「綺麗な花には毒がある」というように世界には綺麗な見た目をした有毒生物が多数存在します。
アオミノウミウシもその一種であり、普段は暖かい海の外洋を生息地としていますが、有毒生物を食べ、その毒を自らのものにする恐ろしき能力を持っています。
この記事ではその危険性について、その飼育の可能性についてご紹介していこうと思います。
目次
アオミノウミウシの生態と日本の生息地
出典画像:Wikipedia
- 学名:Glaucus atlanticus
- 分類:裸鰓目アオミノウミウシ科アオミノウミウシ属
- 分布:熱帯・温帯の海、南西諸島、小笠原諸島
- 体長:2~5cm
アオミノウミウシはその見た目から様々な呼び名があります。
翼を広ているように見えることから「ウミツバメ」と呼ばれていたり、その青く美しい見た目とミステリアスさから「青い天使」や「青い竜」とも呼ばれていたりします。
おもに暖かい海に生息し、沖合を漂っているため、沿岸付近では見れることはありませんが、時折、潮の流れで沿岸部に漂着することがあります。
アオミノウミウシは浮き袋のように自分の胃袋に空気を溜め込み、その浮力で水面付近に浮いています。そして自身の体をくねらせながら泳ぎます。
また、外洋を漂って生活しているため、子孫を残せるかどうかはアオミノウミウシにとっては重大問題です。
なので、アオミノウミウシは確実に子孫を残せるようにオスとメスが一体の中に共存している「雌雄同体」であり、産卵期には約3000個の卵を放出します。
アオミノウミウシの恐ろしき捕食対象とは
アオミノウミウシはファンタジーな別名がつけられるほど、見た目が美しく、水面を漂う姿はまるで天使です。
ところが、日本の水族館でこの青い天使がとんでもないものを捕食している様子が撮影されました。
水族館で激撮!アオミノウミウシが有毒生物を食べる!?
2012年、日本の江ノ島水族館がとある映像を公開しました。
それはアオミノウミウシがギンカクラゲという有毒性のクラゲに取付き食べている映像です。
実はアオミノウミウシはギンカクラゲをはじめとして、海水浴シーズンによく話題になる毒クラゲ「カツオノエボシ」や「カツオノカンムリ」を鉱物として食べてしまうのです。
多くのウミウシがサンゴや階層に付着して一生を送りますが、アオミノウミウシは自分の消化管、胃袋に空気を入れ海面付近漂っています。
それは海面付近にる毒クラゲを捕食し、そして移動手段にするためと言われています。
さらに、このアオミノウミウシには毒クラゲたちの毒針が一切効かないのです。カツオノエボシやギンカクラゲなどは、刺されると電気ショックのような強い痛みが走り、複数回にわたって刺されると最悪の場合、アナフィラキシーショックで死に至ります。
海水浴シーズンによく遊泳客が刺されてしまう事案がよく見かけられます。
美しい見た目に反して、食べるものはかなり変わっているアオミノウミウシですが、毒クラゲを単なる捕食対象としているだけではなく、自らの武器として使ってしまいます。
アオミノウミウシは他人の毒を利用する!?
毒クラゲの毒はアオミノウミウシには通用しません。それどころか、アオミノウミウシは毒クラゲたちの毒を自らの武器として利用します。この特性を「盗刺胞」と言います。
毒クラゲたちはその恐るべき毒を体表付近の「刺胞」という粒の中にある針に溜め込んでいます。
アオミノウミウシは毒クラゲを捕食する際に、この刺胞を体内に取り込み、そして、自らが襲われたときに、その刺胞を使って相手を攻撃します。
これが「盗刺胞」です。つまり、アオミノウミウシの隠し持つ刺胞はカツオノエボシなどの毒クラゲなので、危険性は同じぐらいと考えてよいでしょう。
綺麗な見た目のため、海で見かけたら触ってしまいそうですが、避けたほうがよさそうです。
実際、2017年オーストラリアで、熱波によってクイーズランド州沿岸部でアオミノウミウシが大量発生し、接触してしまったサーファー63名が刺胞に刺され、毒の被害にあったという事案がありました。
アオミノウミウシの飼育は餌が危ない!?
アオミノウミウシと海で会うのは危険。それならば家で水槽の外から観察すれば、毒の危険性はなく、綺麗な見た目を眺めることができるのではないか。
果たしてアオミノウミウシは飼育できるのか。答えは「飼育できるが現実的ではない」ということです。
問題は餌なのです。前述の通り、アオミノウミウシの主食はカツオノエボシなどのドククラゲです。
家庭で毒クラゲを餌として与える際、そのドククラゲが危険ですし、安定的に餌として確保すること自体が困難です。
アオミノウミウシは水族館で眺めたほうがよさそうですね。
アオミノウミウシのまとめ
美しく、水面を漂う様子は天使のように愛くるしいアオミノウミウシですが、実態は毒クラゲを捕食しその毒使って攻撃するという、恐るべき性質を持っていました。
台風の季節や潮の流れが変わりやすい時期に海水浴に行く際は、波打ち際を漂う青い天使にご注意ください。