「キタマクラ」という魚は皮膚毒を持つため素手で触ると危険と言われています。「北枕」をイメージさせる不吉な名前を持つ魚の生態と毒の症状についてご紹介していきます。
目次
キタマクラ(魚)の生態
出典画像:ガイド会・世界の海ブログ
- 学名:Canthigaster
- 分類:フグ目フグ科キタマクラ属
- 分布:太平洋〜西太平洋岸
- 体長:7cm~15cm
キタマクラは日本の近海で比較的よく見られる魚で、温帯性の魚です。
外見は平べったく、口が小さく固い歯を持ちます。
体の色は茶褐色や灰褐色をしており、2本の暗色縦帯が頭から尾にかけて見られます。
また、その外見から釣り人に人気の「カワハギ」と間違えられることもあります。
釣り上げると体を膨らませて威嚇してくルところがカワハギとは異なりますが、カワハギだと誤って食べてしまうのは大変危険です。キタマクラはフグの一種なので、体内には猛毒テトロドドキシンがあります。
性格的には好奇心旺盛・食欲旺盛なので、ダイバーに寄ってきたり、釣り人からは「餌取り」として嫌われています。
キタマクラの飼育方法
キタマクラを飼育することは可能なのでしょうか。
キタマクラは温帯性海域にすむ近海魚なので、水温は22~26度程度必要です。
また、水深30mほどの岩礁から水深100mほどの深さの海でも泳いでいるので、砂やブロックなどを置いたシンプルな水槽で大丈夫です。
餌は海水魚用の餌で十分で、生き餌を与える場合は細かく切って与えると水槽を汚しません。
キタマクラが持つ皮膚毒とは!?
海釣りで釣り具ショップや堤防に行くと稀に「キタマクラを食べないで!死亡します!他の魚と一緒にクーラーボックスに入れないで!」という注意喚起のポスターが貼られていることがあります。
この章では注意喚起のポスターにある「食べてはいけない」、「他の魚と一緒にしてはいけない」理由についてご紹介していきます。
キタマクラの名前の由来
そもそもキタマクラと呼ばれる理由ですが、文字通り「北枕(きたまくら)」に由来しています。北枕は亡くなった人を寝かせる際に頭を北に向けることを指します。
キタマクラはその猛毒から、「キタマクラを食べると北枕に寝かされて死ぬ」というところからその名がついたと言われています。
ではその毒とはどのような毒なのでしょうか。
毒の成分と症状
キタマクラが体内に持つ毒は、フグ毒と同じ神経毒のテトロドドキシンです。
テトロドドキシンは青酸カリの850倍の毒性があり、ヒトは1~2mgの摂取で死に至ります。
症状は全身の痺れや呼吸器系に麻痺が起こり呼吸困難に陥ります。また、特効薬がないため、体内に入ってしまった場合は胃洗浄などで体外に出す方法しかありません。
なので、釣ってもまず食べれないのですし、餌取りとしても知られているため、釣り人からは忌み嫌われているのです。
素手で触ると危険!?
キタマクラの毒は一般的なフグのように身や卵巣・精巣に毒はありません。
ただしキタマクラは肝臓と腸、皮膚に毒があります。特に皮膚から分泌される粘液に毒素が入っているので、素手で触るのは避けましょう。
また、釣った魚と一緒に入れてしまうと、他の魚に粘液がついてしまい、毒が思わぬ形で体内に入ってしまうので厳禁です。
以上のことからキタマクラを食べてはいけないですし、素手で触ったり、他の魚と一緒にクーラーボックスに入れてはいけないのです。
キタマクラの刺身は美味!
キタマクラはフグの一種ということで、猛毒テトロドドキシンを持っています。ただ、フグ同様に食べることは可能です。この章ではキタマクラの食用の可能性についてご紹介していきます。
キタマクラが食べられてこなかった理由
キタマクラが食べられてこなかった理由としては、他のフグと同様に猛毒を持っていることが大きいです。
ただし、きちんとフグ調理の資格を持った人に解体してもらえば食べることができます。
しかし、キタマクラは前述のように小さい魚なので、解体し、安全な部分のみになると食べるところがごくわずかになってしますのです。労力と危険性の割に食べるところが少ないので、あまり食べられてこなかったと言えます。
そしてその身はあまり美味しくないというのも、嫌厭される理由でもあります。刺身にするとうまいという話もありますが、フグと同じようにフライにしたり鍋にしてもその身は美味しくないということで、食用には向かないのです。
猛毒・調理の手間・食べられる部分の少なさ・味の悪さ、これらがキタマクラが食べられてこなかった理由なのです。
キタマクラのまとめ
「キタマクラを食べないで!死亡します!他の魚と一緒にクーラーボックスに入れないで!」というポスターはキタマクラの性質と危険性をよく表していました。
釣りに出かけた際、カワハギに似た魚が釣れて、その魚が威嚇して膨らむようなら、すぐに海にリリースしましょう。
カワハギが釣れると釣り人としての腕が認められると言われています。「カワハギ似ているけどどこか違う」と違和感を覚えたら要注意です。