カエルといえば、アマガエルにトノサマガエルそして今回ご紹介するヒキガエル(ガマガエル)が有名かも知れません。
ヒキガエルは一部ではガマガエルとした方が馴染みが深い場合もありますね。
あまり知られていませんが、実はこのヒキガエルには毒があるのです。
ヒキガエルに限らず、カエルには強弱の違いこそあれほとんどの種が毒を持っているようなんです。
ウロコがない両生類は皮膚も薄いので毒を防御手段として使うことが多いようですね。
ヒキガエルの毒は日本ではあまり認知されていないことが多く、散歩中の犬がヒキガエルを口にして死亡したケースもあるようです。
では、この毒は人間にはどうなんでしょうか?
今回は、このヒキガエル、特に二ホンヒキガエルを主にその特徴や、毒性(成分や対象法)などご紹介してまいります。
ヒキガエル
ヒキガエル(ガマガエル)は、アフリカ大陸やユーラシア大陸、南北アフリカ大陸にインドネシア、日本など世界中に幅広く分布しております。
日本では北海道を除いて全国に分布していて、アマガエルやトノサマガエルと並ぶ非常にメジャーなカエルになります。
日本での呼称はヒキガエル以外にはガマガエルやイボガエルなどとも呼ばれ、一度は目にしたり耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ニホンヒキガエル基本のデータ
- 分 類 両生綱 無尾目 ヒキガエル科 ヒキガエル属
- 学 名 Bufo japonicus
- 和 名 ニホンヒキガエル
- 英 名 Japanese common toad / Japanese toad
- 体 長 10から20センチメートル程度
- 体 重 40から600キログラム程度
- 寿 命 10年程度 (8から11年、自然下では4、5年程度)
- 分布域 北海道を省く全国
- 生息環境 農耕地や森林、草原など
ヒキガエルの特徴
ヒキガエルは体形的にはでっぷりとした感じでスマートではありません。
動きも非常にゆっくりとしていてのそのそと歩きます。
水かきも発達しておらず、泳ぎもカエルでありながらあまり得意ではありません。
ヒキガエルの最も特徴的なことは、意外に知られていないのですが有毒生物であることになります。
詳細は後述で詳しく説明いたしますが、動きがのろい分この毒性を有することが彼らの武器になるのです。
体長は種類によって様々ですが、日本に生息するヒキガエルの場合には10から20センチ程度の大きさになります。
体色は褐色で白や黒の線や模様がはいり、背中部分には多くのイボや皺が並びます。
また、子供であるオタマジャクシはもともとカエルの中では大柄ですが、オタマジャクシのまま親ガエルの大きさになるわけではなく、小さいうちにカエルの形に変化してそこから大きくなっていきます。
ヒキガエルの生態
カエルのイメージはピョンピョンと跳ね回るものですが、前述のようにヒキガエルは動きが鈍く跳ねることはしません。
農耕地や森林、草原などに暮らしていますが、適応能力は高いようで公園や寺院、民家など人間の暮らす環境内にも住み着きます。
主な活動は夜行性で、餌となる昆虫やミミズなどを捕食します。
捕食方法は、通常のカエルと異なり獲物に飛びつくような行動はせず、舌だけを長く伸ばして獲物を捕らえることが多いようです。
繁殖は卵生で、前述のようにオタマジャクシから小さなカエルの姿になってから更に大きく成長をしていきます。
この為、オタマジャクシからの飼育にはかなりの技術を要するとされているのです。
鳴き声は大きな身体からは想像も出来ないほどに小さく可愛い鳴き声を出します。
これは通常のカエルにある鳴嚢がヒキガエルには無い為、共鳴することが出来ず大きな声で鳴くことが不可能なんですね。
ヒキガエルの寿命は8年から11年程度(自然下では4、5年)とされています。
また、生後一年の生存率が以上に低く生き抜くことが出来るのはわずかに3パーセント程になります。特に最初の越冬で命を落とす個体が多いようです。
前述の飼育が難しいのも納得ですね。
ただし36年という記録もあるようで、如何に自然環境下が厳しい状況なのかが分かります。
分類
ヒキガエルは、全世界に分布しています。
環境により種類も異なるようで、その種の数は50属590種類とされています。
日本のヒキガエル
この内、日本で生息するヒキガエルは、外来種1種を含め1属4種1亜種になります。
- アジアヒキガエル(沖縄県宮古島には固有亜種となるミヤコヒキガエルがいる)
- ニホンヒキガエル(関西にニホンヒキガエル、関東にアズマヒキガエルがいる)
- ナガレヒキガエル
- オオヒキガエル(亜熱帯域原産の外来種)
この内日本で最も多く生息するのが「ニホンヒキガエル」と「アズマヒキガエル」になります。
違いは鼓膜がアズマヒキガエルの方がやや大きいですが、あとはほとんど変わりません。
ヒキガエルの毒
日本では、カエルに毒があるということはあまり馴染みが無いかも知れません。
しかしヒキガエルは、有毒性の生物になります。
これはヒキガエルに限ったことではなく、カエルやイモリなどの多くの両生類は皮膚から毒を分泌するのです。
小さくて可愛いアマガエルも実際には有毒生物になります。
これは、皮膚が薄く細菌が繁殖しやすい環境に暮らすことから、皮膚を守るために毒が必要になるのです。
しかし、多くの両生類が有する毒は抗菌作用が主目的となり、そこまで気にするほどの効果があるわけではありません。
人間の場合には皮膚が弱かったり、傷口に入るなどしない限りは痛みも何も感じません。
しかし、ヒキガエルの毒はこれらよりは強力になります。
その毒とは「ブフォトキシン」。
ブフォはヒキガエルで、トキシンは毒、正に「ヒキガエルの毒」ということになります。
種類としては神経毒になります。
ヒキガエルは動きも遅くジャンプも泳ぎも得意ではありませんので捕食される確率が非常に高くなります。
身を守る術としてこの毒を身に着けたようですね。
毒は、後頭部にある大きな耳腺と背中にあるイボから有毒の粘液を分泌します。これはあくまでも襲われた場合の防御手段で積極的にこれを用いて攻撃を仕掛けるものではありません。
しかし、不用意に触らない方が賢明かも知れません。また耳腺からは勢いよく噴出することもありますので特に注意が必要ですね。
毒の成分
ヒキガエルの毒の主成分は、前述のようにブフオトキシンになります。
この他にもセロトニンやブフォニン、ブフォテニンなども含まれています。
毒の症状と対処法
この毒にかかってしまうと心臓機能への亢進作用があるとされています。
また、皮膚についてしまうと炎症を起こしたり、目に入った時もすぐに洗浄をしないと失明する危険性も否定できません。
口からの摂取の場合には、神経や循環器障害が起こり、嘔吐や下痢、心臓発作などが危惧されます。
ただし、人間がこの症状に陥ることは稀のようですね。
しかし、犬や猫などがヒキガエルにちょっかいを出して被害に遭うケースは結構あるようです。
犬や猫は人間に比べて致死量も非常に少ないので、少量でも大きな症状へと繋がってしまいます。
実際に犬の死亡例の報告もあるようですので犬の散歩時には、気を付けた方が良いですね。
また、人間では稀としましたが裏を返せば少ないですが可能性があるということです。
ヒキガエルにはむやみに触らないことと、触った後は必ず洗浄力の強い石鹸で洗浄することは忘れないでください。
もし、目や口からこの毒が入ってしまったら念のため医療機関で受診されることをおすすめします。
ヒキガエルの毒を利用する天敵ヤマカガシ
ヒキガエルの天敵として名前があがるのがヤマカガシという蛇になります。
他のヘビはこのヒキガエルに毒があるので、ヒキガエルを捕食することは滅多にありません。しかしヤマカガシにはこのヒキガエルの毒が効かないのです。
それどころか、このヒキガエルの毒を体内に溜めこみ自分の毒として利用してしまうのです。
この発見をきっかけにこれまで無毒とされてきたヤマカガシが有毒生物へと変わったのです。
このため、ヒキガエルを食する機会がない地域のヤマカカシは無毒なのですから不思議ですね。
ガマの油
ガマの油というのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
口上などで非常に有名ですね。
ガマの油とは江戸時代から伝わる漢方薬で、ガマガエル(ヒキガエル)が出す汗(油)が万能薬とされ使われてきました。
実はこれ、このブフオトキシンのことを指しているのではないかとされています。
毒素が薬になることはよくあることですが、そうなると昔よりこのヒキガエルの毒は漢方として使われていたことになりますね。
まとめ
今回はヒキガエルについて色々とご紹介をして参りました。
日本ではカエルに毒があるという認識が非常に低いようです。
海外の色鮮やかな「ヤドクガエル」などには毒があり危険と言う認識はあるものの、身近なヒキガエルにも毒があるとなると決して対岸の火事とは言い切れませんね。
とは言え、ヒキガエルがこの毒を使うことは滅多にありません。命が危ういという危険が迫らない限り、この毒は使われないようです。
ですので、無駄に心配をする必要は無さそうです。
これらをきちんとわきまえていれば、そこまでの危険生物ではありません。
ですので、しっかりとした衛生管理の意識を持っていればそこまでの心配は不要のようですね。