レジャーなどで悩まされるものの一つに虫による被害がありますね。
スズメバチなど非常に危険なものから蚊やアブなどの比較的軽度なものまで様々です。そんな中で特有の不快な思いをしてしまうのがヒルです。
ヒルと言うとジャングルなどを想像し、あまり身近に感じない方も多いかも知れません。
しかし、日本でも山や渓流などに行けば遭遇する可能性は意外と高いのです。
今回はそんなヒルについて、生態と危険性、種類に天敵まで詳細にお伝えします。
ヒル
【ヒルの基本データ】
- 分 類 環形動物門 ヒル綱
- 学 名 Hirudinea
- 和 名 ヒル(蛭)
- 英 名 leeches
- 繁 殖 卵生
- 食 性 肉食性(吸血)
- 寿 命 5から6年程度
- 体 長 0.2から40センチメートル(多くは5から12センチメートル)
- 分 布 世界広範囲
- 生息域 多くは淡水、種によりジャングルや山、海水なども
ヒルは、環形動物門ヒル綱に属する生物を総称したもので、ゴカイやミミズなどと同じ仲間になります。
総称としているだけあって、ヒルには日本においては60種ほど、世界では500種ほどと非常に多くの種が存在します。
一般的にヒルと言うと、動物の血を吸っている印象が強いかも知れませんが、それ以外にも様々な種がいるのです。
ヒルの生態・特徴
ヒルは、他の環形動物と同様に細長い体形をしています。また雌雄同体も環形動物ならではかも知れません。
ほとんどの種では、身体の両端には吸盤がありこれを上手に使って移動や捕食を行います。ただ、中にはこの吸盤が一つの種も存在します。
食性は肉食性で、主には小動物を捕食する種や大型動物の吸血をする種がいます。一般的に知られているヒルは、この吸血種ではないでしょうか。
そのこともあり「コウガイビル」や「肝蛭」など、細長い形状でヌルヌルしそして吸血すると言う特徴だけで、分類上全く異なる種にもかかわらず「ヒル」と名前がつくこともあります。
また、長い時間動物にたかってくらす種は、殆どの場合寄生虫としてみなされます。
ヒルには「カイビル」などのように体長1センチメートルにも満たない小さな種から、「ヤツワクガビル」のように40センチメートルを超える大型の種まで様々な種が存在します。
ヒルの分布は、世界中に広範囲に広がります。また生息環境は、陸棲もあれば水棲(淡水及び海水)の種も存在しますが、多くの種が淡水にくらしています。
ヒルの種類
ヒルは前述のように環形動物門ヒル綱に属する生物を総称したもので、この下位分類としては3亜綱が存在します。
ヒルミミズ亜綱
ヒルミミズ亜綱はザリガニなどに寄生する種です。以前は貧毛綱とされていました。そのため、ヒル網と貧毛綱の中間的な性質があります。
ケビル亜綱
ケビル亜綱は魚類に寄生する種です。頭部には吸盤がありません。
ヒル亜綱
こちらヒル亜綱が、一般的にヒルと呼ばれる種になります。
このヒル亜綱の下に次のような下位分類が存在します。
- 【グロシフォニ科】 カイビル、ハバヒロビル、ヒラタビル、ヌマビルなど ※小動物を捕食します。
- 【ウオビル科】 ウオビル、エラビル、カニビルなど
- 【イシビル科】 キバビル、クガビル、シマイシビル、ナミイシビルなど
- 【ヒルド科】 ウマビル、セスジビル、チスイビル、ハナビル、ヤマビルなど
※上記が一般的なヒル綱の下位分類ですが、その他の分類としては3亜綱ではなく、「吸口虫綱(ヒルミミズ亜綱、ケビル亜綱)」と「ヒル綱」の2網に分ける場合もあります。
ヒルの危険性
ヒルの危険性を考える際には、やはり人間に対する吸血が一番にあげられます。
日本にも吸血性のヒルは生息していて、川や沼地、または山や森林などを歩いていて知らない間に吸血されることがあります。
特に気を付けたいのは、沼などに棲むヌマビルと水田に多く棲むチスイヒル、そして陸棲のヤマビルです。
チスイヒルは、以前は水田での作業中に吸血されると言う被害が多発しておりましたが、農薬などの効果もあり今では随分と減少しているようです。
しかし反対にヤマビルによる危険性は増加しています。
これは、ヤマビルの本来の吸血対象となるサルやイノシシ、シカなどが増加していること、またそれらが人間の生活環境へ進出していることがあげられます。
これにより、山などに行かなくても人間がヤマビルの被害にある危険性が高まっていると考えられています。
ヒルにかまれた場合には、ヒルの出す唾液に麻酔成分(ヒルジン・ヒルディン)が含まれるので痛みは感じません。また血液の凝固作用を妨げる成分も含まれるので、止血が遅く流血が広がりやすくなります。
ヒル自体には毒性はないとされていますし、傷口も数日程度で治るので必要以上に恐れる心配はありません。
しかし、痛みやかゆみ 、腫れにジンマシンなどの比較的軽度な症状を伴うこと、場合によっては感染症なども考えられます。
処置としては、抗ヒスタミン剤などを塗り皮膚科などの専門機関での処置をおすすめします。
また、普段見慣れていないヒルの容姿と、そのヌメヌメした感触から嫌悪感と不快感を覚えてしまうこともありますね。
さらに、ハナビルのように体表からではなく、体内に潜り込み吸血する種も存在します。
こちらは内部蛭症と呼ばれ、より気を付ける必要があります。
ヒルも役立つ?
吸血そして感染症の危険性にくわえ不快感などもあり、あまり好ましく思われないヒルですが、実は人間に役立つ一面も持っているのです。
それは薬としてのヒルの活用です。
以前より血の凝固を防ぐ作用から瀉血などにも用いられてきました。
これは芥川龍之介の「雛」で腫物を治すシーンでも描かれていますね。患部をヒルに吸血させて悪い血液を出してしまうのです。
また、乾燥したヒルは滋養強壮に効果的ともされ、漢方などでも用いられています。
以前からの活用もそうですが、医学分野において今後もさらなるヒルの研究が進められるでしょう。
忌々しいヒルではありますが、このように人間に役立つ生物でもあるのです。
ヒルの天敵は?
ヒルは、意外に生命力が強くある程度までであれば寒さや暑さにも対応が可能とされています。
また、吸血性のヤマビルでも5か月ほど吸血しないでも生きていた研究があるようです。
そんなヒルには天敵となる存在はあるのでしょうか?
実はこれ見解が分かれるところです。
多くの見解ではヒルを食する動物の存在は確認できず、ヒルには外敵がいないとされています。
しかしながら、水棲のヒルはイワナなどに食べられていることも確認されています。
また、陸棲のヒルでも、コオイムシや甲虫に吸血されたり食べられているとする報告もあります。またニワトリがヤマビルをつついて食べているとの報告もあるようです。
恐らく、好んで食する生物が不明と言うことではないでしょうか。
まとめ
今回、ヒルについてご紹介をしてまいりました。
ヒルは普段の生活ではあまりお目にかかることもありませんので、なかなかその詳細を知っている方も少ないようです。
吸血性とそのグロテスクな見た目、その印象が先行してしまい必要以上に忌み嫌われてしまうヒルです。
しかし、医療現場では役立つ益虫でもあるのですね。
少しは、ヒルに対する印象も変わったのではありませんか?
そうは言っても、やはりヒルにかまれて吸血されるのは、良い気持ちはしません。
山や川などのレジャーに行くときは、肌の露出を控えるなどヒル対策は忘れないでください。