今回ご紹介いたします危険な動物は「アフリカスイギュウ」になります。
「え?あのよくライオンに襲われているあのスイギュウ?」という素朴な疑問も聞こえてきそうですが、実はこのアフリカスイギュウは驚くべき強さと危険性を併せ持っているのです。
実際に、アフリカスイギュウを前にすればライオンの方が逃げ出すこともあり、1対1の戦いになればライオンよりもはるかに強いのです。
現地ではこのアフリカスイギュウによって命を落とす方も多く、「黒い死神」と非常に恐れられています。
このアフリカスイギュウの持つ強さの秘密や危険性、その生態とは如何なるものなのでしょうか。
目次
アフリカスイギュウ
「アフリカスイギュウ データ」
- 分 類 偶蹄目 ウシ科 アフリカスイギュウ属
- 学 名 Syncerus caffer
- 和 名 アフリカイギュウ
- 英 名 African Buffalo
- 体 長 170から340センチメートル程度
- 体 重 300から1000キログラム程度
- 尾 長 75から110センチメートル程度
- 寿 命 野生下で16から18年程度 飼育下では25年以上という記録もある
- 分布域 アフリカ南部(サハラ砂漠以南)
- 生息環境 草原や森林地帯など
アフリカスイギュウの特徴
「サバンナの雄」とも称されるアフリカスイギュウは、ウシ科の中では最大級とされる種で雄の成獣であれば、その体長は優に3メートルを超えるのです。
雌雄で体格には大きな違いがり、雄は雌の倍程度の大きさになります。
後述しますが、生息地などで幾つかの種が存在し、身体の大きさに違いがあります。
草原で生息する種(ケープバッファロー)の方が大きく、森林で生息する種(シンリンバッファロー)の方が小型化するようですね。
その全身は、黒又は褐色の毛に覆われ体形はがっしりとしています。
頭部には湾曲した1メートルに達する太く立派な角を持ちます。この角の根元基部は左右が接し頭頂部を覆うように生えているのが特徴的です。
力は非常に強く、ライオンに襲われた際にこの角を使ってライオンを宙に舞い上げるような動画をご覧になったかも多いのではないでしょうか。
これに加え、身体能力も非常に高く走る速度は時速57キロとされます。これだけの巨体がこのスピードで突進して来るのですから対峙した相手はたまったもんじゃありませんね。
また、気性が荒いのもアフリカスイギュウの特徴で、その為近種のアジアバッファローのように家畜として飼育することは不可能ともされています。
アフリカスイギュウの生態
アフリカスイギュウはサハラ砂漠以南のアフリカ大陸に広く分布しています。
生息環境としては、サバンナなどの草原や湿地帯、森林地帯になりますが、他にも高地の草原や森林にも生息し中には標高3000から4000メートル程度のところで目撃されるものもあるようです。
生活は他のウシ科の動物と同様に、100頭以上からなる群れを形成して行われます。その数は、時には1000頭以上にもなるようですが、このように大所帯になるのは平原で暮らす種に限り、森林地帯で暮らす種の群れは小規模で十数頭とされています。
この群れは年配の雄がリーダーとなり率いています。
乾季になると雌と子供からなる小規模グループに分かれることもあるようですし、成長した雄だけのグループなども見受けられます。
年を重ねた雄は単独行動をとることもあるようで、この単独行動の雄は非常に気性が荒くなり危険とされています。
食性は、草食性で早朝や日が暮れる頃に採食を行います。日中は泥浴びや日陰などで休むことが多く、夜間は食べた食物の反芻をしています。
その行動範囲は、水場から10キロ以内に限られているようです。
繁殖期という決まったものは見られませんが、たいていの場合雨季の間に交配は行われます。妊娠の期間は300から340日と長めで1回の出産で1頭の子牛を産みます。
性成熟は雌で4年程度、雄はもう少しかかるようです。
実は2種に分類される?
アフリカスイギュウは、原則的には本種のみでアフリカスイギュウ属を構成する一種とされています。
しかし、前述のように平原で暮らす種と森林で暗種種を別種とする説もあります。
- 平原で暮らす種 ケープクロススイギュウ(ケープバッファロー)
- 森林で暮らす種 アカスイギュウ・シンリンバッファロー
確かに、平原種であるケープクロススイギュウは大きな雄で体重1000キログラムにも達するものもいる程に大きいのですが、森林地帯で暮らすアカスイギュウは平均体重が300キログラムにも達しないのです。
また、毛色にもアカスイギュウは赤みがかかるなど違いがあります。この2種は別種と考えても不思議では無いですね。
バイソンとは異なる種
また、スイギュウ(バッファロー)とよく混同される種に「バイソン」があります。
「バイソン」は、ウシ目ウシ科バイソン属に属するウシ族の総称で別種となります。
アメリカでは、バイソンのことを「アメリカンバッファロー」と称することがありますが、これは厳密に言えば間違えなのです。
野牛として括られることが多い2種なのでこのような間違いが起こってしまうようですね。
アフリカスイギュウの危険性
前述のようにアフリカスイギュウは体長3メートル超、体重1トン超となるものもいるウシ科最大となる種です。
この巨体にも関わらず、時速60キロ程のスピードで走ることが出来るのです。
そして、頭には最大の武器となる大きくて頑丈しかも鋭利な角!
これらを総合して考えれば分かるように、凶暴な肉食動物にとってもこのアフリカスイギュウは驚異なのです。
アフリカスイギュウは襲ってくるライオンをこの角と突進力で返り討ちにしてしまいます。単体で考えた場合の戦闘能力は非常に高い数値を叩き出します。
よくライオンに捕食される映像がありますが、これは子供の場合が多いのと成獣でも1頭に対してライオンが群れで襲うからなしえることです。
ライオンもその危険性は熟知しているので、よほどの場合でないとアフリカスイギュウを狙うことはありません。
また、この危険性は肉食動物以外の私達人間にも向けられるのです。現地では毎年200人以上の尊い命がこのアフリカスイギュウによって奪われているそうです。
付けられたあだ名が「黒い死神」「未亡人製造機」ですから穏やかではないですよね。
アフリカスイギュウは、もともと気性が激しいので攻撃のスイッチが入ると非常に厄介になります。
これは肉食動物からの防御や雌を争う雄同士の戦いで多く見られます。
ウシにも関わらず「特定生物」に指定される
上記のようにアフリカスイギュウは非常に強く危険な動物なのです。
この為に日本においては、ウシにも関わらず「特定生物」として指定されている程なのです。
特定生物というのは、動物愛護管理法(日本の法律)によって、人命や身体、財産などに害を与える危険性がある動物として定められた種の動物になります。
アフリカスイギュウの天敵は?
このように非常に強くて危険なアフリカスイギュウですが、その天敵としては多くの方がライオンであるとしています。
しかし、前述のようの身体も大きく力も強いうえ気性も荒いとなるアフリカスイギュウの場合には、成獣を倒すことはライオンでもかなり難しいとされています。
幼獣や弱った個体、または引き離された単体を集団で襲う以外には、ライオンでもアフリカスイギュウを仕留めることは難しいですね。
この幼獣や弱った個体の場合には、ヒョウやチーター、ハイエナなどにも襲われてしまうようです。
また、水辺で水を飲んでいるところをナイルワニに襲われてしまうこともあるようです。
これらから、ライオンとナイルワニが天敵となり得ると考えても良いのではないでしょうか。
ライオンとの不思議な強弱関係
非常に強力で危険なアフリカスイギュウですが、不意を突かれるとパニックに陥ってしまうことがあるようです。
数頭のライオンがいきなりあらわれると数十頭の強靭なアフリカスイギュウがパニックとなり慌てて逃げだすという特徴も見られます。
しかし、落ち着いて状況判断が出来ると強いアフリカスイギュウが覚醒するということのようです。
ここに興味深い調査結果があります。ライオンとアフリカスイギュウの不思議な強弱関係をあらわしたものです。
- 群れのライオンと1頭のアフリカスイギュウの場合、ライオンがアフリカスイギュウを捕食する。
- 1頭のライオンと群れのアフリカスイギュウの場合、アフリカスイギュウがライオンを殺してしまう。
- 群れのライオンと群れのアフリカスイギュウの場合、アフリカスイギュウがライオンを追い払う。
- 1頭のライオンと1頭のアフリカスイギュウの場合、アフリカスイギュウがライオンを追い払う。
このように、ライオンとアフリカスイギュウの対峙する局面を考えても圧倒的にアフリカスイギュウがライオンに対して優位なんですね。
しかしライオンには倒して食するという強い動機があるため、この無謀ともされる戦いは行われるのだとか。なるほど、自然の凄さ厳しさが垣間見られます。
まとめ
今回アフリカスイギュウについて色々とご紹介をしてまいりました。
我々がよく目にするおっとりとしたウシの仲間ということであまり注視していなかったせいか、その凄さに改めて驚かされてしまいます。
確かに、筋肉質な体形はおっとりした草食動物のそれとはかなり異なりますね。
今後動物園に行く時などは、この強く危険なアフリカスイギュウにも俄然興味が湧いて来のではないでしょうか?