黒豹はヒョウの突然変異?かっこいい黒変種(メラニズム)

危険な哺乳類

近年、イギリスでは闇夜に黄色く光る二つの目を見たという報告が多数寄せられています。その正体は黒豹です。

イギリスでは黒豹の目撃情報があとを絶たず、一刻も早い解決が待たれています。

ところで、黒豹とは生物学的に分類すると、普通のヒョウと変わらないのです。今回は黒豹(クロヒョウ)が生まれてくるメカニズムや、他にも体色が黒かったり白かったりという突然変異についてご紹介していきます。


黒豹(クロヒョウ)の基本情報

世界にはいろいろな体の色や模様の動物がいます。

ヤドクガエルは多様なビビッドカラーに黒い斑点がランダムに入って、個体ごとにバラエティに富んだ体色をしています。派手な体色は、自身の持つ強烈な猛毒と認識の中でリンクされ、「こんな色のものを食べたりちょっかいを出したりすると危険だ」という共通認識を生態系の中に刻むことができています。

また、キリンの網目模様やシマウマの縞模様、チーターやジャガーの斑点模様は木々や背の高い草に体を紛れ込ませるためのカモフラージュ色もあります。

ですが、世界には「これは目立ってしまうでしょ」という体色があります。

森の中、草原の木の上に暗闇のように真っ黒な体をして、その色と対をなすかのような黄色い目を持つ動物がいます。

それが黒豹(クロヒョウ)です。草原でも目立ち、森の中でも浮いてしまいます。唯一溶け込めるのは夜の暗闇だけです。

黒豹(クロヒョウ)とは何者なのか。実は、黒豹(クロヒョウ)は黒い種類のヒョウではなく、普通のヒョウの間に生まれる黒変種(メラニズム)という突然変異種なのです。

黒豹の写真

出典画像:Wikipedia

  • 学名:Panthera pardus
  • 分類:食肉目ネコ科ヒョウ属
  • 分布:アフリカ大陸〜東南アジア、極東ロシア
  • 体長:100~150cm
  • 体重:30~90kg

かっこいい黒豹は突然変異種!?

黒豹(クロヒョウ)の学術的な分類は、普通のヒョウと同じなのです。

つまり、黒豹という種類のヒョウは存在せず、普通の体色の両親の間に生まれてきます。

したがって、黒豹は「突然変異種」です。特に黒豹のように体色が真っ黒になる突然変異のことを「黒変種(メラニズム)」と言います。

この黒変種(メラニズム)が発生するには条件があります。その条件とは、両親がそれぞれ「クロヒョウになる遺伝子」を持っていなくてはなりません。

この「クロヒョウになる遺伝子」はどのヒョウも持っているわけではありません。

生物が子を成し、その子が成長しさらにその子を成す、この過程で子の両親となるものの遺伝子の特徴を、半分ずつ受け継ぎます。ただし、その遺伝的特徴の中で受け継がれにくい特徴というものがあり、これを「劣性遺伝子」といいます。反対にこの劣性遺伝子を打ち消してしまうものが優性遺伝子といいます。

繁殖を繰り返すたびに劣性遺伝子は姿を消していくので、劣性遺伝子が外見に姿を表した黒豹は、両親ともに黒豹の遺伝子を持っている、もしくは黒豹でないと生まれてきません。

そして、黒豹のように体表のメラニン色素の量が通常よりもかなり多いものが「黒変種(メラニズム)」なのです。

つまり、遺伝子のなかで「受け継がれにくい」「表面化しにくい」という劣性遺伝子がものすごく低確率の中で姿を現したのが「黒豹」なのです。


黒豹やホワイトライオンが産まれてくるワケ

黒豹が自然界でかなり珍しいのは前述した通りですが、遺伝子のなかに黒くなる遺伝子を持っていれば黒に、逆に白くなる遺伝子を持っていれば白くもなります。

この章では黒くなったり白くなったりする動物の体色のメカニズムについてご紹介します。

黒変種(メラニズム)とは

遺伝子の中には体の色を黒くするのか白くするのかを調節する遺伝子があります。

人間でも「色黒だねー」なんて言われる人がいますが、「黒変種(メラニズム)」とは体色を決める要素のなかの「黒要素」であるメラニンの量が異常に多いので、真っ黒になります。

ここで誤解してはならないのが、体色が黒くなるだけなので、ヒョウの特徴ともいえるヒョウ柄はなくならないのです。

実際に赤外線を当てることで、特徴的な斑点模様が浮き上がってきます。

「黒変種(メラニズム)」とは、体色が黒くなるだけで、模様までは変わらないのです。

白変種(リューシズム)とは

白変種のトラの写真出典画像:Wikipedia

「黒くなる突然変異」があれば、「白くなる突然変異」もあります。

この後者の方を「白変種(リューシズム)」と呼びます。この「白変種(リューシズム)」は色素の数が通常よりもかなり少なくなってしまう突然変異を指します。

この「白変種(リューシズム)」のメカニズムも「黒変種(メラニズム)」と似ており、遺伝子の中に組み込まれている要素であり、生物の設計図のなかに「白くなること」が意図されているのです。

その背景としては、地球の長い歴史の中で幾度も繰り返された氷河期において、「白くなること」で雪原に溶け込むことができ、「狩が成功しやすくなる」「敵に見つかりにくくなる」などのメリットがありました。

つまり「白くなることが生存戦略的に有利だった」という記憶が遺伝子の中に残されており、それが姿を現したものが「白変種(リューシズム)」と言えます。

よって、「白変種(リューシズム)」は色素の数が少ないという突然変異なのです。

ホワイトライオンはアルビノではない?白変種との違い?

出典画像:Wikipedia

白い動物のことを「アルビノ」と呼ぶことがあります。

ここで押さえておきたいことは、「アルビノと白変種や黒変種とは大きな違いがある」ということです。

白変種や黒変種は色素が少なかったり、メラニン色素が多かったりの差で体色が白くなったり黒くなったりします。

ところが、「アルビノ」は「メラニンを生成する遺伝子機能が欠損している遺伝子的疾患」を指します。

つまり、アルビノにはメラニンがそもそも存在せず、白変種や黒変種にはメラニンがあります。

その証拠に、アルビノと白変種の見分け方は瞳孔が黒いかどうかです。

白変種にはメラニンがあるので、瞳孔が黒く、アルビノはメラニンがないので、皮膚下の毛細血管が助けてしまい、赤く見えるのです。

仮に白いライオンがいた場合、目が黒いものが白変種のホワイトライオンであり、目が赤い場合はアルビノのライオンになるのです。

アルビノのハツカネズミの写真出典画像:Wikipedia

黒豹(クロヒョウ)と突然変異についてのまとめ

黒豹は個別の種類ではなく、遺伝子の中に残されたメラニンが多くなる劣性遺伝子が外見として現れた「黒変種」でした。

同様に色素の数が少なくなれば「白変種」となります。

これらの特徴から「黒変種」も「白変種」も色素やメラニンがあるという点では共通しており、その点でメラニンが欠如している「アルビノ」とは区別されるのです。

黒や白という動物は生まれてくる確率が非常に低く、「神聖な生き物」「災いの元凶」などど言われてきました。

その正体は遺伝子や地球の歴史に関係があったのでした。

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