今回ご紹介するのは「ミズクラゲ」になります。
ミズクラゲは、世界中の海に生息しているメジャーなクラゲです。
日本においても頻繁に大量発生して問題になるなど、最も一般的に見ることが出来る非常にポピュラーなクラゲです。
以前は、クラゲと言うと海で人を刺す厄介者と言うイメージが強かったですが、昨今のクラゲブームではこのクラゲが癒しの対象となるのですから不思議ですよね。
このミズクラゲも、ご多分に漏れず毒針を持つ毒性クラゲの一種になるのです。
今回は、このミズクラゲの特徴から、触ることの危険性に刺された時の症状・対処法などをご紹介いたします。
ミズクラゲ
「ミズクラゲ 基本 データ」
- 分 類 鉢虫綱 旗口クラゲ目(ミズクラゲ目) ミズクラゲ科 ミズクラゲ属
- 学 名 Aurelia sp
- 和 名 ミズクラゲ(水海月)、ヨツメクラゲ
- 英 名 Moon Jelly、Water Jelly
- 体 長 15から30センチメートル程度(傘の直径)
- 分 布 世界各地の海(北緯70度から南緯40度くらいまで)
ミズクラゲの特徴
ミズクラゲは、北緯70度から南緯40度くらいまでの世界中の海に生息するクラゲです。
水温では、マイナス6度から30度程度までならば生息可能なようですが、多くは9度から19度程度の海水温となる海域に分布しています。
日本においても、最も頻繁に目撃する非常にメジャーなクラゲの一つになります。
ミズクラゲは、体の表面に4つの模様が入りその見た目から「ヨツメクラゲ」とも呼ばれています。
因みに、この4つの模様とは、生殖腺に囲まれた胃腔になります。
ミズクラゲは雌雄異体となり、生殖巣の色で(雄は白っぽく、雌は茶色っぽい)雌雄の判別が可能になるのです。
食性は、主にプランクトン(動物性)食ですが、小魚などを食することもあります。
遊泳能力は、クラゲの仲間の中でも非常に乏しいもので、泳ぐと言うよりは水中をただ漂っているという感じがしますね。
傘の開閉をこの餌の捕食時と遊泳時に行いますが、実はこの傘の開閉は、捕食と遊泳以外にも非常に大きな役割を担っているのです。
ミズクラゲの傘の開閉は心臓の代わり!
実は、ミズクラゲには心臓がありません。
この心臓の代わりを行っているのが、傘の開閉運動なのです。
これにより、必要な栄養素などを身体中に循環させているのです。
傘の開閉運動は、捕食と遊泳と言う目的以外にもミズクラゲの生命を維持すると言う、非常に重要な役割を担っているのですね。
ミズクラゲによる被害
さて、このミズクラゲですが、私達の生活において様々な弊害をもたらすことでも知られています。
毒性のある毒針に刺されるというクラゲ特有の被害は勿論なのですが、それ以外にもミズクラゲの大量発生によって次のような被害が報告されています。
尚、ミズクラゲの毒性などについては次項で詳しくご紹介いたします。
【ミズクラゲの大量発生による被害】
- 漁への被害
大量発生したミズクラゲが、漁の網の中に入り込んでしまうことがあります。
これにより網を破壊してしまったり、捕まえた魚がミズクラゲに刺され商品価値がなくなってしまうなどの被害が起こっています。
勿論、ミズクラゲの除去による作業効率の低下も漁師さんを悩ませています。
- 発電所の被害
また、ミズクラゲの大量発生はライフラインとなる電気にも深刻な影響を与えることがあります。
全国にある発電所の取水口に、大量発生したミズクラゲが押し寄せて詰まらせてしまい発電を低下又は停止させるという被害もあるようです。
ミズクラゲの毒性と症状
ミズクラゲの毒性についてですが、実はミズクラゲの毒性は他のクラゲと比べると非常に弱いとされています。
ザリガニにおける実験によれば、ミズクラゲの毒性は猛毒とされるハブクラゲの4分の一程度と言う数値が試算されているのです。
なお、このミズクラゲの持つ毒性物質の主成分は酸性タンパク質(分子量43000)とされています。
実際にミズクラゲの持つ刺胞(毒針)で刺されてしまっても、気付かないことが多いようですし、痛みを感じることはほとんどありません。
しかし、刺された箇所が角質の薄い皮膚部分(顔など)であった場合には、個人差はありますが痛みを伴うこともあるようです。
また、皮膚が弱い方や子供の場合には、刺される部位にこだわらず気を付ける必要がありそうです。
あらわれる症状としては、かゆみに腫れ、水膨れなどがまれに起こることもあります。
また、ピリピリとした痛みが暫く続くようです。
健康体の大人の場合であれば、必要以上にミズクラゲを恐れる必要はありませんが、わざわざ近づいたり触ったりするなどの行為はしない方が身の為ですね。
実は、ミズクラゲの毒性は危険性が低いとは言え、何度も刺されてしまうと、アナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー反応を起こす危険性もあるので注意をしなくてはなりません。
ミズクラゲに遭遇しないためには、海水浴などの場合には極力肌の露出は少なくして、クラゲネットの整備されている海水浴場で楽しむことをおすすめします。
ミズクラゲに刺された時の対処法
前述のように、ミズクラゲに刺されたとしても大事に至ると言うことはあまりありません。
しかし、それでも念の為にもしもミズクラゲに刺されてしまった場合の対処法をご紹介しておきましょう。
- もしも刺されてしまったら、なるべく急いで海から出ます。
続けざまに刺されてしまう危険性の回避と、アナフィラキシーショックなどにより呼吸困難や意識を失うなど海の中での二次被害を防止する必要があります。
- 海から出たら、患部を擦らずに海水で綺麗に洗い流します。
患部を擦ると毒が広がる危険性がありますので、擦ってはいけません。そのまま海水で洗い流します。
刺胞細胞がくっついている場合もありますので、綺麗に洗い流してください。
この場合に、真水の使用はいけません。塩分濃度が異なる真水を使うと、刺胞細胞に浸透圧が加わり被害拡大の懸念があります。
お酢やアルコール、アンモニアなどが良いという説もあるのですが、場合によっては刺激を与えかねません。
洗い流すという点においては、海水の使用が得策になります。
- 腫れなどがある場合には患部を冷やす。
患部が腫れているような場合には、炎症を起こしている部分を冷やすことで痛みやかゆみなどを軽減させることが出来ます。
それでも、痛みやかゆみなどの症状が治まらない場合には、抗ヒスタミン成分やステロイド成分が配合されている薬を塗り治療します。
- それでも治らない場合や重篤な症状が起こった場合には、すぐに病院に行きます。
ミズクラゲの場合には、上述の対処法で治めることが出来るのですが、それでも治らない場合にはすぐに病院に行き受診してください。
また、急に鼻水やくしゃみが止まらなくなったり、ジンマシンや呼吸困難などの症状があらわれた場合にも同様です。
アナフィラキシーショックの危険性もありますので、迷わずにすぐに病院に行ってください。
まとめ
今回、ミズクラゲについて、そして刺された場合の症状に対処法などをご紹介いたしました。
近年のクラゲブームで、これまでの海の厄介者のイメージから、癒し効果のある生き物として愛される一面もあるクラゲです。
最近では、クラゲをペットとして飼育する人も多いようですね。
これまでのクラゲの価値観からすれば、それは非常に嬉しいことでもあります。
しかし、仮に海で刺されてしまった場合には、いくら少ないとは言え大事に至ってしまう危険性がない分けではありません。
愛らしい鑑賞用生物の一面と危険生物の一面、ミズクラゲはこの両方を併せ持つ不思議な生き物と言うことはお忘れなく!