対処せず必ず役所に連絡して駆除をしてもらいましょう。
ただ、この処分に対しては動物愛護団体が抗議をするなどの衝突もあるようですね。
食用にも用いられる?
駆除動物の有効活用ともなるかも知れませんが、アライグマの肉はきちんと下処理を施せば非常に美味しくジビエ料理としても高級品として扱われているようです。
日本でも、愛知県などで鍋や焼き料理として食べることが出来るようです。
まとめ
今回、アライグマについて色々とご紹介をさせていただきました。
もともとアライグマは日本にいなかった種なのですが、今ではすっかり日本全国に定着をしてしまいました。
ペットとして飼育し始めたのは良いが飼い切れなくなって飼育放棄をしたり、手先が非常に器用なことからケージを開けることが出来る脱走の名人であることがその理由のようです。
しかし可愛らしい見た目からは、想像も出来ないほどの凶暴な一面を持つことには驚いてしまいますね。
日本各地では、アライグマによる様々な被害報告が寄せられていて今では駆除対象の害獣となってしまいました。
最も恐ろしいのが、様々な感染症保有のキャリア動物であることです。
日本では無くなったはずの狂犬病の恐ろしさも蘇る危険性すらあるのです。
もしアライグマを見かけても興味本位で近付くのはやめましょう。
ただ、アライグマは何も悪くないのです。
全て、人間の身勝手な行動から今のこの状況が起こっていることを忘れてはいけません。
一番の被害者はアライグマなのかも知れませんね。