オニカマスという魚をご存知でしょうか?「カマスという名前には聞き覚えがあるけども、オニカマスは・・。」と言う方が多いのかも知れませんね。しかし英名のバラクーダではどうでしょう?そう聞くと「ああ!聞いたことある!」となるのでは無いでしょうか。
そうなんです。実はこのオニカマスと言うのは一般的にはバラクーダの名前で知られているのです。しかも、釣り愛好家の間ではとても人気の魚なんです。
しかし、そんな表立ったこととは反対にとても恐れられている危険な魚でもあるのです。その体内には毒を保有するので食べることは出来ませんし、このオニカマスに人が襲われるという悲惨な事故も起きています。
その様はあたかも「生きる魚雷」とも称されるようですね。
さて、この一部では人気がある一方とても恐れられているというオニカマスとは一体どのような魚なのでしょうか?
オニカマス(バラクーダ)
「オニカマス(バラクーダ)データ」
分 類 スズキ目 カマス科 カマス属
学 名 Sphyraena barracuda
和 名 オニカマス(鬼叺)
英 名 Great barracuda
体 長 150から180センチメートル程度
体 重 10から15キログラム程度
分布域 南日本、東部を除く太平洋、インド洋、大西洋の熱帯域
生息環境 内湾、サンゴ礁域
形態と特徴
体長は150センチメートルを超しカマス種の中では最大の大きさを誇ります。また特徴的なのが大きな口と鋭い歯を持つことにあります。体形は他のカマス同様に細長く速く泳ぐのに適しています。通常ではゆっくりとした動きで水中内を泳ぎますが、最高速度は時速60キロ程度(100キロ超との説もあり)にもなるようです。
行動は単独でいる姿をよくサンゴ礁付近で目撃されていますが、群れを作って行動することもあるようです。
気性がとても荒く獰猛で、人間にも襲い掛かってくることがあるようです。海外ではこのオニカマスによる負傷者が出たとの被害報告も多々あります。また、環境により異なるようですが体内には麻痺症状を起こさせる毒性(シガテラ毒)を有することから、今では食されることは無いようですね。
この有毒性は熱帯域に住むものに多いようです、日本では以前は食されていましたが、1949年に東京で起きた集団食中毒以降多くの中毒患者が現れていて今では原則として食用としては扱われていません。
食性は肉食で獰猛なハンターとして知られています。幼魚の時には、小魚や甲殻類を捕食しますが成魚になるとかなり大きな魚をもその捕食対象とするようです。スズキ、アジ、フグ、イサキなどの種多種類がオニカマスの餌となります。前述の人を襲う例は、捕食対象なのかは定かではありませんが、かなり危険な魚と考えられます。
オニカマスの毒性
獰猛な性格と共に恐れられるのが、熱帯地域に生息するものに多くある体内に有する毒性です。この毒性はシガテラ毒という神経毒で吐き気や下痢、めまい、麻痺症状などの中毒症にかかってしまいます。
このシガテラ毒は厄介な事に加熱処理をしてもその毒性が消えることがないので、調理をしても食べられないのです。
このシガテラ毒による死亡事故の報告は無いようですが、それでも重篤な症状となる危険性があるので食するのは控えた方が賢明ですね。
毒の生産は食物連鎖から起因
なぜ、オニカマスはこのような毒を有するようになったのでしょうか?
これは地域によって毒の有無や毒性の強弱が異なることからも分かるように、もともとオニカマスが有するものでは無いのです。
実はこの毒性はサンゴ礁などに生息するも類やプランクトンが生成し、それらを小魚が食しそれらをこのオニカマスが食するという食物連鎖から起こっていることのようです。
これはフグなどの毒を有する魚も同様で食物連鎖の頂点に立つ、オニカマスにはその毒が最強になって現れたという図式なのです。
人間にも襲い掛かる獰猛なオニカマス「生きる魚雷」の恐怖
前述のようにオニカマスはとても獰猛な性格と、それに見合う大きな口と鋭い歯を所有しております。ある意味では保有する毒性よりもこちらの方が能動的な分、恐ろしいのかも知れませんね。
このオニカマスの恐怖は時として私達人間にも向けられることがあるのです。これらは、ニュースとしても大きく取り上げられているので良くご存知の方もいるかも知れませんね。
その様は「生きる魚雷」とも形容されるほどに凄まじく、実際に地域によってはあの獰猛なサメ以上に恐れられているのです。
ただ、このオニカマスが何故人を襲うのか、餌として狙うのか、光物に反応するなど様々な推測がされていますが、実際のところのその真相解明には至っていません。
オニカマスに人間が襲われる事故
アメリカでは、このオニカマスによる人間に対する襲撃事故は30件を超す程の報告があるようです。しかもそれらは海に潜るダイバーに限らず船上や浅瀬に立っている人間も標的になるというから恐ろしいものです。
そんな中でも。フロリダでボートに乗っていた少女の腕に水面からいきなり現れたオニカマスが噛みつくという事故がありました。
この時は、同乗していた父親がナイフをオニカマスの頭部に突き刺し何とか引きはがすことに成功したものの、少女の腕にはオニカマスの歯による無数の穴が開き、51針を縫う大怪我を負ってしまったのです。
このように水中にいなければ安全と言うことは無いようで、いつ襲われるか分からないというのも恐怖を引き立たせてしまいますね。
釣り人には人気のオニカマス
毒があって食べることが出来ない、また人をも襲う危険性などなにかと厄介者扱いされてしまうオニカマスですが、実は釣り人の間では大人気なんです。
ルアーを使ってのオニカマスとの駆け引きやそのかかった時の引きの強さなど、大物釣りを楽しむ愛好家の間ではとても人気で、2メートルを超す大物を釣り上げた記録もあるようです。
日本でも沖縄などでは、このオニカマス釣りが盛んに行われているみたいです。
まとめ
今回は、毒を保有しその獰猛な性質から人をも襲う「生きる魚雷」オニカマスについてご紹介をいたしました。
カマスという身近な魚の近種にこのような恐ろしい魚が存在するというのも驚きです。
しかしながら釣り人達の間では非常に人気のある魚と言うのも何とも不思議なものですね。
確かに、「生きる魚雷」とも称されるほどに大きい体でスピーディに動くその様は、釣り人でなくても一度は見てみたい気もしますね。
しかし、くれぐれも見るだけにしておきましょう。間違っても食べたりはしないように気を付けてくださいね。