デンキウナギをご存知でしょうか?
南米に生息する魚ですが、捕食や防御の手段として放電という最強の武器を有するのです。その電圧は最高で800Vと言うから驚いてしまいますね。
飼育されている水族館などに行くと、放電の数値を見ることも出来ますが絶えず微弱な電気を流しレーダーとして獲物を追っているというのです。
そしてレーダーで発見すると獲物を電気で仕留め食する…怖い気もしますが同時に興味も掻き立てられてしまいますよね。
また、そのウナギという名前から食べたらおいしそうという興味も湧いてきそうですね。「果たしてその味は?」
今回はそんなデンキウナギについて、生体から気になる放電の仕組み、天敵はいるのか?など詳しく解説してまいります。
目次
デンキウナギ
「デンキウナギ データ」
- 分 類 デンキウナギ目 デンキウナギ科(或いはギュムノートゥス科) デンキウナギ属
- 学 名 Electrophorus electricus
- 和 名 デンキウナギ (電気鰻)
- 英 名 Electric eel
- 体 長 250センチメートル程度
- 体 重 20キログラム以上
- 寿 命 15年程度
- 分布域 南米大陸北西部 アマゾン川、オリノコ川水系
- 生息環境 河川や沼など
デンキウナギの特徴
デンキウナギはデンキウナギ目の中では最大種となり体長は2.5メートル程度にも達します。体は細長く円筒形をしていて特徴としては頭部が横に平たく尾が縦に平たい形状になります。
体色は、表現が難しいのですが、灰褐色や暗褐色から黒色で白っぽい斑紋が散らばり、喉付近からおなかにかけてはその色が薄くなり黄色(オレンジ色)をしています。
目は非常に小さく退化をしているのでほとんど機能していませんが、側線で水流を感じ取り目の役割を果たしているようですね。
肛門がエラ蓋の下とかなり前方にあるのですが、実はこれ以降後ろ部分身体全体の8割は尻尾となるのです。ヒレは胸鰭と尻尾の尾鰭しかありませんが、この以上に発達した尾鰭を上手に使い泳ぐのです。実はこの尾鰭を使うことで、デンキウナギは後ろに泳ぐこともできる不思議な魚なんですね。
また、この体の8割を占める尻尾にもう一つ秘密があります。詳細は後述の発電の仕組み部でお話しますが、この体の8割を占める尻尾がデンキウナギ最大の特徴である電気を作る発電器官になるのです。
電気を放つ魚は何種類か存在しますが、その中でもこのデンキウナギのそのパワーは最強になります。
もう一つ珍しい特徴があり、それは魚なのにエラ呼吸が出来ないというものです。エラ自体は存在しますが、機能しておらず定期的に水面に顔を出し空気を取り入れないと死んでしまうのです。
尚、分類上のデンキウナギ属に属するのは、このデンキウナギのみ一種になります。
また少しややこしいのですが、名前に「ウナギ」と付いていますが、身体の構造や生活環境も含め種類的には「ウナギ」とは全く異なる種類に分類されます。
デンキウナギの生態
デンキウナギは、南米大陸北西部のアマゾン川、オリノコ川の比較的暖かい水域に生息しています。強力な電気を起こす大型魚で生息する水域では生態系の頂点に君臨する最強の捕食者の一つになります。
昼間は物陰にひっそりと潜み夜になると活発に動き出して、獲物となる小魚やカエルなどを捕食します。
つまりは夜行性で食性は動物食となる肉食性ということになりますね。
前述でエラ呼吸が出来ないという話をしましたが、実はこれ水の交換が起こらなかったり、高温になり酸素量が少なくなる熱帯水域で生きていくのに適応した凄い進化とも言えるかも知れません。
デンキウナギは放電することで獲物を捕食することは知られていますが、ものをとらえるだけでなく微弱な電流で獲物を探すレーダーとしての機能も電気にはあるようです。目が退化しているデンキウナギには非常に便利な機能なんですね。
多くの方が、「自分は電気で感電しないのか?」という疑問を持つようですが、自身もある程度の感電はあるようですが、体内の脂肪などにより微弱化させているようです。
またデンキウナギの寿命は15年程ですが、老いてくるとこの発電の衰えもあらわれるようですね。
放電と電圧の仕組み
デンキウナギは狩りと防御の時に電気を発することで知られていますが、その仕組みはどのようになっているのでしょうか?
通常動物の細胞内にはカリウムイオンが存在し、外側にはナトリウムイオンがそれぞれ多数存在しています。これは細胞膜が隔てていることでそのバランスを保つことが出来ているのですが、細胞膜の性質を変えることで外側にあるナトリウムイオンが細胞内に入り込むようになります。
こうなると細胞内にはカリウムイオンとナトリウムイオンが溜まることになります。それぞれプラスイオンが大量に溜まり電圧を生み出すことが出来るのです。
そしてデンキウナギ(他の電気を発する動物も形態は同じですが)は細胞が電気版として機能し直列繋ぎのように規則正しく並んでいます。
この機能は身体の8割となる尻尾部分全てがそうなっているのです。
数千個にもおよぶ発電版が並んだ発電器官からは最高電圧600Vから800V、1Aにも達する電流の電気を作り出すことが出来るのです。発電版1つでは至って微弱な電圧ですが、数千個も集まるのでこのような強力な電気を生み出せるのですね。
日本の一般家庭の電圧が100Vと考えれば相当のものというもの分かりますね。
因みに発電器官は頭側がプラス極、尻尾側がマイナス極(面白いことにデンキナマズは反対です)となります。
代表的な電気を起こす動物にはデンキウナギの他にデンキナマズとシビレエイがいますが、電圧はそれぞれ400から450V、70から80Vとデンキウナギが圧倒的に強力になります。
また、この強力な電気はほんの一瞬しか出すことが出来ないとされているのですが、1分以上発してワニを感電させた映像が流され物議を呼んでいますね。
この発電は、疲労時や高齢となった個体ではうまく出来なくなる場合もあるようです。
水族館などデンキウナギの飼育をしている施設では同時に電圧も分かるようにされてますのでその様子がよく分かりますよ。
真実と分かった「馬をも感電死させる自然界最強の一撃!」
デンキウナギの電気の凄さが伝わるお話があります。
200年ほど前に生物学者であるアレクサンダー・フォン・フンボルトが残した記録で「水中から飛び出して来たデンキウナギで馬が感電死した。」と言うものが存在していたのですが、同様の事例が見当たらないことからこれを疑問視する傾向が強かったのです。
しかし、アメリカの大学でこのアレクサンダー・フォン・フンボルトの記録を実証する実験が行われ、デンキウナギの攻撃は水中内では無く、飛び出して攻撃した時が最も強力になることが証明されたのです。
水中で発電しても水中に電気が分散され威力が弱まるが、水中から飛び出して相手に直接触れて攻撃すれば相手へのダメージは強力になること、そしてデンキウナギがその方法を巧みに使うことが実験で証明されたというのです。
これによって200年前のアレクサンダー・フォン・フンボルトの記録の信憑性が高まりました。
となると、馬を感電死させるデンキウナギ恐るべし!ですね。
デンキウナギ最強説と天敵
前述のように、馬をも感電死させることが出来るデンキウナギはもしかしたらある意味では最強となるのかも知れませんね。
しかし、実はデンキウナギの電気で人間が死亡したという例は正確な報告が見つかっていないほどで、あっても稀なのでしょう。受けた電気の影響で心不全などを引き起こす危険性は考えられますし、意識を失い溺死したというものの報告はあるようですね。
このデンキウナギは成長したら2.5メートルにもなるので人間よりも大きくなります。しかしながら外見とは異なり力が強いわけではありません。
従って水中に引きずり込まれたりヘビのように巻きつかれ絞殺されるようなことはないのです。
電気ショックの一撃で済むため、筋肉を使う必要が無かったのかも知れませんね。
これらから、デンキウナギはこの水域において生態系の頂点に君臨する一種ではあるものの、特に獰猛で見境なく襲ってくるというわけでは無いようです。
また天敵と呼べるものの存在も無いようですが、強烈な電気ショックも継続的な使用は出来ないようですので、疲れたり高齢になるなどした個体は他の肉食獣に襲われる可能性はあるようですね。
人間はデンキウナギを食用としている
前項で天敵と呼べるものはないと伝えましたが、強いてあげるとすれば人間は天敵となるかもしれません。
勿論、その人間も川を渡る際に間違ってデンキウナギを踏みつけ被害者となる場合も多々あるのですが…。
現地では、「デンキウナギを食べると長生き出来る」と食用ともされていているのです。その味はゼラチン質でナマズに近いとされていますが、決して美味しいものではないとする報告もあります。
人間がデンキウナギを捕まえるときは、前述のように刺激を与え放電をさせて疲れ切ったところを捕えるようですね。具体的には水面を棒で叩き驚かせて放電させるという手法のようです。
デンキナマズは別物
よくこのデンキウナギと間違えられるものにデンキナマズがあります。
デンキナマズはナマズ目デンキナマズ科デンキナマズ属で電気を発すると言う似たような機能を有しますが、全くの別の種類になります。
生息地もアフリカ大陸と異なります。
また発電は、前述のように400Vから450Vとデンキウナギほどではありませんがそれに次ぐ強さになります。
まとめ
今回デンキウナギについてご紹介をしてまいりました。
強力な電気を操ることが出来るという摩訶不思議な生物ですが、なかなか興味深いですね。
しかし、それは外国に生息する生物なので言えるのかもしれません。もしも身近な川にデンキウナギが生息していたとしたら安心して川で遊ぶなんてことは出来なくなってしまいます。
また、ウナギという名前から食することを考えますが、実際にはあまり美味しいというものではないようです。
「水族館などで飼育されているデンキウナギの怪しげな佇まいを眺める。」これがデンキウナギとの一番良い接触方法かもしれませんね。