今回ご紹介するのはニホンザルになります。
ニホンザルは、シカやイノシシと並んで日本ではメジャーな野生動物です。
また、テレビやショーなどでは芸をしたり愛くるしい表情を見せてくれますね。
観光地でもニホンザルを目当てに行くなど人気者でもあります。
しかし、そんな愛くるしいニホンザルも時として私達に牙を向く恐ろしい猛獣になってしまうことも…。
今回はそんなニホンザルの特徴や性格、寿命、危険性と対処法など詳細にお届けいたします。
目次
ニホンザル
「ニホンザル基本 データ」
- 分 類 霊長目 オナガザル科 マカク属
- 学 名 Macaca fuscata
- 和 名 ニホンザル
- 英 名 Snow monkey / Japanese Macaque
- 体 長 50~70センチメートル程度
- 体 重 10~20キログラム程度
- 尾 長 5~10センチメートル程度
- 寿 命 20~25歳程度
- 分布域 北海道、沖縄を省く日本
- 生息環境 森林など
ニホンザルの特徴
ニホンザルは生息地によって大きさに違いがあります。
東北地方や中部での高山地帯の寒冷地に生息する種は比較的大型になります。
ニホンザルの生息する最南となる鹿児島の屋久島に生息する亜種「ヤクニホンザル(ヤクザル・ヤクシマザル)」は本土の種に比べて更に小型になります。
体毛も寒冷地に生息する種は長く密集して生え、温暖地の種は短く薄い傾向があります。
体色は、背中部分は赤褐色や褐色、それ以外は灰色のものが多いです。顔やお尻に体毛は生えていません。
この体毛は幼獣の方が濃く、成獣になるにしたがって薄くなっていきます。
顔は赤味がかっていて、こちらも成熟に伴い濃くなるようです。お尻も同様に赤味がかります。
身体は雄の方が大柄になり、雌雄ともにがっちりとした体形をしています。
またオナガザル科でありながらも尻尾が短いのも特徴的です。
鋭く大きな犬歯を持ちますが、それは雄の方が立派なものになります。
また四肢にはそれぞれ五本の指がありますが、親指とその他の指は向き合っており、物を掴むのには非常に優れた働きをします。
爪は平爪ですが、それでも引っかかれると非常に厄介です。大きな犬歯にくわえこの平爪も武器としては有効ですね。
ニホンザルは、北に生息する数少ないサルの一種で、青森県に生息する種はサルの中で最も北に生息する種になります。
ニホンザルと非常に良く似た種にインドやベトナムなどに生息するアケゲザルがいますが、こちらは尻尾が長くここに大きな違いがあります。
ニホンザルの中でも幸島(宮崎県)、高崎山(大分県)、臥牛山(岡山県)、箕面山(大阪府)、高宕山(千葉県)、下北半島などに生息する種は国の天然記念物に指定されています。
また、よくテレビでも見るニホンザルが温泉につかるシーンは、サルの仲間では非常に珍しいのです。
非常に頭がよく学習能力が高いことから身につけたものと考えれられます。
この他にも芋を洗って食べることなど人の行動を真似る様々な仕草が見られます。
ニホンザルの生態
ニホンザルは、北海道と沖縄を除く日本の各地に広く分布しています。
最北で青森県にも生息しておりこれは猿の仲間では最北に生息する種となります。
通常猿の仲間は、熱帯域や温帯域に分布するので積雪地域まで分布するニホンザルは特殊な生態とも言えますね。
英名の「Snow monkey」を見ると珍しさが理解できるかもしれません。
ニホンザルの生息環境は山林などで、通常20~80頭程度の群れを作り生活しています。
餌付けされた群れなどはその数を増やし、高崎山(大分県)の群れは1000頭以上になるようです。
また、ニホンザルが暮らすのは平地から標高1800メートル程度、時には3000メーテルを超える高山地帯でも目撃されることもあります。
また、人里近くにも姿を現し畑を荒らしたり民家に忍び込むなどの悪戯もしますね。
活動は昼間で10~20平方キロメートル程度の行動範囲を群れで移動します。この範囲は季節や食料事情によって異なります。
ニホンザルの群れは私達も良く知るところですね。1頭又は複数の雄が率いて、その中でさらに雌と子供たち、若い雄たちなどの小グループがあるようです。
群れの中には順位や階級が存在しますが、よく言われるほどの厳しい縦社会というよりは、どうやら穏やかな仲間意識の延長とされる程度のものもあるようです。
特定の巣を持たず、寝る時など、ほとんどは木の上で生活しますが地上におりても行動します。
木登り、跳躍力、泳ぎなど運動能力は非常に高いですね。
食性は雑食性で、果実や木の実・花や芽などの植物質のものから昆虫やカエル、トカゲなども食します。
厳冬地域に生息主種は、樹皮や海藻に貝類などあらゆるものを食します。
また観光地などでは、人にも慣れてしまい食物を奪い取って食する姿も度々目撃されています。
ニホンザルの性格
ニホンザルは私達人間に非常に近い感情を持っているようです。
表情が豊かで、物の好き嫌いもはっきりしているようですね。人間のような理性や道徳心があるわけではないので、これらは素直に表現されてしまいます。
個体にとっては、非常に攻撃的であったりもしますので、野生下でニホンザルを見かけてもむやみに近寄らない方が賢明です。
鋭い犬歯に爪をもちますので、大怪我をする危険もあります。
しかし、ショーなどで芸をする姿を見ると分かるように、縦の関係を作ることができれば従順でもあります。
基本的には頭が良いので、関係性を作れば余程のことがない限り、逆らうことはないようです。
ニホンザルの繁殖と寿命
ニホンザルの繁殖期間は、9月~3月の秋から春にかけてよく見受けられますが、生息地域により異なるようです。
妊娠期間は5カ月から6か月程度で一回の出産で一子稀に二子の場合があります。
一夫一妻制とか一夫多妻制という概念はないようで雌雄ともに複数の相手と交尾を行っています。
- 赤ん坊期 0歳から1歳
- 子供期 1歳から4歳
- 若者期 5歳から9歳(雄) 5歳から6歳(雌)
- 大人期 若者期以降
赤ん坊期は母親に全面依存の為、母親が死んでしまうと子供も生きられません。子供期になると乳離れをして他の子どもと遊ぶようになります。
若者期になると繁殖が可能になります。
ニホンザルの寿命
ニホンザルの寿命はたいてい20歳から25歳(30歳とする説もあり)と見られています。
飼育下での記録は次のようなものがあります。
- 丸山動物園の「はな子」が37歳
- 富山市ファミリーパークの「アケビ」が36歳
- 円山動物園の「もみ子」が36歳(推定)
- 円山動物園の「ぎん子」が35歳以上(推定)
- 高崎山自然動物園の「ベンツ」が35歳
豆知識
ニホンザルについて意外と知らないことが多いようです。
ここではそんな豆知識をご紹介しますね。
ニホンザルの知能
色々な動物が芸を覚えることが出来ますが、ニホンザルのそれは他の動物と全く質が異なります。
他の動物のほとんどが芸をすることで餌がもらえると理解して、芸を行います。
ニホンザルの場合には、人間の行動を見て覚え、理解して応用することが出来るのです。
このことから非常に高い知識を有すると考えられます。
行動の意味するところを考えるというのは非常に優れた頭脳を持っていますね。
芸を教え込む場合にも、他の動物とは異なり主人の言うことには従うという姿勢ですのでその都度餌付けの必要がありません。
この賢さは野生の個体でもあるようです。
例えば、人間が自動販売機でジュースを買うのを見たニホンザルが木の葉を投入口に入れてジュースを手に入れようとする姿も確認されています。
また前述しましたが、ニホンザルが温泉に入る行動も人間が気持ちよさそうに温泉につかるのを見た一匹のニホンザルが真似をしてそれが仲間に広がっていったようですね。
オナガザル科なのに尻尾が短いのは?
ニホンザルはオナガザル科に属しますが、尻尾が短いのが特徴的です。
これは寒冷地に生息することから、必然的に進化し短くなったと考えられます。
アレンの法則としても有名ですね。
寒い地域に生息する動物の場合に、体内からの放熱を防ぐために体の突出部(四肢、尻尾、鼻面、耳など)が小さくなる傾向にあるというものです。
ニホンザルの場合にもこの法則に則り尻尾が短くなったと考えられています。
ニホンザルは温泉から出て湯冷めしない理由
ニホンザルが温泉に入る特殊なサルであることはこれまでにもご紹介してまいりました。
よく雪の中で温かそうに温泉につかった映像を見ますが、あのまま湯から上がって湯冷めしないのかという疑問も湧いてきます。
実はこれ、ニホンザルの体毛には多くの油分が含まれていて湯から上がってしまえば身体はすぐに乾くので湯冷めをしないとのことです。
また、ニホンザルがかく汗の量が少ないので熱を奪われにくいということも関わっているようです。
このことによりニホンザルが湯冷めすることは無いようです。
ニホンザルの危険性と対処法
ニホンザルが人を襲う事件も頻発しています。
基本的には、ニホンザルが人に近づくことは無いとされていました。
しかし、観光地などで人間に慣れてしまったニホンザルが観光客を襲い食べ物を強奪する事件が度々起こっています。
これは、ニホンザルが賢いことも拍車をかけているようですね。
人間はむやみに危害を加えて来ないことを学習している。
また、女性や子供の方が力が弱いことを学習して、ターゲットにしているということも分かっています。
この際に咬みつかれ大けがをしてしまうこともあるので気を付けなくてはなりません。
前述のように、非常に発達した犬歯を持つ顎の力も強く、咬みつかれると犬歯が骨まで達することもあるのです。
観光地以外でも、山に餌が少ないことと、人里に行けば餌があることを学習してしまった群れが、山を下りて民家に入り込んだり農作物を荒らすという被害も起こっています。
農作業中であったり家の中でニホンザルと遭遇して襲われるというケースも珍しくありません。
ニホンザルと遭遇した際の対処法
まずは近付かないことです。
道を塞がれたと勘違いしたニホンザルが襲ってくる危険性があります。
そして目を合わさないことも大切です。
目を合わせる行為は威嚇になりますので、目を合わさずにゆっくりと立ち去りましょう。
また「大声を出す」や「走って逃げる」などの刺激を与えるのも危険です。
観光地などでは、むやみに餌を与えたりするのもやめましょう。
ニホンザルが襲ってきたら、絶対に素手で振り払おうとはせずバッグや帽子などを使ってください。
素手の場合にさらに咬みつかれたりひっかかれたりする危険性があります。
咬まれたりひっかかれたりしたら浅い傷の場合でも、雑菌により化膿することも考えられます。
すぐに病院で手当てをしてもらいましょう。
天敵と生息数
ニホンザルの天敵は、幼獣の時にはタカやワシなどの猛禽類に襲われることもありますが、成獣になると見当たりません。
以前はオオカミが一番の外敵でしたが、既に絶滅してしまいました。
今では人間が一番の外敵かもしれません。
被害に遭い駆除対象となることがあるからです。一部地域では天然記念物で一部では駆除対象というのも不思議な話ですね。
最近では、生息地の減少やアカゲザルとの交配などが進み、ニホンザルの生息数は減少してきています。
まとめ
今回はニホンザルについて色々とご紹介をしてまいりました。
テレビやショーなどでお馴染みの愛くるしい表情を見せてくれるニホンザルも時として恐ろしい危険生物となってしまうこともあるのです。
ニホンザルは、日本では非常にメジャーな野生動物ですね。
観光地などでも野生のニホンザルに出会う機会は多いでしょう。
可愛いからとむやみに近づいたり餌をあげたりちょっかいを出すなどの行為は絶対にしてはいけません。