アフリカサバンナにおいて、生態系の頂点として君臨するのはご存知「百獣の王ライオン」です。
それでは、アフリカにおいてこのライオンの地位は安泰なのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。その座を脅かすものが存在するのです。
その筆頭となるのが、今回ライオンとともにご紹介する「ハイエナ」なんです。
「ハイエナって、ライオンの食べ残しを漁るあのハイエナ?」
そう思われる方の多いかも知れませんが、実はこれ誤解なんですね。
ハイエナの狩りの成功率は非常に高く、むしろハイエナが狩った獲物をライオンが横取りすることの方が多いのだとか…。
お馴染みの対決シリーズ、今回はこのライオンとハイエナの戦いに着目したいと思います。
ライオンの圧勝のように思われるこの戦いですが、実はそうでもないようです。
なんでも、ハイエナに食べられてしまうライオンの姿も目撃されるのだとか!
題して「ライオン対ハイエナ!ハイエナに食われるライオン?」です。
どうぞお楽しみください。
目次
「ライオン」と「ハイエナ」の基本データ
それでは、今回の主役となるライオンとハイエナ、それぞれの基本データと特徴を比較してみましょう。
ライオンはアフリカライオン、ハイエナはライオンのライバルと目される「ブチハイエナ」をそれぞれ対象としております。
ライオンの基本データ
- 分 類 食肉目 ネコ科 チーター属
- 学 名 Panthera leo
- 和 名 ライオン
- 英 名 Lion
- 分 布 アフリカ大陸(サハラ砂漠以南)及びインド(北西部)
- 生 息 サバンナの草原地帯、乾いた落葉樹林
- 体 長 2~3メートル
- 体 重 140から250キログラム程度
- 備 考 サバンナの生態系の頂点に君臨する百獣の王
言わずと知れた百獣の王ライオンは、ネコ科動物の中ではトラに次ぎ大きな種であります。
アフリカの陸棲の肉食動物としては最大の大きさになりますね。
しかしながら、同じネコ科動物と比べて非常に特徴的でもあるのです。
その一つが、雌雄で外見が異なる「性的二形」であることです。これは他のネコ科動物では見られません、雄には百獣の王の貫禄となる立派な鬣があります。
また、プライドと呼ばれる群れ(数頭の雌と2頭ほどの雄、子供)を形成するのも、ネコ科動物としては非常に珍しいですね。
ライオンは、雄に比べて雌の方が一回り小さく、狩りはもっぱら雌の役割になっています。
単独の場合には、雄が狩りを行うこともありますが、身体が大きく鬣が目立ちやすい雄は狩りには向いていないようです。
雄の役割としては、外敵からプライドを守る戦いが最も大きなものになります。
雄の鬣は雌へのアピールとともに急所となる首元を防御すると言う説もあり、戦いに特化した身体の構造を雄は持っているのです。
ライオンの武器は、力強い脚力と鋭利な爪そして強力な顎と8センチメートルにも及ぶ鋭い牙です。
これら武器に群れと言うチームプレーを兼ね備えて、アフリカサバンナの生態系の頂点に君臨しています。
ブチハイエナの基本データ
- 分 類 食肉目 ハイエナ科 ブチハイエナ属
- 学 名 Crocuta crocuta
- 和 名 ブチハイエナ
- 英 名 Laughing hyena、Spotted hyena
- 分 布 アフリカ大陸(アフリカ大陸最南部、サハラ砂漠やコンゴ盆地を除く)
- 生 息 草原
- 体 長 95から165センチメートル
- 体 重 40から86キログラム程度
- 備 考 ライオンをも上回る驚異的な顎の力を持ち、狩りの名手でもあります。
ブチハイエナはハイエナの中でも最も大きな種で、アフリカサバンナにおいてはライオンを脅かす存在であります。
ブチハイエナのイメージとしては、他の動物の獲物を横取りしたり腐肉を貪ったりするイメージが強いですが、実際には俊足にくわえスタミナも抜群と言う優れたハンターなんです。
実にブチハイエナは、口にする獲物の6割は自分たちで狩りをしたもので、むしろライオンに横取りされる方が多いとも言われているのです。
ブチハイエナは動物界では珍しく雄よりも雌の方が大きくて強くなります。
雌をリーダーにクランと呼ばれる群れ(5から20頭ほど)を作り、抜群の統率力で優れた狩りを行うのです。
また、ブチハイエナはイメージ通りに腐肉を貪ることもありますが、実はこれがないとアフリカサバンナ中に腐った死体から発生する病原菌が広まると考えられています。
このことからも、ブチハイエナはアフリカでは非常に重要な役割を担っているのです。
ブチハイエナの武器となるのは、ライオンをも上回る非常に強力な顎の力と小さいですが丈夫な歯です。
この顎の力と丈夫な歯のおかげで、獲物の骨をも噛み砕き食することが出来るのです。
また、どこまでも獲物を追いかけることが出来るスタミナに統率のとれた群れの力もブチハイエナの大きな力と言えるでしょう。
このことで、時にはライオンを追い払うことに成功もしているのですから。
「ライオン」と「ブチハイエナ」が自然下で戦う可能性はあるのか?
このライオンとブチハイエナですが、生息域も被ることから自然下においては常に戦いを強いられることになります。
ブチハイエナが現れると、ヒョウは木の上へと獲物を上げるので無事ですが、チーターは争わずに獲物を渡します。
ブチハイエナと戦うのは、ライオンくらいなんですね。
またライオンが、ブチハイエナが仕留めた獲物を横取り(こちらの方が多いようです)することもあり、常に両者は獲物を求めて熾烈な戦いをしているのです。
アフリカのサバンナで生態系の頂点に君臨するのはライオンで、それを脅かす存在なのがブチハイエナです。両者は拮抗したライバル関係と言えるでしょう。
このため、獲物が関係しないところでもライオンがブチハイエナを仕留めたり、反対にブチハイエナがライオンの子供を仕留めたりする光景が目撃されています。
これは、「自らが生存するためにはライバルの数を減らす」ことが目的とされています。
「ライオン」対「ブチハイエナ」!どちらが強いのか?
それでは、ライオンとブチハイエナの戦いの勝利の行方を見てみましょう。
もし双方の成獣同士が1対1で戦ったと仮定すれば、戦闘力から見てもライオンが圧倒的に有利です。
身体の大きさもライオンの方が3倍程度大きいですしパワーも桁違い、鋭い爪に大きな牙をハイエナに突き立てて仕留めてしまうでしょう。
ブチハイエナの武器は、強力な顎の力ですが、ライオンのそれも実はブチハイエナほどではないもののそれなりの強さを持っています。
体格的ハンディを考えれば、それだけで戦況が変わることは少ないでしょう。
実際に、動画サイトなどには単体の2種がで戦う様子がありますが、いずれもライオンの圧勝で終わっています。
このことから、単体での戦いになればライオンの勝利はまず間違いないと思われます。
しかし、自然下において単体同士での対決よりも遥かに多く見られるのが、ブチハイエナが群れで襲い掛かる場合です。
相手は、ライオン1頭の場合もありますし、ライオンも群れ(ハイエナより少ない)の場合もあります。
ちなみにブチハイエナがライオンに勝つとしたら、1頭の雄ライオンの場合でブチハイエナが5頭、1頭の雌ライオンでブチハイエナが3頭必要と言われています。
「ライオン」対「ブチハイエナ」自然下での戦績は?
それでは、実際に自然下におけるライオンとブチハイエナの戦績はどうなのでしょうか?
たいていの場合が、群れのライオンと群れのブチハイエナの争いとなります。
前述でライオンがネコ科動物で群れを作る珍しい種とお伝えしましたが、実はこれはブチハイエナに対する防御策との説があるのです。
大きさで勝るも数では勝てないことから、ライオンもブチハイエナ対策として群れを形成するようになったとされているのです。
そう考えますと、サバンナにおけるブチハイエナの持つ影響力は非常に大きいと言えますね。
このように、ライオンにも群れを作らせたブチハイエナですが、やはり群れとなってしまったライオンの牙城は崩すことが難しいようです。
ほとんどの場合で、ライオンに分があるようですね。
また、執拗なブチハイエナの攻撃に嫌気がさして、ライオンがその場を離れるというケースもあります。
しかし、この場合にも逃げたと言うよりも、ある程度獲物の肉を食べ満足した後のようです。
- しかし、反対の場合も。
もちろん、ブチハイエナがライオンを追い払う場面もあります。
ブチハイエナの方が圧倒的に有利な数で戦う場合がそれで、実はこのパターンも意外に多く見られるようですね。
まだプライドが小さなライオンの群れや、プライドから出たばかりの孤独なライオンなどはブチハイエナの標的となることもあります。
ライオンがブチハイエナに食べられることも
ブチハイエナの狩りは、弱った個体を群れから離れさせて仕留める方法が一般的です。
その獲物にライオンがなってしまうケースもあります。
例えば、衰弱したライオンが居ればブチハイエナは容赦なく襲い掛かります。
また、雄ライオンに対しては、それほど攻撃的な姿勢を見せませんが、雌ライオンには時に攻撃的になります。
弱った孤立したライオンや子連れの雌ライオンがハイエナに襲われ、食べられてしまうケースも多々あるのです。
また、ライオンが死んでいればそれはもうブチハイエナの餌となってしまいますね。
このように、ブチハイエナにライオンが食われる場面も、アフリカでは目撃されているのです。
まとめ
今回、永遠のライバルとされる「ライオン」対「ハイエナ」についてご紹介しました。
アフリカサバンナの生態系の頂点を争う2種は、日頃から激しいバトルを繰り広げているのです。
恐らく、多くの方が人気者のライオンを応援されるのではないでしょうか。
ハイエナには何となく、狡賢いイメージがついてしまっていますからね。
しかし、実際にハイエナは優秀なハンターで、獲物を横取りすることよりされることの方が多いのです。
そう考えると、ブチハイエナの不人気は少々気の毒な気もしますね。
また、ハイエナが居なければ、アフリカを清潔に保つことが出来ないのも事実なんです。
ハイエナには、とても大切な存在意義があることは是非知っていただきたいですね。
バトルの行方は、多くの方の期待通りライオンにやや部があります。
しかし、このようなハイエナの真実に必要性を考えると、少しは応援してあげたくなりませんか?。