今回ご紹介するのは、「アメリカドクトカゲ」です。
あまり聞き馴染みのない方も多いかもしれませんが、その名前の通りに毒を持つトカゲです。
しかしながら、見た目の愛らしさもあって、ペットとして飼育する方も多いようですね。
もちろん、毒性のトカゲですので、飼育時には噛まれないように注意しなくてはなりませんし、比較的寿命も長いので飼育にはそれなりの覚悟も必要になります。
今回は、このアメリカドクトカゲの生態から毒性、飼育について、咬まれた時の対処法などを細かくご紹介いたします。
目次
アメリカドクトカゲ
「アメリカドクトカゲ基本 データ」
- 分 類 爬虫綱 有鱗目 ドクトカゲ科 ドクトカゲ属
- 学 名 Heloderma suspectum
- 和 名 アメリカドクトカゲ
- 英 名 Gila monster
- 体 長 最大で50センチメートル以上にもなる
- 体 重 2キログラム程度
- 寿 命 野生下で20から30年程度
- 分布域 アメリカ南西部、メキシコ北西部
- 生息環境 砂漠や荒地、草原、乾燥した森林など
アメリカドクトカゲの特徴
アメリカドクトカゲは、爬虫綱有鱗目ドクトカゲ科ドクトカゲ属に分類されるトカゲです。
最大で体長50センチメートル以上、体重も2キログラムを上回ることもあるアメリカ原産の最大のトカゲになります。
体色は黒または茶褐色がベースですが、ここにくすんだ黄色やピンク、稀にオレンジなどの斑紋が入ります。
身体のわりに尻尾は太く短い印象を受けます。
稀に栄養状態の悪い個体では、細い尻尾のものもいるようですね。
アメリカドクトカゲ最大の特徴は、名前からもわかるように、トカゲ類では珍しく毒を有することです。
現地では、毒を吹きかけて獲物を殺す恐ろしいトカゲとされていました。
アメリカドクトカゲの生態
アメリカドクトカゲは、アメリカ南西部からメキシコ北西部にかけて、砂漠などの乾燥した地形を好み生息しています。
英語名「Gila monster」は、最初に発見されたGila River(ヒラ川)に由来し、ヒラ川の怪物と言う名前が付けられたのです。
アメリカドクトカゲは、動きは遅く、ほとんど地下に作る巣穴や岩陰で過ごします。また、時折木に上ることもあるようです。
基本的には、日の出後や日没前の薄暗い時間帯に活動します。
食性は、動物食の肉食性で、爬虫類や鳥類の卵、鳥のひなや小型哺乳類などを捕食します。
巨大な尻尾に栄養を蓄えることができるので、何か月もの間、何も食べずに生き抜くこともできます。
繁殖形態は卵生で、夏に3から5個程度(最多で12個も確認されています)の卵を産み秋から冬に孵化します。
普段は、動きの遅いアメリカドクトカゲですが、危険時などには素早い動きも見せます。
基本的には、臆病な性格なので、危険を避けるようにしますが、追い込まれた場合などには、口を大きく開けて、音を出し威嚇することもあります。
アメリカドクトカゲの種類
現在のところ、アメリカドクトカゲには背中の模様で2亜種の存在が認められています。
- アミメアメリカドクトカゲ(H. s. suspectum)
- オビアメリカドクトカゲ(H. s. cinctum)
しかし、分布域の重なりもあったり、不明瞭な模様の個体も存在するなど、この2種を同種とする説もあります。
アメリカドクトカゲは世界でも珍しいドクトカゲ
アメリカドクトカゲは、世界でも非常に珍しい毒を持つトカゲの1種になります。
同じ爬虫類のヘビなどから、毒を持つトカゲは多く存在しそうですが、実際には世界にいる3400種のトカゲの内、ドクトカゲとされる有毒種は3種しかいないのです。
【毒を持つトカゲ】
- アメリカドクトカゲ
- メキシコドクトカゲ(メキシコ北部)
- コモドオオトカゲ(インドネシアの小スンダ列島)
「アメリカドクトカゲ」と「メキシコドクトカゲ」は、ともに「ドクトカゲ科」に属するトカゲで、近縁種となり非常に似ています。
メキシコドクトカゲの方が大型になります。
コモドオオトカゲは、「オオトカゲ科」に属するトカゲで最大で約3メートル程度にもなる非常に大型のトカゲです。
アメリカドクトカゲの毒性
アメリカドクトカゲの毒性は神経毒で、噛まれると非常に激しい痛みに襲われます。
また、患部の腫れやむくみ、めまいに吐き気などを生じることもあり、重篤な場合には、心臓の異常やアナフィラキシーショックなども考えられるようです。
しかし、健康体な成人の人間がこのアメリカドクトカゲの毒性により死亡するケースは稀とされていて、これまでにその死亡報告はないようです。
毒の注入方法は、ヘビの場合(毒を牙から噴出)とは若干異なり、噛みついた時に歯の溝から神経毒を傷口に送り込みます。
ヘビは上あごの唾液腺で毒を生成しますが、アメリカドクトカゲの毒は下あごの唾液腺で生成されるのです。
このアメリカドクトカゲの毒には、タンパク質を原料とする合成物質が含まれ、これを使った糖尿病治療薬も開発されています。
相手を苦しめる毒性も、時には人の役に立つ優秀物質ともなるようですね。
アメリカドクトカゲの飼育と寿命
アメリカドクトカゲは、ドクトカゲではありますが、ペットとして飼育することも可能です。
しかし、2006年に動物愛護法による特定動物指定とされたため、日本で飼育をする場合には、個体登録とマイクロチップの埋め込みそして地方自治体の許可を得る必要があります。
アメリカドクトカゲは、動きもゆっくりですし性格的には大人しくて臆病ですので、比較的飼育は容易ですが、本質的には野生の生き物です。
いつ攻撃してきてもおかしくないドクトカゲであるということは、忘れてはいけません。
細心の注意に革手袋の着用など、基本的な事を怠ってはいけませんね。
ご自分が噛まれる事と、そして脱走にも気を付けなくてはなりません。
飼育時に噛まれたら!
何事にも「万が一」と言う事があります。
細心の注意を払っていても、アメリカドクトカゲに噛まれてしまうこともあるようです。
前述のように、死亡事故に至るケースはほとんど無いにしても、激しい痛みや様々な症状が起こり得ます。
もしも、アメリカドクトカゲに噛まれてしまった場合には、すぐさまアメリカドクトカゲを引き離しましょう。
この時に、なかなか離れないような場合には、次のことをしてみると良いです。
- アメリカドクトカゲの顎をペンチで開かせる
- アメリカドクトカゲの顎の下に火を近づける
- アメリカドクトカゲごと、水中に沈める
アメリカドクトカゲを引き離すことができたら、皮膚の中にアメリカドクトカゲの歯が残っていないか確認しましょう。
残っている場合には、すぐさま取り除く必要があります。
また、血圧の低下や出血が止まらないような場合には、すぐに医療機関で受診を行ってください。
応急処置としては、傷口は心臓より低い位置で固定し、きつめの衣類やアクセサリーなど締め付けるものは外します。
アルコールやカフェインなどの摂取は避けてください。
駆血帯や毒の吸出しなどの処置は、有害性もあるのでおすすめしません。
アメリカドクトカゲの寿命
アメリカドクトカゲの寿命は、野生下では20から30年とされるほどに長寿です。
しかし、飼育下では、ストレスなどもあるようであまり長く生きてはいないようですね。
2年程度という飼育記録が多いようです。
絶滅危惧
アメリカドクトカゲは、アメリカでは絶滅危惧種にも指定されています。
これは、アメリカドクトカゲの生息地が開発などにより減少したことにあります。
このことから、野生個体は多くの地で保護対象となっています。
希少種であるドクトカゲは、絶滅危惧種でもあるのです。
まとめ
今回アメリカドクトカゲについてご紹介をしました。
アメリカドクトカゲは、世界でも3種類しかいないドクトカゲの1種という非常に珍しいトカゲなのです。
愛くるしいルックスに大人しい性格という事もあり、アメリカドクトカゲを飼育する愛好家も多いようですね。
しかし、動きは遅く大人しい性格とは言え、ドクトカゲですから気を付けなくてはなりません。
自分が噛まれることもそうですが、脱走して他で危害を加えるようなことが起きたら大変です。
飼育許可やマイクロチップや個体登録など厳重な飼育準備が必要ですが、認可後はそれ以上の細心の注意と愛情を持って飼育する必要がありますね。
野生下では、絶滅危惧種となっている希少なアメリカドクトカゲです。
飼育するのであれば、大切に長い付き合いをしていただきたいですね。