百獣の王「ライオン」!
その堂々たる存在感は見るものを魅了し、恐らく動物の中では最も人気の種の一つでしょう。
ライオンは、ネコ科動物では珍しくプライドと呼ばれる群れを作り、アフリカサバンナでは生態系の頂点に君臨しています。
狩りをするのは、雌の仕事で狩った獲物はまず雄が食べる。「ライオンの雄が羨ましい!」なんて声も聞こえそうですが…。
実際には、そんなに楽ではないようです。
ライオンの雄は、戦うために生まれてきたと言っても過言ではありません。非常に過酷な一生を過ごすことになります。
大きな群れ(プライド)を作り上げ、子供にも恵まれ安泰…なんてことはないのですね。
ライオンの雄は常に弱肉強食にさらされ、少しでも気を抜けばプライドを乗っ取られ子供は子殺しに遭ってしまうのです。
今回は、そんな過酷な一生を過ごすライオンについて、雄ライオンを中心にその生態からプライドの仕組みまで、詳細にご紹介いたします。
ライオン
ライオンは食肉目ネコ科ヒョウ属に属する肉食性の哺乳類です。
ネコ科ではトラに次ぐ大きさを誇り、百獣の王として非常に人気の高い動物になります。
ライオンの基本データ
- 分 類 食肉目 ネコ科 ヒョウ属
- 学 名 Panthera leo
- 和 名 ライオン
- 英 名 Lion
- 分 布 アフリカ大陸(サハラ以南)、インド北西部
- 生 息 サバンナ
- 体 長 1.7から2.5メートル(雄)、1.4から1.8メートル(雌)
- 体 重 150から225キログラム(雄)、120から180キログラム(雌)
ライオンは、ネコ科動物ではトラに次ぐ大きさを誇りますが、実は体高ではトラをも上回ります。
武器となるのは、強靭なパワーに鋭利な爪、そして強力な顎と8センチメートルにも達する頑丈で鋭利な牙です。
特に前足のパワーは凄まじく、大型の哺乳類も引き倒し押さえ込んで仕留めることが出来るのです。
特徴的なのは、ネコ科動物では珍しく群れを作ること(詳細は後述)と性的二形が明瞭であることです。
性的二形とは、雄と雌で外見が異なることで、雄の鬣(たてがみ)がそれを如実に表していますね。
この鬣は、諸説ありますがより大きく強く見せることに急所である頭部や首元を保護すること、そして雌へのアピールと言った意味合いがあると考えられています。
狩りにおいてこの鬣は非常にマイナス要因になりますが、実際に狩りを行うのは鬣の無い雌ですので、非常に上手くバランスが取れています。
なお、より大きくより濃い(黒い)鬣を持つ雄が、雌に好まれる傾向にあるようですね。
ライオンの生態
ライオンは、主にはアフリカのサバンナでその姿を見ることが出来ます。
インドに分布する種は、サバンナや乾いた落葉樹林に生息しますが、こちらは絶滅の危機に瀕している状態です。
ネコ科動物では珍しく群れを作るなど、非常に社会性の強い一面を持ちます。
基本的には夜行性とされていて、日中はほとんどの時間を寝そべって怠惰に過ごすことが多いようです。
食性は肉食性で、主にはイノシシやガゼル、シマウマ、ヌーなどの中型から大型の哺乳類を捕食します。
その狩りを行うのは日の出前の夜中が多く、主には雌が行います。
サバンナの生態系の頂点に君臨するライオンではありますが、いつも狩りが上手くいくとは限りません。
そのような場合には野兎など小動物を狩ることもありますし、またハイエナやチーター、ヒョウなど他の肉食動物が仕留めた獲物を奪うこともあります。
まれに腐肉を貪るような姿も目撃されていますね。ライオンと言えども自然界を生き抜くのは厳しいと言うことでしょうか。
ライオンの一生
さて、ライオン特に雄ライオンは非常に過酷な一生を過ごすことになります。
動物園などの飼育下では、ライオンが20年以上生きることも珍しくありません。
しかし、野生下での雄ライオンの寿命は長くても12歳程度です。雌の場合には、もっと長生きで19歳と言う記録もあるようです。
これが平均寿命となると、さらに短くなります。
成獣に成長する確率は非常に低く、2歳まで生きられるのは2割程度と言われています。
雄ライオンの寿命が短いのは、外敵との戦いを常に強いられていることにあります。
縄張りや群れ(プライド)を巡っての雄ライオン同士の争いは過酷で、これにより命を落とすことも珍しくありません。
たとえ成獣になっても気の抜けない毎日で、平穏な死を迎えることがまれなんですね。
繁殖から自立
ライオンの交尾は、プライド内のみで行われます。
妊娠期間は約110日ですが、出産が近づくと雌はプライドを離れて1から4頭の子供を出産します。
子供がプライドでの生活に耐えられる程度に成長すると、雌は子供と一緒にプライドに戻るのです。
しかし、この間に他の肉食獣に襲われてしまうなど、子供には厳しい時期でもありますね。
乳離れは半年程度で、雌はそのままプライドに残りますが、雄は2歳位になるとプライドから追い出されてしまいます。
追い出された雄は、単独または一緒に追い出された兄弟などで小さな群れを作り生活をしていくことになります。
そして5歳位になり性的成熟を迎えると、他のプライドの雄と覇権を掛けて争いそれに勝つことでプライドを持ち繁殖をすることが出来るのです。
この争いは非常に激しいもので、時には命を落とすこともあります。
もしプライドを得ることが出来なければ、子孫を残せないだけでなく、孤立しハイエナなどに襲われる危険性もあるのです。
これは、プライドを乗っ取られた雄も同じですね。
無事にプライドを乗っ取ることが出来たとしても、新たな雄がやってきてプライドを乗っ取ろうとします。常にこの危機に備えておかなくてはなりません。
雄がプライドを維持していられる期間は、平均で2から3年とされてて、この間に少しでも多くの子孫を残す必要があるのです。
一方、雌ライオンは、生まれたプライドを離れることは滅多にありません。
雌の場合には、雄と異なり新たにプライドに加わることは出来ません。たいていの場合、すでにいる雌に追い払われてしまいます。
そうなると、孤立した雄以上に生き延びるのは厳しい状況に置かれてしまいますね。
ライオンの群れ「プライド」
このようにライオンがサバンナで生き残るにはプライドが必要になります。
ネコ科動物としては、大柄で力強いライオンですが、サバンナにはそれよりも大柄な草食動物がたくさんいます。
それらを獲物とすることで、ライオンは生き残ることが出来るのです。
その狩りを成功させるには、プライドを形成するのが一番理想的と考えられています。
追い込み役が、待ち伏せ役のところに獲物を追い込み仕留める。この理想的な狩りのパターンが使えるのはプライドならではなんです。
また、相手がパワフルな獲物でも数の論理で仕留められることもプライドを持つ強みとなります。
中には、最大の陸上動物ゾウや一番背の高いキリンなどを仕留めるプライドも存在するようです。
これらを捕食できるのはライオン以外にありませんので、生存競争には非常に有利になりますね。
また、サバンナにはライオン以外の肉食動物もたくさんいます。
個体同士の争いであれば、まず負けることはありませんが、厄介なのは同じく群れを作るハイエナやリカオンなどの存在です。
数で来られてしまうとさすがのライオンでも危険です。
一説には、ライオンがプライドを作ったのはハイエナ対策ともされているのですから。
いくらライオンが大きく強くても、チーターのように俊足であったり、ヒョウのように木登りが上手ではありません。
プライドを作ることで、攻めでも守りでもライオンの強さが発揮されるのです。
過酷なプライドの仕組み
ライオンにとってプライドがいかに重要かはご理解いただけたでしょうか。
ここで、このプライドにおける過酷な仕組みについて触れておきましょう。そこには、非常なまでの弱肉強食の世界があるのです。
前述のように、プライドは常に他の雄に狙われています。プライドを明け渡してしまえば、年老いた雄には無残な死しか待っていません。
一方新しくプライドを手に入れた雄が最初に行うのが「子殺し」です。前の雄の子供を全て殺してしまいます。
これは、子育て中の雌は発情しないことから、その子供を殺して交尾をするためです。
雌は、もちろん抵抗しますが、雄には敵いません。
まれに複数の雌が協力して阻止する例もあるようですが、たいていの場合でこの子殺しは行われます。
野生でのライオンの子供が成長できないのには、外敵以外にも他の雄ライオンと言う最も恐ろしい敵がいるからなんです。
ちなみに、草食動物は一回の出産で1頭が普通ですが、ライオンなどの肉食動物は複数頭生みます。
これは、生存率が非常に厳しいことからなんです。
このプライドのサイクルは絶えず行われているので、ライオンは自分の子供を早く成長させる必要があるのです。
子供を成長させなければ、自分がプライドを追い出せれてしまった場合に自分の子供も殺されてしまうのです。
そんな恐ろしい弱肉強食の仕組みが、同じライオン同士の間で展開されているのです…。
まとめ
今回、ライオンの生態と一生についてご紹介いたしました。
雌に狩りを任せるライオンの雄ですが、決してのほほんと暮らしているわけではありません。
常に、戦闘を強いられる過酷な生活を送っているのです。
ライオンは生まれた時から、外敵や新しい雄による子殺しなど、多くの恐怖にさらされて育ちます。
雄の場合には、2から3歳で群れを追い出され、ここからプライドを奪うまでは単独で暮らさなければなりません。
そして、念願のプライドを奪うことが出来ても、今度は生死を掛けてプライドを守ると言う過酷な任務が常に付きまとうのです。
プライドがあることで、生態系の頂点に君臨できるライオンです。
しかしながら、反対にこのプライドがあることで、雄はより過酷な一生を背負って生きて行かなくてはならないのですね。
こうなると、「ライオンの雄っていいよなー。」なんて言えませんね。