殺人魚と呼ばれるカンディルという恐ろしい魚がアマゾンに生息しております。
アマゾン通、またはよほどの魚通の方でないと聞き覚えが無いかも知れませんね。
「アマゾン」「殺人魚」このキーワードからですと多くの方がピラニアを想像されると思いますが、現地ではこのカンディルこそが正真正銘の殺人魚として非常に恐れられているのです。
何といっても、体内に入り込み内部から獲物を食い尽くしていくと言うのですから穏やかではありませんよね。
実際にカンディルが引き起こした痛ましい事件も報じられています。
今回はこの、殺人魚カンディルについてその生態や危険性などご紹介して参ります。
目次
殺人魚「カンディル」とは。
カンディルは「ナマズ目」つまりナマズの仲間で、アマゾン川流域など南米地域に生息するナマズ目で肉食性の淡水魚の総称になります。
一般的には「ナマズ目トリコミュクテルス科」と「ナマズ目セトプシス科」に属する種がカンディルとされています。
トリコミュクテルス科
このトリコミュクテルス科には、「バンデッド・カンディル(学名:Pseudostegophilus nemurus)」が存在します。
体長は10センチメートル程度で、黄土色の身体に入る黒い縞模様が特徴的です。
こちらが魚の鰓や排泄孔などの穴から体内へと入り込み内側から獲物を食い尽くすタイプで、それに特化したように頭部が平たくなっています。
セトプシス科
こちらセトプシス科には、「バイオレット・カンディル(学名:Cetopsis coecutiens)」が存在します。
体長は20センチメートル程度とトリコミュクテルス科のバンデッド・カンディルと比べて大型種となります。
こちらは、鰓や排泄孔などの穴から体内に入り込むのではなく、表皮を食いやぶりそこから体内へと侵入をして行きます。その為頭部は平らでは無く丸みを帯びています。
カンディルの生態とその危険性
上述のようにカンディルは、種類によっても10センチメートル程度または20センチメートル程度という大きさの魚ですが、稀に30センチメートル程度にも成長する個体も見受けられます。
これら以外にも数種存在しますが、いずれも小型の魚の部類に属します。
こうして大きさだけで考えますと小さくて可愛らしい魚というような印象もありますが、非常に獰猛かつ旺盛な食性で現地で殺人魚として恐れられているのです。
基本的には、他の自分よりも大きな魚をターゲットに捕食する肉食魚ということになりますが、その捕食方法がとにかく特異なんです。
バンデッド・カンディルであれば魚の鰓や排泄孔などの穴という穴から、バイオレット・カンディルであれば所かまわず魚の体表を食い破りそこから、いずれも魚の体内へと入り込み内部から吸血や肉をむさぼり食い尽くすという驚くべき捕食方法なんです。
体内へ侵入する際は、ドリルのように回転しながら効率的に侵入するようです。しかも、群れで襲ってくる場合もあるので非常に恐ろしいですよね。
ただ、種によっては砂の中に潜む微生物を好んで食する種もあるようです。
人間も襲われる?
カンディルは基本的には、他の魚をターゲットにして捕食をしますが、これは同じ水中にいるということから必然的にそうなっているのであって、水中に入ればその牙は哺乳類にも向けられます。
勿論、そこには私達人間も含まれてしまうのです。
特に厄介なのは、カンディルがアンモニアに反応して攻撃を仕掛ける(ただし、これには懐疑的とする報告もあり)ことで、魚の鰓や排泄孔を狙うのはそこにあるアンモニア臭に反応するためとされています。
そうなると、私達人間も当然アンモニアを排泄しますので、特にデリケートゾーンを含む下半身が非常に危険でそこを中心に襲われてしまうことが多々あるのです。
しかもこのカンディルの鰭にはトゲのような返しがあり正に動物の体内へと入り込むための進化を遂げています。このため、一度体内に入り込まれると手で引き離そうにも引き離すことが出来ません。
取り除くには切開(手術)の必要性があります。仮に取り除くことが出来ても感染症などで命を落とす事例もあるようです。
これこそがピラニアや淡水エイなど危険生物が他種存在する現地で、カンディルが「殺人魚」として最も恐れられる理由なのですね。
正にカンディル恐るべし!です。
カンディルの危険な事件簿
前述のように現地の人々から殺人魚として恐れられているカンディルですが、実際に私達人間にもその被害が及んでいるのです。
ここではカンディルにより起きた事件として大きく報告されたものをご紹介しておきます。
勿論、これはほんの一例で、これ以外にも被害の大小の差はあれカンディルによる事件はたくさん起きていると思われます。
サントス号事件
報告によると…これは1981年にアマゾン川のオビドス港で実際に起こった事件です。
多くの旅行者をのせたソブラル・サントス号が運航中に故障を起こし、川の中へと沈み始めてしまいました。
勿論アマゾン川です。そこにはピラニアや淡水エイなど恐ろしい魚が生息しているのです。そして勿論、殺人魚カンディルも。
そのような事情は関係なくサントス号はどんどんと沈んでしまい、乗客は岸まで自力で泳がなくてはならなくなりました。
乗客のうち180人は無事岸までたどり着くことが出来たのですが、200人以上もの乗客がこのカンディルに襲われ尊い命を落としてしまったのです。
死者200人以上、これが殺人魚カンディルによる最も痛ましい事件!
正に殺人魚として一躍世に名を轟かせた事件となってしまいました。
死因はショック死と感染症
このサントス号事件で200名以上の方が犠牲となってしまいましたが、驚くべきことはその死因なんです。
犠牲者のほとんどが内臓を食い破られたことによるショック死、そしてなんとかその場は逃れたもののそれが原因となる感染症により無くなられたケースも多数あるようです。
また、一命はとりとめられたとしても一度体内への侵入を許してしまうと、切開による方法以外にカンディルを取り出すことが出来ないという恐ろしさも忘れてはなりません。
死因としては「あまりの激痛によるショック死」そして「感染症」がほとんどの様で、実際には小さいカンディルにより食い尽くされてしまうとか出血死という事例は確認されていないようです。
しかし、集団で一斉に襲われてしまえばその可能性は否定できませんし、あまりの激痛に耐え切れず自ら命を絶つということもあるようですね。
カンディル対策
日本にいれば自然下でこのカンディルに遭遇することは今のところ心配は無いようです。
飼育されている方もおり、逃げ出して野生化…と言う懸念もありますが、カンディルが日本では越冬出来ないとされていてその心配はないとのことです。
もし、温暖化がこれ以上に進めばこの見解も変わってくるかもしれませんが…。
しかし、現地アマゾン川周辺に旅行などで行く方もいらっしゃいますね。
現状ではこれと言った対応策はなく、自分で用心して守ることしかないようです。
特にアンモニアに敏感なので、川で用を足すなどの行為は絶対にしないことですね。
現地では、カンディル対策として陶器で作られた下着などもあるようですよ。
実はあの下着も
さらに、これはカンディル対策としての優れた発明なのかもしれません。
今では愛用者も多いT-バック下着、実はこれもともとはカンディル対策として作られたようなんです。
その昔カンディルに困り果てていた住民が、防止策として今で言うふんどしのようなものを身に着けたのです。
これが「タンガ」の原型となります。
そして1970年代、時代を超えてタンガはT-バック下着として流行し始めたのです。
これは唯一のカンディルの恩恵かも知れませんね。
まとめ
今回、アマゾン川に生息する殺人魚「カンディル」についてご紹介をしてまいりました。
その生態から非常に危険な魚だということが改めて思い知らされた気がしますね。
このカンディルが生息する川ではうかつに川遊びや釣りなども楽しめませんね。
「誰ですか?一度見てみたい!」なんて言う方は?
そのような場合には、カンディルを飼育する水族館が日本にもあるので、そこで楽しんでみてください。
捕食の実演をしているところもあるようですよ!
しかし、間違っても興味本位の飼育は控えてくださいね。