ウツボは「海のギャング!」と恐れられるほどに凶暴で最強となる魚です。
よくよく調べてみるとウツボには200にもおよぶ種類があり、それらは世界中の暖かい海で生息しているんです。
その中には最大となる大きさや強い毒性を持つ種もいるようで、気を付けなければなりません。
しかし怖いイメージとは異なり、地域によっては料理として振る舞われその美味しい味は一度食べたら忘れられなくなるとも…。
今回は、そんなウツボの特徴や生態から種類の一覧、更には天敵はいるのか?、毒性の有無の見分け方など、詳細に解説してまいります。
目次
ウツボ
「ウツボ データ」
- 分 類 ウナギ目 ウツボ亜目 ウツボ科 ※下位分類は本文内
- 学 名 Muraenidae
- 英 名 Moray eel
- 和 名 ウツボ(鱓)
- 体 長 種類によって様々 20から400センチメートル程度
- 分布域 世界中の熱帯や温帯水域
- 生息環境 比較的浅い海のサンゴ礁や岩礁が多い
種類としておよそ200近い種が世界中には存在します。
「ウツボ」というのは、実は上記分類(ウナギ目 ウツボ亜目 ウツボ科)に属する魚の総称なんです。
私達が良く使う「ウツボ」はその中の一種をさしてウツボ(標準和名として)としているのですが、実際には多くの種類がありそれらをひっくるめているんですね。
和名で普段使われる「ウツボ」は、その体形が昔矢を入れるのに使われていた靫(うつぼ)に似ていることから名付けられたとする説や岩穴に潜む性質から空洞を意味する「うつほら、うつほ」から名付けられたとする説があります。
日本においては、この私達がさす「ウツボ」以外は、「〇〇ウツボ」などと呼び区別されていますね。
ウツボの特徴
ウツボは勿論その種類によって異なりますが、体長は20から400センチメートル程度と幅広い大きさになります。そんな中でも100センチメートル程度の体調の種類が多いようですね。
体形は細長い円筒形ですが、縦方向にやや平たい形状をしています。ヒレも特徴的で腹鰭と胸鰭は退化して無くなり、背鰭から尾鰭までが繋がり一つになっています。
体色は種類によって様々な色合いになりますが、生息環境によっても保護色の役割からか違いが見られます。全体的には地味目な色合いですが、種によってはトラウツボやハナヒゲウツボの様に派手な模様や色彩の種類もあります。
獰猛さを象徴するかのように口は大きくて目の後方まであり、そこには鋭い歯が並んでいます。また鼻がいびつに歪曲していてそのせいで口をしっかりと閉じられない種類もあります。
エラは小さく目立ちません、それは特徴的な分厚い皮膚を持つことにもよるのですが、それ以外にも皮膚が退化した鰭や鱗までも覆ってしまっています。
もう一つ特徴的なのが、口の中に第二の顎と呼ばれる「咽頭顎」があり、これにより食した獲物を食道にどんどんと押し進めていくことが出来ます。旺盛な食欲はこの「咽頭顎」のおかげでもあるのですね。
ウツボの生態
ウツボは数多存在する種類の全てが、温暖な海の比較的浅い水域に生息しています。ただ、種の中には河川と海の混ざる汽水域や淡水域にまで入り込むものもいるようです。
住処としては、サンゴ礁や岩礁を好んで選ぶ種が多いですね。
また、ウツボは独特な生態を持ち通常はエラ呼吸になるのですが、発達した皮膚のおかげで皮膚呼吸もある程度(30分程度)なら可能でその間は水中でなくても活動することが出来るのです。これを利用して潮だまりにいる小魚や時には岩場で魚をさばく釣り人のところまで来たりもするようです。
嗅覚がとても鋭く獲物を見つける能力に長けていますが、上述の水中以外の場所への移動もこの嗅覚を頼りに行っていると見られています。
夜行性で、日中は巣穴に潜み獲物を待ち伏せしているが、夜になると巣穴から出て動き回ることもあります。獲物となるのは、魚やエビ・カニなどの甲殻類にタコやイカなどの頭足類でその食性は肉食性となり、特にタコなどはこのウツボが天敵となる程に襲われることが多いようですね。
ウツボは、その生息域においては生態系の頂点に君臨する魚となりますが、エビや小魚の中にはウツボと共生の関係を築いているものもあるようです。
必要以上に好戦的な性格ではありませんが、自分よりも大きな相手であっても敵とみなした場合には近付いてくれば大きな口を広げて威嚇します。それでも相手が逃げない場合には噛みつき退治しようとします。
詳細は後述しますが、種類の中には毒を有するものもありますが、これは噛みつくことによってその毒が作用することはありません。しかし、顎の力は強く歯も鋭いので噛みつかれた場合には大きなダメージを受けることになります。
これは勿論人間にも当てはまることなので、ウツボの生息域においては、釣りや潜水などのレジャーを行う際には注意をする必要があります。とは言え、実際にはウツボは比較的臆病な性格なのでこちら側から近付いたりちょっかいを出したりしなければウツボの方から積極的に攻撃を仕掛けてくることはあまりありませんね。
もし仮に、水中でウツボに遭遇した場合には、刺激をしないように静かにゆっくりと離れれば攻撃される可能性は少ないようです。
地域によっては、餌付けされたウツボもいるようで、人間の手から餌を食べることもありますし、ウツボの方から餌をねだってくるような行動も見られるようです。
ウツボの寿命は種類により異なりますが、中でも長生きとされるニセゴイシウツボなどは飼育下で25年と言われています。
ウツボの分類と種類
前述でウツボの分類は「ウナギ目 ウツボ亜目 ウツボ科」としておりますが、その下の下位分類においては主には鰭の形状により次の2つに分けられます。
- ウツボ亜科 背鰭と尻鰭が身体の大半を占める
- キカイウツボ亜科 鰭が尾にだけある
ウツボ亜科の主だった種類一覧
- アラシウツボ属 シマアラシウツボ、クモウツボ、チェインモレイ、ナミダカワウツボ、など
- コケウツボ属 コケウツボ、トラウツボ、など
- ゼブラウツボ属 ゼブラウツボ(1種のみ)
- ウツボ属 ウツボ、ドクウツボ、ニセゴイシウツボ、アデウツボ、アミウツボ、アセウツボ、ワカウツボ、ヒメウツボ、ハナビラウツボ、ユリウツボ、マメウツボ、インディアンモレイ、など多数
- モヨウタケウツボ属 モヨウタケウツボ(単種)
- ハナヒゲウツボ属 ハナヒゲウツボ(単種)
- オナガウツボ属 オナガウツボ
キカイウツボ亜科の主だった種類一覧
- モヨウキカイウツボ属
- キカイウツボ属 キカイウツボ、モヨウキカイウツボ、など
主だった種類のウツボの概要
前述のウツボの種類の内、主だったものをご紹介しておきますね。
シマアラシウツボ
- 学 名 Echidna polyzona
- 全 長 80センチメートル程度
- 分 布 インド・太平洋の熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域
全長80センチメートル程度と中型種になります。
身体全体に縞模様が入っています。また幼体時には濃くはっきりとしていますが成長するにつれて薄くなっていきます。性的二型で雄雌で見た目が異なりますが、雄の歯が鋭く尖っているのが特徴的です。
インド洋や太平洋に幅広く分布していますが、日本では高知県柏島や琉球列島でその姿を見ることが出来ます。
クモウツボ(雲鱓)
- 学 名 Echidna nebulosa
- 全 長 60センチメートル程度
- 分 布 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域、礁湖内
全長が60センチメートル程度と中型種になります。
体色は白から黄色がかったものがベースとなり、その上に茶色から黒の斑紋のような縞模様が入っています。その歯は基本的に臼歯状なのですが、こちらも性的二型で成熟した雄の歯は鋸状の鋸歯を持ちます。
インド洋や太平洋に幅広く分布していますが、日本では高知県より南の海でその姿を見ることが出来ます。少し特徴的な模様のウツボで観賞用として人気があります。
ナミダカワウツボ (涙河鱓)
- 学 名 Echidna rhodochilus
- 全 長 30センチメートル程度
- 分 布 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域
全長が30センチメートル程度の小型種になります。インド洋や太平洋の熱帯域に分布していて、日本でも唯一沖縄・西表島でその生息が確認されている種類になりますが、2007年に環境省のレッドリストで絶滅危惧に指定されています。
基本的に体色は黒又は紫の褐色ですが、身体の表面は淡い緑色の粘液で覆われています。和名の由来は目の下にある白い斑点で、その姿が涙を流しているように見えることで「涙」と、汽水域に生息することで「河」に由来して付けられました。
口の中が白いことから「ホワイトマウスモレイ」とも呼ばれていますね。
トラウツボ(虎鱓)
- 学 名 Enchelycore pardalis
- 全 長 90センチメートル程度
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域
全長が90センチメートル程度の中型種になります。鼻孔が鼻先と目の上あたり筒状に伸び角のように見えるのと、また見た目が鮮やかで紫がかった体色をベースにしたトラ模様で、さらに縁どられた白い斑点がありかなり特徴的な種になりますね。
一般的に日本ではこのトラウツボを食用とする地域もあり、ウツボの仲間ではかなりメジャーな部類となるのではないでしょうか。
インド洋や太平洋の熱帯域に分布していて、日本でも本州中部より南の海域でその姿を見ることが出来るのですが、不思議な事に沖縄の琉球列島近辺では確認が出来ていないのです。
ゼブラウツボ
- 学 名 Gymnothorax zebra
- 全 長 80センチメートル程度
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 沿岸部の浅いサンゴ礁や岩礁域
全長は一般的には50センチメートル程度のものが多いのですが、地域や個体などにより様々な大きさがあり、150センチメートル程度のものもざらいるようです。
分布は、インド洋や太平洋の暖かい海で、日本では太平洋岸や琉球列島で見ることが出来ますね。
身体全体的に細い縞模様が見られシマウマのように見えることからこの名前で呼ばれています。この形状からウミヘビと間違われることも多いようですが、ゼブラウツボには毒性はありません。
また、歯が貝類や甲殻類を噛み砕くように特殊化していること、雌性先熟性の雌雄同体であるのも大きな特徴になります。
こちらもその見た目から観賞用として人気がるようですね。
ウツボ(鱓)
- 学 名 Gymnothorax kidako
- 全 長 80センチメートル程度
- 生息域 太平洋
- 生息環境 サンゴ礁域
全長80センチメートル程度の中型種になります。
太平洋の暖かい海域に広く分布し、日本では本州中部より南に分布しているのですが、トラウツボ同様に奄美大島より南に位置する琉球列島ではその生息が確認出来ていないようです。ただしこちらは慶良間諸島ではごく稀に姿を見るなどの報告もあるので真意は定かではありません。
日本においては、「ウツボ」と呼ぶ時はほとんどがこのウツボをさして使われるのが一般的で、最もメジャーな種になります。他の種が生息している地域で食用として水揚げされる場合には、区別するため「真ウツボ」や「本ウツボ」とも呼ばれています。
またこれ以外にも地域によって「ナマダ」(東京)、「ジャウナギ」(伊豆半島)、「ヘンビ」(和歌山)、「ヒダコ」(愛媛)、「キダカ」(鹿児島)などの特有の呼称が存在します。
全身は、茶から黒の褐色と黄色(白に近い)のまだら模様ですが、全体的にみると縞模様になり、日本で見るウツボでは最も縞模様が多い種になりますね。
ドクウツボ
- 学 名 Gymnothorax javanicus
- 全 長 200センチメートル程度(300センチメートルの記録もある)
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域
ドクウツボは体長300センチメートルの記録もある大型のウツボで、種の中でも最大種の一つになります。
インド洋や太平洋の暖かい海域に幅広く分布しており、日本では沖縄琉球列島で姿を見ることが出来ます。
ドクウツボの名前の通り、大型の個体には毒を有するものが存在します。つまりドクウツボという名前ではありますが、中には毒を持たないものもいて地域によっては食用にもされています。
詳細は後述しますが、鰓の穴が黒いのが特徴で近縁種との区別は付けやすいですね。
ニセゴイシウツボ
- 学 名 Gymnothorax isingteena
- 全 長 180センチメートル程度
- 分 布 インド洋や太平洋に広く分布
- 生息環境 サンゴ礁域
全長は180センチメートル程度と最大種の一つになります。インド洋や太平洋と幅広く分布しており、日本では和歌山より南でその姿を見ることが出来ます。
身体は細長く縦長に側扁していて、ウツボによくある体形をしていますね。ただやはりその大きさには圧倒されてしまいます。
体色は、白から薄い灰色で、黒い小さな斑紋が点在しています。この点在する斑紋が「碁石」のように見えることからこの名前が付けられました。
しかし、この斑紋は成長と共に小さくなるようで大きな個体になると点状になってしまうようです。
やはり特徴的なのはその大きさでドクウツボと並び最大種の一つになりますが、大きさ同様に有毒化することもあります。
また、比較的寿命も長いようで、飼育下における寿命は25年以上になるものも知られています。
アデウツボ
- 学 名 Gymnothorax nudivomer
- 全 長 100センチメートル程度
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域、紅海
- 生息環境 サンゴ礁域
全長100センチメートル程度の大型種になります。分布はインド洋、太平洋、紅海などの暖かい海域で、日本では八丈島や高知県、奄美大島、沖縄などで見ることが出来、水深100メートル程度の場所で漁獲されることが多いようです。
体色は白から黄色がかった色合いで尾に向かうにしたがって濃くなるものが多くまた白い斑点があること、口腔内が黄色であることが特徴的です。
粘液には有毒物質が含まれる場合があり、日本では食用とはされないようです。ただ、観賞魚としての値打ちは高いようですね。
アセウツボ
- 学 名 Gymnothorax pictus
- 全 長 120センチメートル程度
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 沿岸部の浅いサンゴ礁や岩礁域
全長が120センチメートル程度の大型種になります。分布はインド洋、太平洋の熱帯域などの暖かい海域で、日本では沖縄琉球列島付近で見ることが出来ます。
体色としては白地がベースなのですが、茶や黒の斑点が無数にあり、茶や黒というように見えてしまうこともあります。全体的には細長い感じの種で顎にはがっしりとした歯を持ちます。
非常に浅い海にいるので潜れば比較的容易に見ることが出来ます。
モヨウタケウツボ(紋様丈鱓)
- 学 名 Pseudechidna brummeri
- 全 長 80センチメートル程度
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域
全長は80センチメートル程度で100センチメートル程度まで成長するものも多いようです。その分布はインド洋や太平洋の暖かい海域に幅広くしており、日本では沖縄琉球列島に生息しているとされますが捕獲例が無いようなので詳細は不明ですね。
特徴的なのは、他のウツボに比べ非常に細長い体形をしているという点があげられます。また全体的に白から灰色っぽい体色で頭部分には黒い斑点が散らばり、背鰭が身体の割には高いことも特徴的ですね。
ハナヒゲウツボ(花髭鱓)
- 学 名 Rhinomuraena quaesita
- 全 長 120センチメートル程度
- 生息域 西太平洋熱帯域
- 生息環境 サンゴ礁域
全長は120センチメートル程度の大型種になります。西太平洋の暖かい海域に分布をしていて、日本では高知県柏島や奄美大島より南で見られるようですね。
体形は非常に特徴的で、まず体色ですが幼魚時代は黒っぽく背鰭が黄色になります。成魚となると雄は全体的に青く口が黄色、雌は全体的に黄色となります。さらに他の種に比べ細長い体つきで、鼻先に鼻孔が花びら状に広がり(これが名前の由来です)かなり鮮やかな種になりますね。
また、雄から雌へと変わる「雄性成熟」という特徴も持ちます。
オナガウツボ(尾長鱓)
- 学 名 Strophidon sathete
- 全 長 大きいものでは300センチメートル程度まで達する(400センチメートルという記録もあります。)
- 生息域 インド洋、太平洋の熱帯域
- 生息環境 浅い海の泥底域など
全長は300センチメートル程度にまで達する最大種で400センチメートルという記録もある程です。分布はインド洋、太平洋の熱帯域で内湾など浅い泥底域に暮らしていますが、稀に汽水域や淡水域でも見かけることがあるようです。
日本では沖縄より南の海で見ることが出来るようですね。
他のウツボと比べて体が細長く、体色は全体的には淡褐色ですが、背鰭や尻鰭の縁が黒くなります。また口は丸みを帯びていて、咳椎骨が190個程度あるのも特徴的です。
危険な毒性ウツボとその見分け方
前述の種類で少し触れましたが、ウツボの種類にはドクウツボを筆頭に毒を持つウツボ「毒性ウツボ」が存在します。
これは先天的に毒を有しているのではなく、生息地域における環境により有毒の藻の一種などが起因して食物連鎖の頂点に向かうに従い、その毒性が強くなり結果的に非常に猛毒性のウツボが誕生してしまうのです。
勿論、その毒性ウツボの筆頭はその名の通り「ドクウツボ」になりますが、これら以外の種類でもニセゴイシウツボなどこの毒性食物連鎖の結果として有毒化してしまう種もいます。
しかし、この毒はヘビのように相手に噛みつき毒を注入して殺傷するといった武器となる毒ではなく、上述のような経緯から自然と体内に蓄積されていった毒で、食した場合にその毒にやられてしまうというタイプのものになります。
毒性ウツボの見分け方
まず、筆頭としてあげたドクウツボは見た目から他の種との区別がつけにくいのですが、鰓穴が黒くなっているところが特徴的なので、頭の横にある鰓穴を確認するとその区別はつきやすいかも知れません。
ただ、厄介なのは個体や生息地によって毒の有無が異なることにあります。
例えば、このドクウツボでも生息する地域においては無毒のものも存在し食用として利用されているケースもあります。また怖いのはその反対のパターンになりますね。
一般的には毒性ウツボとされていない種においても、環境などにより毒を有するようなものも存在します。代表的なのは前述のニセゴイシウツボがあげられますが、これ以外にも毒性と化した種類がいてもおかしくありません。そのような場合にはその生息環境の藻などの種類や状況によって判断するしか手段はありません。
結果として、大型の種となるウツボは食さないのが賢明かもしれません。
実は毒性は最大種に?
前述のように、ドクウツボを筆頭とする有毒化するウツボは比較的、最大種となるような大きなウツボに多く見られる傾向にあります。
ドクウツボも最大では300センチメートル程度にも成長するのです。ドクウツボの英語名が「Giant moray」とされることからも大きさが特徴的と言うことは理解できると思いますね。
これと同様にすでに有毒化した種が確認されているニセゴイシウツボも200センチメートル程度とウツボの中では大型種になります。これらから大型化する種には強力な毒がある可能性が高まりますので気をつけた方が良いかもしれませんね。
となると、まだ報告例はありませんが、最大種となるオナガウツボも要注意かも知れません。
ウツボの毒性
前述のようにこの毒の威力が発揮されるのは、噛みつくなどのウツボが攻撃をする際ではなく、ウツボを食した際に発生する食中毒になります。これにより食する目的で襲われることは少なくなるので、ウツボからすれば最大の防御システムと言うことになりますね。
これら毒は生息環境によりその有無に違いが生じるので、ドクウツボ以外にも有毒化したウツボが存在することになります。
それではこの毒とは一体どのようなものになるのでしょうか?
ウツボが有する毒性は「シガテラ毒」と呼ばれるもので食中毒を引き起こします。
仮にこれを人間が食してしまうと、1から8時間程度の潜伏期間を経て「吐き気や下痢」「胃腸機能への障害」「腰痛・筋肉痛」「不整脈・血圧低下」「めまい」「頭痛」「麻痺」「感覚障害・幻覚」などという症状が確認されています。
残念ながら有効な治療法が見つかっていないのが現状になります。
国内においては、この「シガテラ毒」による死亡という最悪のケースは確認されていませんが、海外ではそのような悲しい事件も報告されています。
この毒はウツボの筋肉と内臓内にその存在が認められている(内臓の方が毒性は強い)ようで、厚生労働省によればドクウツボの毒性は「猛毒」と認定されていて、ドクウツボはこの毒を保有する魚類の中においても特に大量のシガテラ毒を有すると説明されています。
この為、その毒性が非常に強くなり、集団食中毒の危険性も危惧されているのですね。
ウツボは毒が無くても危険
ここまでにウツボには毒があり危険という話が中心になってしまいましたが、そもそもこの毒の有無に関係なく「海のギャング」として恐れられているのがウツボなんですね。
獲物を捕らえ噛み砕く強力な顎の力に鋭い歯(種によっては鈍い歯もありますが)を備えています。これに噛みつかれるととても危険で、酷い場合には指を失ってしまいますしそうでなくてもかなりの傷を負ってしまう危険があります。
もし仮に水中でウツボと出くわしても、近付いたりちょっかいを出したりするようなことは決してしないことですね。またウツボが潜んでいそうな岩場などにもむやみに手を置いてしまうと噛みつかれる危険性がありますので気を付けましょう!
釣りなどで間違って釣り上げてしまった場合には、糸ごと切って逃がすことが勧められているようです。また驚くべきことに、岩場で釣った魚をさばいていた釣り人のところへ、その臭いを嗅ぎつけ水中からウツボが上陸してきたということも起きています。
鋭い嗅覚にたぐいまれなる身体能力!ウツボ恐るべしですね。
ウツボに天敵となるものは存在するのか?
このように非常に恐ろしいウツボですが、天敵となるような生物はいるのでしょうか?
実際に、成長したウツボは生息地周辺においては生態系の頂点に君臨しますので、食用として漁をしたりする人間位しか天敵と言うものは存在しないかも知れません。
しかし、まだ幼魚の時や、生息地以外からの大きな肉食動物の侵入があればウツボと言えども捕食されてしまうことはありますね。
反対に相利共生のパートナーもいる
ウツボには恐ろしい天敵ではなく、厳しい自然環境下で生き抜く為にお互いに利用し合う(助け合う)、相利共生(そうりきょうせい)をするパートナーも存在するのです。
ウツボは食性からエビなどの甲殻類や小魚を餌にしますが、そんな中でも自分の身体についた寄生虫を食して掃除してくれる「オトヒメエビ」や「アカシマシラヒゲエビ」、「ゴンズイの幼魚」、「ホンソメワケベラ」などは捕食せず共生を図ります。
また、同じエビ類ですが「イセエビ」も獲物となるタコなどを引き付けてくれるので共生の関係にあるようです。
またこれら以外にもハタ類と狩りを協力して行うことやウツボのおこぼれに預かろうと多くの魚がウツボの捕食に付いて行くなどの報告もあるようです。
いかつい外見とは裏腹に生息域では頼りになる兄貴分という感じもしますね。
その味の良さから料理として振る舞う地域も
あまりメジャーではありませんが、地域によってはこのウツボを食用とし料理として振る舞われることもあるようです。その味はゼラチン質を豊富に含み非常に美味しいようですが、小骨が多くさばくのが難しいことや前述の毒性などの関係で全国的に広がってはいないようです。
日本においては、「ウツボ」「ドクウツボ」「トラウツボ」などの種類が食用とされるようで、湯引きやたたき、干物、煮つけ、天婦羅、蒲焼、鍋と様々な調理法で料理されているようです。
まとめ
今回ウツボについて種類や生態、危険性など色々とご紹介をしてまいりました。
何にでも噛みつき、攻撃を仕掛けてくる「海のギャング」と言うことは何となく基礎情報として知ってはいましたが、その種類の多さや毒性の有無に非常に強力な毒性となること、など改めて知ることが非常に多かったと感じてしまいました。
ウツボは世界の広い範囲に生息し、勿論日本でも様々な種類のウツボを見ることが出来るのですが、仮に海で見かけても近付いたりちょっかいを出したりしてはいけませんね。
食さない限り毒にはやられないですが、それと同じ位の恐怖となる鋭利な歯で襲われてしまいますから。
ウツボは基本的には、獰猛ではないのですから相利共生の関係を人間とウツボの間でも図れれば良いですね。